『祐徳院』らくがきメモ 8)ワキが後ジテに出逢う場面での美の表現の難しさ。二日に一句。
創作の計画立てし二日かな
新作能の執筆は初めてということで、自分を甘やかしてきたが、できれば年内に仕上げたいと考えている。昨日、そのための計画をざっと立てた。
ノート7では、田中軍医をモデルとしたワキが、萬子媛をモデルとしたシテ(前ジテ)に出逢う場面を書いた。
2021年12月16日 (木)
『祐徳院』らくがきメモ 7)田中軍医をモデルとしたワキが、萬子媛をモデルとしたシテ(前ジテ)に出逢う場面
https://elder.tea-nifty.com/blog/2021/12/post-b59f41.html
年末に考えていたのは、故郷の名を記した醤油樽に縋り付いているワキ(田中軍医をモデルとした人物)に萬子媛が出現する場面だった。
これに先立つ出来事として、ワキが前ジテに船中で出逢う(ワキの乗る江尻丸という貨物船は魚雷にやられて爆発する運命にある)。そのときの萬子媛は生前の老尼僧の姿で、気高くは見えても普通の人としての姿である。
それに対して、後ジテとしてワキに出現する萬子媛は女神としての神々しく若々しい姿だ。かといって、それは人を脅かす異形の姿ではない。
ここをどう表現するかで迷っているうちに年末年始の慌ただしさにどっぷり漬かってしまい、中断してしまっていた。
生死の海に漂ひて、残り少しと身を思ふ際[きは]に、あら、きらきらしき女性[にょしゃう]一人[いちにん]さしぐみに現れ給ふは、如何なる御方にてましますぞ。
芹生公男『現代語から古語を引く辞典』(三省堂、2018)には、「美しい」を意味する古語には沢山あるのだが、これはどうだろうと古語辞典を引いてみると、わたしのイメージとはずれがあったり、現代語とのイメージ的乖離があったりで、選択に迷う。
「きらきらし」には、
- きらきらと輝いている。
- 端正である。(容姿が)整って美しい。
- 堂々として威厳がある。
- きわだっている。
といった意味がある(宮腰賢・石井正巳・小田勝『全訳古語辞典』旺文社、第五版小型版2018)。
後ジテの萬子媛は文字通り、きらきらと輝き、美しく、堂々として威厳があり、際立っておられるのだからこの古語でいい気もするが……まだ迷っている。