純文学小説『台風』(Kindle版)をKENPCでお読みいただき、ありがとうございます! 河津武俊氏の御著書『耳納連山』について、再び。
純文学小説『台風』(Kindle版、ASIN: B00BI55HV8)を5月28日ごろ、KENPC(Kindle Edition Normalized Page Count)でお読みいただき、ありがとうございます!
当小説は、第22回織田作之助賞最終候補作品です。選考委員は川上弘美、杉山平一、辻村登の各氏。結果発表誌は『文學界」5月号(文藝春秋、平成18年)。
その後、同人誌『日田文学』53号(編集人・江川義人、発行人・河津武俊、平成18年7月)に掲載していただきました。
『文學界』2006年10月号「同人雑誌評」で、同じく『日田文学』53号に掲載された河津武俊「耳納連山」と共に言及していただきました。
河津武俊著『耳納連山』は、1996年に九州文学社から単行本で、2010年に鳥影社から(季刊文科コレクションとして)単行本で、2018年に弦書房 から文庫版で上梓されています。
わたしは鳥影社版のレビューをブクログに書いています。
『雲の影』『野の花』『耳納連山』が収録されている。『雲の影』『耳納連山』がすばらしい。
『雲の影』は、老齢となった恩師との交わりを丁寧に描いた作品で、美しいとしかいいようのない作品……。
恩師は、《私》が医学生だったときの外科学の先生で、その関係の域を出なかったが、《私》は先生を憧憬し、敬慕していた。
まるでそのときの思いが叶うかのように、恩師の退官後十年を経て、親しく交わる機会が訪れる。先生の人柄や趣味、家庭的な事情なども知るようになる。恩師との交際におけるエピソードが、次々と空を流れる雲のような筆致で書き連ねられていく。師弟を包む情景のため息の出るような美しさ。『耳納連山』では、山の美しさに人間の心の機微が織り込まれて、リリカルな描かれかたをしている。何て陰影深い、ゆたかな筆遣いなのだろう……! 何枚もの山の絵画を観るようだ。まさに山に捧げる讃歌であり、山にこの作品を書かせて貰った作者は幸せであり、作者にこの作品を書いて貰った山は幸せだと思った。
河津さんの作品は「同人雑誌評」で、何度もベスト5に選ばれています。
河津さんにはアマゾンに出ている以外にも、多くの著作がおありですが、河津さんは日本文学の伝統を受け継いだ貴重な作家です。今の左翼在日コリアン中心の《なんちゃって日本文学界》からは出てこないタイプの正統派といいましょうか。以下の過去記事で、色々と書いています。
2013年7月 9日 (火)
そろそろ同人雑誌「日田文学」編集人に作品の打診をすべきかな
https://elder.tea-nifty.com/blog/2013/07/post-ba37.html「日田文學」が休刊になってしまったのは、「文學界」(文藝春秋)の同人雑誌評がなくなってしまったからだった。河津さんはこのコーナーの常連で、大石さんなんかもそうだった。この同人雑誌評は縮小して「三田文學」に場所を移したのだが、河津さんが完全にやる気をなくしてしまった様子だった。
そういえば、『abさんご』が芥川賞を受賞したあとで、河津さんからお電話があり、電子書籍の話になって、それについてお話ししたのだが、河津さんのKindle本はまだないようだ。
とうの昔にプロになってよかったはずの人なのに、純文学に逆風が吹き、純文学を代表するような作品をお書きになる河津さんにはまことに悪い時代だった。
河津さんの『耳納連山』は、シモーヌ・ヴェイユ(フランスの女性哲学者)の紹介者、翻訳者として著名だった故田辺保先生も、絶賛なさっていた。
記事で言及した田辺先生はシモーヌ・ヴェイユの翻訳、研究家として日本で第一人者でしたが、河津さんの作品をお送りしたことがあったことを思い出しました。
河津さんのアマゾン著者ページはこちら→https://amzn.to/34xRf8b
わたしの作品では「侵入者」が『文學界』2008年07月号でベスト5に選ばれました。「侵入者」は「鶏の鳴くころ」と抱き合わせて『結婚という不可逆的な現象』というタイトルでKindle版にしています。
以下に、アマゾン掲載中の『台風』の商品説明から引用します。
大学生の息子と受験を控える娘を持つ専業主婦の央子は、夫に違和感を覚えるようになっていた。
古い借家が白蟻、そして台風に見舞われたとき、家族はそれにどう対処したのか。
リアリズムの手法で、社会状況を背景に人間の心理を丁寧に掘り下げ、台風を克明に描いた純文学小説。「もの凄い風圧に家と共に耐えるだけで、母子が何も考えられなくなってほどなく、爆音――としか思えない音――が轟いた。家が回転するように大きく揺らいだ。
午前11時48分。このとき日田で、大分地方気象台が観測史上最大となる最大瞬間風速50・2メートルを記録していた」物語の舞台は大分県日田市。登場する長沢一家は四人と一匹で、世帯主の功(いさお)、妻の央子(ひさこ)、長男の亘(わたる)、長女の美亜(みあ)、ジャンガリアン・ハムスターのフレーズ。
〈目次〉
第一章 古びた大きな借家
第二章 白蟻事件
第三章 家庭問題
第四章 平成十六年、台風第十八号の上陸
第五章 風速五○・二メートルの恐怖
第六章 損壊した借家
第七章 人間模様
第八章 夫婦
第九章 損害賠償の請求と長男
第十章 引っ越し
以下に、アマゾン掲載中の『結婚という不可逆的な現象』の商品説明から引用します。
かけがえのない家庭で起きた予期せぬ出来事。世間ではありふれた出来事の一つにすぎなかったが、薫子にとっては全身全霊で対処する必要に迫られた大事件であった……精緻な心理描写と哲学的な考察で個人の背後に存在するこの国の流儀を浮かび上がらせ、人生のはかない美しさを描き出す。
「侵入者」は平成19年に執筆した短編小説で、同人誌「日田文学」56六号(編集人・江川義人、発行人・河津武俊、平成20年)に発表。「侵入者」は「文学界」7月号(文藝春秋、平成20年)・同人雑誌評蘭で今月のベスト5の一編に選ばれた。
「鶏の鳴くころ」は、「侵入者」の続編として平成27年に執筆した短編小説。
以下はアマゾン・キンドルストアの拙著者ページです。拙電子著書一覧を御覧いただけます。
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