以下の記事から、前回の夫の健康診断(職場検診)に関係する部分を抜粋。
夫は、過日、定年後の再就職で入った会社の健康診断で、血圧が経過観察となっていました。夫は密かに心配していたようで、わたしの目につくところに健康診断の結果を広げていました。
上が130ちょうど、下は基準値内で高血圧という判定は、61歳という夫の年齢からすると、厳しすぎる採点ではないかと思いました。それよりわたしは、ほん少しはみ出ているコレステロールが気にかかりました。義母(夫の母親)は中年期から高脂血症だったのですが、脳梗塞で倒れたことがあります。ただし、これは空腹時の採血ではありません。
念のために病院に行ったみたら、というと、夫はいつものように「別にいいよ」といいました。明らかにもう一押ししてほしそう。そこで、もう一押ししたら、行く気になってくれました。
総合病院、わたしの通っている循環器クリニック、近くの内科循環器科医院のうちのどれかがいいのではないか、と夫にいいました。
夫の年齢を考えると、歩いても行ける距離にホームドクターをつくっておいたほうがいいと前から話してはいました。そのよい機会でした。夫は近くの内科循環器科医院を選択。ググってみると、先生は東京の私大(博士課程)卒。連携という点でどうだろうか、とは思いましたが、よさそうな感じはしました。
成人病の生活指導なども積極的に行われているようなので、夫に禁煙を勧めて貰えるかもしれないとわたしは期待しました。
夫が健康診断の結果を持参して、そこを受診したところ、血圧は問題ないということで(病院ではもっと低く出たようです。健康診断の基準は厳しすぎると先生もおっしゃっていたとか)、空腹時の血液検査でも特に異常はありませんでした(でも、悪玉コレステロールには気をつけたほうがよさそうな気がわたしはしました)。
また何かあれば、ということでした。血液検査なども、心配であれば、定期的にしてくださるそうです。
先生の年齢はわたしくらい、説明は丁寧、お年寄りの患者ばかりだったそうですが、混んでも閑散としてもいず、建物の中は綺麗なほう。
夫は気に入り、そこの先生が今後ホームドクターになりそうです。ただ、禁煙とか減煙の忠告などは何もなく、この点に限り、わたしの期待外れでした。
そして、今回、昨年末に受けた夫の健康診断の結果が返ってきました。血液検査に関しては、前回いくらかオーバーしていた悪玉コレステロールは1だけ下がっていました(オーバーは変わらず)。他は全て異常なしでした。血圧も基準値内。
ただ、青天の霹靂だったことには、希望すれば受けられる「がん検診」で、胸部X線の項目に「右上肺野 腫瘤陰影」とあったことです。
それについて、「レントゲン検査の結果、右の肺に正常とは異なる所見を認めました。/特に自覚症状はないご様子ですので、そう言われてもピンとこないかも知れませんが、以前よりは減らしてはいらっしゃるにしましても、タバコを吸う習慣がおありですので、念のために精密検査を受けて問題ないことの確認をしておかれるとよろしいですね。/同封の封筒をお持ちの上、呼吸器科を受診されるようお勧めします。/また、これを機に禁煙ができると何よりですね。」とありました。
ゾッとしました。
夫はワルだったそうで、高校時代からの喫煙歴があります。実はわたしも大学時代、文芸部で喫煙を覚え、最初の子の妊娠がわかるまで吸っていました。結婚前につき合っていた頃、わたしたちは同じショートホープを吸っていました。こんな好み、よく一致します。
でも、結婚後すぐに妊娠したので(計算したらハネムーンベビー)、わたしは直ちに禁煙しました。夫にも頼みましたが、ノン。子供たちが喘息になったので、厳しく禁煙を迫りましたが、ノン(わたしたちの目の前で吸うことは少なくなりましたが)。ゲーム三昧。それ以外にも無分別な行動。そんな夫が許せず、特に子育て時代は喧嘩ばかりしていました。
そんな夫の許せない行動は、仕事のストレスから来ていた部分が大きかったようで(精神的に弱い男なんでしょうね)、定年退職後に再就職しましたが、楽なんだそうです。勿論仕事が大きな比重を占めてはいますが、現在は3Dなどの趣味を楽しめる生活といったらよいでしょうか。精神的に安定している様子が感じられ、煙草やお酒の量も減っていると思います。
ですが、喫煙は続けていますし、これまでの長い喫煙歴を思えば、そりゃ妻としては疑いますわね、あの病気を。
ここで話が逸れますが、わたしは昨年の11月25日に以下のような夢を見ました。
建物の立ち並ぶ、どことなくレトロな街。そこに我が家があるのだが、火事が発生する。道路沿いから裏手のほうへ火が回りかけている。道路の角を曲がるときに見ると、白木造りの家屋の至るところから真っ白い煙が出ている。ここまで火が来ているとしたら、裏手の逆端に近いところにある我が家も危ないのではないかと思う。土手のようになった道路に警官がいて、何か指示している。
この夢が気になっていたところ、大学時代からの男友達から来た年賀状がこれまた晴天の霹靂というべき内容でした。
彼は、誕生日がわたしと1日違いの本当に友人と呼べる人でしたが、結婚後は年賀状の遣り取りのみになっていました。年賀状に、とても小さな字で「今、元気にがん患者やっています。直腸ガン。2回目の抗がん剤治療中です。外来でやってます。あと1回抗がん剤入れて、2月の中旬に手術予定」とありました。
昔、大学の第1食堂でしたか、同じ法学部だった彼と授業後などによくカップコーヒーを飲みながら色々と語り合いました。誕生日が近いせいか、考え方や感じ方がそっくりで、双子のように感じることがありました。
互いの恋人のことも話したりしました。夫を見た彼はなぜか、「こ、怖い……」といいましたっけ。彼が書いた、『緑色の大地』というSFみたいな変わった小説のことはまだ覚えています。
就職とアパートを決めたことを母に知らせた翌日に何と母が倒れたので、わたしは帰省してそのまま病院の母の傍で数ヶ月を過ごしました(拙手記『枕許からのレポート』参照)。
就職がおじゃんになり、先の見通しがつかない失意の状態のときに、彼が来てくれました。わたしを何とか物にしようとしていた夫も、よく高級なメロンなど持って母を見舞ってくれましたが、彼は真の友情から一度だけただ来てくれ、勇気づけてくれたのでした。
アーモンド型をした女性的にすら見える彼の目に宿った綺麗な光を覚えています。このときの彼をモデルにして、わたしは『どこか別の美しい街』(『露草』から改題)という小説を書きました。これはやや倒錯的(?)な小説になりましたが、電子書籍にする予定ながら、まだできていません。まだ表紙だけ。
夢の中に出てくる家は人の体を表すことがあるので、真っ白な煙が出ている家屋というのは、がんで闘病している彼のことではないかと思いました。そして、自分のうちも――と思ったのは、今回の夫のがん検診に関することではないかと考えたのでした。
夢では黒い煙が全く出ていなかったこと、またその夢に続きがなかったことから、夫はがんではないかもしれないとも思いました。見えない世界からのそれらしい警告――空間に見える黄色や赤や黒い点――も何も見ませんでした。(以下の過去記事を参照)
それに、がん検診の結果から精密検査を受けて実際にがんと診断されるのはごく一部であるようです。
しかし、夫ががん、しかも厄介な肺がんであるとすれば、今後予想される大変な治療に加えて定年後の余裕のない暮らしから生活破綻まで懸念され、青ざめました。
こんなときにわたしが指針としてきた神智学の教えには「まず、よいドクターを見つけること」とありますから、そうすることにしました。
2012年4月から、外来治療でも「限度額適用認定証」(認定証)を医療機関に提出しておけば、窓口の支払いは自己負担限度額の範囲内で済むようになりました(自分が病人だと、こういうことには詳しくなれるのでいいですね)。
もしがんとすれば、この「認定証」がまず必要だと思いました。昔から入っているがん保険や、他に定年後に入り直したささやかな金額の保険でも、このときは藁にもすがる思いから、入っていてよかったと思いました。
いくつかの病院が精密検査に指定されていました。夫は職場から近い小規模の総合病院に行くつもりでいたようでしたが、治療時に他へ紹介状を書いて貰うにしても、診断は大事なので、もっと大きな病院がいいのではないかとわたしはいいました。
夫はこういうときはわたしのいうことに素直に従ってくれるので、わたしが選んだ国立病院へ行くことになりました。指定された病院はわたしたちにはどこも馴染みのない病院ばかりでしたが、ググると、その国立病院の呼吸器外科医長は著作もあるベテランのようだったので、すぐに治療に入る可能性なども考え、そこを選んだのでした。
その日、わたしは循環器クリニックの受診日でした。別の日に替えようかとも思いましたが、今日のところは夫に付き添う必要はないだろうからと思い、予定通りクリニックへ。待っている間、不安からあれこれ考えすぎるので、想像上の夫の肺に、想像で作り出した清らかな白い光を注ぎ込む神秘主義的作業に熱中しました。
わたしにはオーラが見えることがあり、人間にも動物にも、植物でさえ、肉体より精妙な――肉眼では見えない――光でできた体があり、その体は想像で作り出した光の影響を受けるのです(そして、目には見えない光の体に起きたことは多かれ少なかれ、それの下部組織である肉体に影響を及ぼすことが考えられます)。
そのことは自分のオーラを使って実験済みなので、それをやってみたのでした。人にはそれぞれの寿命があり、それは変えられないのでしょうが、何もやらないよりは(不安に駆られて愚かしい状態に陥るよりは自分のためにも)、絶対にいいはずです。
自分自身にもそれをやれば、あるいは病気はとっくに治っているのではないかと思うことがありますが、ダイエットやジョギングと同じで、続けることは難しいのですね。特に自分のこととなると、それだけの精神力が出ません。その間は、意識を完全に清浄な状態に保つ必要があるのです。
診察後に携帯の電源を入れてみると、夫からの不在着信が表示されました。
ドキドキしながら電話をかけると、案外早く呼吸器内科で診て貰え、胸部レントゲンとCTで何の異常も見つかなかったので、既に帰宅しているとのことでした。
「これを機会に禁煙してちょうだい」といいました。「うん、とりあえず減らすよ」と、つまらなさそうな口調で夫。「よかったじゃない」というと、夫はまあね、とか何とか、さすがにホッとしたようにいいましたが、嬉しくて覚えていません。
男友達には手紙を書こうと思いながら、まだ書いていません。彼にも、時間を決めて、友情の光を送ろうと思っています。1回は既に送りました。
今回の出来事に似たテーマで、わたしは『白薔薇と鳩』 という小説を書いています。これも電子書籍にする予定ですが、なかなかその時間が作れません。
悪玉コレステロールにはシナモンがいいそうですね。昨年の職場検診の結果が出て以降、朝のパンに夫はバターではなく、オリーブオイルを塗るようになりました。夫は案外オリーブオイルに抵抗感が少ないようで、むしろ好きなようです。夫の前世の一つはイタリア人だったりしてね。
洋風の料理を少なくしようかしらとわたしは考えたりしています。「運動不足だから、筋トレすることにしたよ」と夫。何と、職場で暇な時間にやり始めたとか。
⇒夫の健康診断 ②タバコ