薫り高い新元号「令和」
本日――2019年4月1日13時15分、元号を「令和[れいわ]」に改める政令が官報に掲載され、公布されました。
新元号「令和」は万葉集の梅の花の歌、32首の序文にある次の文章から引用されたとか。典拠が漢籍ではなく、国書――それも日本最古の和歌集――というのは意外でした。
初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫す
「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然。こうした日本の国柄を、しっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたいとの願いを込め、『令和』に決定した」との安倍首相の言葉です。
「令和」が始まる日となる政令の施行日は、皇太子さまが天皇に即位する5月1日。
古い時代の和歌では、花というと、梅を指すことが多いですね。冬の寒さに耐えていた花の中で、梅は一番に莟をふくらませ、開花します。百花の魁[さきがけ]といわれ、「春告草」の別名がある、大変おめでたい花です。
ウィキペディア「万葉集」には、次のような解説があります。
『万葉集』(まんようしゅう、萬葉集)は、7世紀後半から8世紀後半にかけて編まれた日本に現存する最古の和歌集である。天皇、貴族から下級官人、防人などさまざまな身分の人々が詠んだ歌を4500首以上も集めたもので(うち作者不詳の歌が2100首以上ある)、759年(天平宝字3年)までの約130年間の歌が収録されており、体裁が整った成立は759年以後の、780年頃にかけてとみられている。
和歌の原点である万葉集は、時代を超えて読み継がれながら後世の作品にも影響を与えており、日本文学における第一級の史料であることは勿論であるが、方言による歌もいくつか収録されており、さらにそのなかには詠み人の出身地も記録されていることから、方言学の資料としても非常に重要な史料である。
また、日本史上初めてその出典を漢籍に求めなかった元号「令和」は、この万葉集に収められた一文が元である。(略)
編纂された頃にはまだ仮名文字は作られていなかったので、万葉仮名とよばれる独特の表記法を用いた。漢字の意味とは関係なく、漢字の音訓だけを借用して日本語を表記しようとしたのである。その意味では、万葉仮名は、漢字を用いながらも、日本人による日本人のための最初の文字であったと言えよう。
「万葉集」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。 2019年4月1日 07:53 UTC、URL: http://ja.wikipedia.org
ウィキペディア「万葉仮名」によると、万葉仮名の最も古い資料と言えるのは、5世紀の稲荷山古墳から発見された金錯銘鉄剣で、漢字の音を借りて固有語を表記する方法は5世紀には確立していたそうです。平安時代には万葉仮名から平仮名・片仮名へと変化していきました。
江戸時代の和学者・春登上人は『万葉用字格』(1818年)の中で、万葉仮名を五十音順に整理し〈正音・略音・正訓・義訓・略訓・約訓・借訓・戯書〉に分類した。万葉仮名の字体をその字源によって分類すると記紀・万葉を通じてその数は973に達する。
「万葉仮名」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2018年11月23日 14:59 UTC、URL: http://ja.wikipedia.org
古い時代から長い時間をかけて整えられてきた文字を、わたしたちは今、日本語として使っているわけです。
令という字でわたしなどが思い浮かべるのは命じるという意味ですが、同時に「令室」「令嬢」という敬称としての使い方も思い浮かびます。他に、「よい」「立派な」という意味もあるのですね。
令月はよい月という意味のようです。
梅を愛でる日本人の感性は、鎌倉時代初期に編纂された勅撰和歌集『新古今和歌集』などにも脈々と受け継がれ、江戸時代に生きた萬子媛が愛した『新古今和歌集』の中の藤原俊成女の歌にも梅が出てきます。梅は俳句でも盛んに詠まれてきました。
平成にはよいことも沢山ありましたが、物書きのわたしからすれば、わが国の文化――その中でも文化と深い結びつきのある文学――が貶められた時代だったとの印象が強いのです。
文化が損なわれるということは、日本の国柄が損なわれるということです。香気が薄れるということです。
新元号に、日本文化の回復と深化を期待し、外国から日本に訪れたり、滞在したり、帰化している方々にもそのような思いが伝わればいいなと思います。
ところで、3年前に「令和」を予知した人がいるようで、話題になっています。何気なく書かれているだけに、驚きです。未来人の予言は全滅ですね。
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