戦後日本の文学を支え続けてこられた優れた昭和の作家、田辺聖子さんが逝去された
『花衣ぬぐやまつわる… わが愛の杉田久女』で、閨秀俳人・杉田久女を知りました。久女の人となりが精緻に描かれており、衝撃と感動を覚えました。
— naotsuka_maki (@NaotsukaM) 2019年6月10日
ご冥福をお祈りいたします。 https://t.co/bhmKfcXSF9
ウィキペディア「田辺聖子」より
田辺 聖子 (たなべ せいこ、1928年3月27日 - 2019年6月6日)は、日本の小説家。
大阪府大阪市生まれ。淀之水高等女学校を経て樟蔭女子専門学校(現大阪樟蔭女子大学)国文科卒。恋愛小説などを中心に活動し、第50回芥川龍之介賞など数多くの文学賞を授与されている。文化勲章受章者。 (中略)
幼少時は古典文学に親しみ、多くの少女小説を愛読した。戦時中は愛国心にあふれた軍国少女としての時代を過ごし、戦争で死ぬことを本望としていた。1943年『少女の友』の作文欄で川端康成の選により掲載された「さら」が最初の活字作品。敗戦後ではその反動と喪失感から複雑な思いを抱く中、古典文学の世界に癒しを見出した。大阪の金物問屋に就職で勤める傍ら文芸同人の『文芸首都』『大阪文学』に参加、『花狩』がラジオドラマに採用され放送作家となった時期もある。1956年『虹』で大阪市民文芸賞受賞し本格的な作家活動に入り、恋愛をテーマにした小説や大阪弁を用いた一種の方言文学の制作に取り組んだ。1964年に『感傷旅行』で第50回芥川賞に選出され、若手女流作家の寵児となる。以降は人気作家として多くの執筆依頼を受ける様になるが、純文学の賞である芥川賞の受賞者としての立場を枷に感じ、後年に「直木賞の方が欲しかった」と冗談含みで語っている。1987年の第97回直木賞から2004年第132回まで直木賞の選考委員を務めた。 (後略)
「田辺聖子」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2019年6月10日 05:47 UTC、URL: http://ja.wikipedia.org
戦後日本の文学を支え続けてこられた、優れた昭和の作家がまた一人逝ってしまわれた。深い喪失感を覚えずにはいられない。
何といってもわたしが忘れられない田辺聖子さんの作品は、閨秀俳人・杉田久女の評伝『花衣ぬぐやまつわる… わが愛の杉田久女』。
花衣ぬぐやまつわる… 上 わが愛の杉田久女 (集英社文庫)
田辺 聖子 (著)
出版社: 集英社 (1990/6/20)花衣ぬぐやまつわる… 下 わが愛の杉田久女 (集英社文庫) 文庫 – 1990/6/20
田辺 聖子 (著)
出版社: 集英社 (1990/6/20)
微に入り細を穿った描写により、久女の人生と心の機微が余すところなく伝わってきた。俳句のすばらしさも同時に伝わってきて、自分でも句作をするようになった。以下は、以前大宰府に行ったときに詠んだ下手俳句。
大宰府は底冷えの町久女の忌
古典の教養、社会を鳥瞰し人性を見抜く眼力、絶妙なバランス感覚、そうしたところから生まれる確かな筆力。
わたしは賞狙いをしていたころ、執筆に疲れたら『猫なで日記』を読んだ。賞狙いというギャンブルのために人生が狂わなかったのは、田辺聖子さんの作品のお陰かもしれない。
猫なで日記 私の創作ノート (集英社文庫)
田辺 聖子 (著)
出版社: 集英社 (1991/1/18)
賞狙いは不発に終わったが、「芸術は長く人生は短し」で、わが創作人生はようやく中盤に差しかかったところだ。
大衆に絶大に支持される田辺聖子さんは、芥川賞作家である。「田辺先生の文章の確かさはな、出発点が純文学だったところにあるんや」と、文学を教えていただいた横井三保さん(織田作之助賞を主宰する大阪文学振興会事務局長。関西文学散歩の会代表)は以前おっしゃった。
感傷旅行 Tanabe Seiko Col (ポプラ文庫)
田辺 聖子 (著)
出版社: ポプラ社 (2009/2/2)
田辺聖子さんはスヌーピーのぬいぐるみがお好きで、ぬいぐるみ好きのわたしはその点でも、いたく共感を覚えたものだった。
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