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2019年7月28日 (日)

(承前)「フィリポ言行録」について

シンハ・ヤコボビッチ&チャールズ・ベルクリーノ(沢田博訳)『キリストの棺』(イースト・プレス、2007)には、初期キリスト教の文献にたびたび引用されていますが、わずかな断片が残るのみだった「フィリポ言行録」がよみがえったという、次のような興味深い記述があります。

1976年、フランス人のフランソワ・ボボンとベルトラン・ブービエがアトス山のクセノフォントス修道院の車庫に眠る文献の中から、「フィリポ言行録」のほぼ完全な写本を発見したのである。4世紀ごろのテキストにもとづく、14世紀の写本とされている。
 2000年6月、ボボンらはアトス山版「フィリポ言行録」のフランス語訳を完成し、世に問うた。そしてマグダラのマリアが使徒フィリポの妹であり、「マリアムネ」と呼ばれていたことを明らかにした。マグダラのマリアに関する限り、「フィリポ言行録」は新約聖書をはるかにしのぐ情報の宝庫だった。(ヤコボビッチ&ベルクリーノ,沢田訳,2007,p.160)

英語版ウィキペディアによると、フランソワ・ボボン(FrançoisBovon 1938年3月13日 - 2013年11月1日)はスイスのローザンヌ生まれ。聖書学者、初期キリスト教の歴史家。ハーバード神学校宗教史の名誉教授。

フランス語版ウィキペディアによると、ベルトラン・ブービエ(Bertrand Hermann Bouvier  1929年11月6日 - )はスイスのチューリヒ生まれ。ジュネーブ大学文学部の名誉教授。

残念ながら、『フィリポ言行録』はまだ邦訳されていないようです。

前掲フランス語版ウィキペディア「ベルトラン・ブービエ」によると、ブービエには次のような著作があり、フィリポ言行録関連の著作と思われます。

Actes de l’apôtre Philippe. Introduction, traduction et notes, par Frédéric Amsler, Bertrand Bouvier et François Bovon (Apocryphes 8), Turnhout: Brepols, 1996.
・"Actes de Philippe", par Frédéric Amsler, Bertrand Bouvier et François Bovon, in: François Bovon et Pierre Geoltrain (éditeurs),Écrits apocryphes chrétiens, I (La Pléiade 442), Paris, Gallimard, 1997, p. 1179-1320.
Acta Philippi, Textus, édition critique en collaboration avec François Bovon et Frédéric Amsler, vol. 11 du Corpus Christianorum: Series Apocryphorum, Bruxelles, Brepols, 1999.

アマゾンフランスで、次の本が購入可能のよう。わたしは日本のアカウントしか持っていないので(アメリカのアカウントを持っていると、フランスなどでもお買い物できて便利でしょうね)、無理ですが(購入したところで読めないでしょうし)。邦訳版が出るのを首を長くして待つばかり。

Actes de l'apôtre Philippe Broché – 19 août 1996
de Bertrand Bouvier (Auteur), François Bovon (Auteur), Frédéric Amsler (Auteur)
Editeur : Brepols; Édition : 01 (19 août 1996)
Collection : Apocryphes
Langue : Français
ISBN-10: 2503504221
ISBN-13: 978-2503504223

マービン・マイヤー&エスター・A・デ・ブール(藤井留美&村田綾子訳)『イエスが愛した聖女 マグダラのマリア』(日経ナショナル ジオグラフィック社、2006)には、マグダラのマリアが登場する文書として、新約聖書の福音書、ペトロの福音書の他に注目すべき文書群――マリアの福音書、トマスの福音書、フィリポの福音書、救い主との対話、ピスティス・ソフィア、マニ教詩篇集「ヘラクレイデスの詩篇」が紹介されています。

これらに「フィリポ言行録」が加わって、いよいよマグダラのマリアの存在感、文書類の内容の統一感が際立ってきます。それにつれて、新約聖書に登場する人々のよくわからなかった異様、異常と思われた行動も理解できるものとなっていきます。

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