歴史短編1のために #44 鹿島藩日記第二巻ノート (6)祐徳院における尼僧達 その1
ノート(5)で、萬子媛は出家同然の扱いで、葬礼は「軽ク」執り行われ、僧侶の方々が大勢お見えになった、黄檗宗色の濃い葬礼であったようだ――と書いた。
布施の記録に、30人の僧侶の名があるのだが、この中に祐徳院で萬子媛と寝食を共にして修行に励んできた尼僧の名はあるのだろうか、というわたしの疑問があった。今一度、その記録を引用して凝視してみたい。
祐徳院様御葬礼、今日於津御庵相済申候、右に付、僧衆へ被下候布施、左ニ書載、
白銀三枚 桂岩和尚
同 壱枚 月岑和尚
金子弐百疋 慧達
同 弐百疋 石柱
銀拾五匁宛 先玄 五州 絶玄 盤江 長霊 禹門 石応 万山 訥堂 蘭契 満堂 蔵山 亮澤 大拙 瑞山
銀拾匁宛 眠山 石林 観渓 英仲 梅点 旭山 仙倫 全貞 禅国
銀五匁宛 智覚 𫀈要 (406頁)
桂巌は普明寺の開山であり、月岑は普明寺第二代(貞享四年、1687年)であった。次に記されている慧達は第三代(元禄十三年、1700年。元禄十六年に月岑、普明寺再住)。
その次に記されている石柱は、前出の慧達と共に、五月十五日(1705年7月5日)の日記に出てくる。
五月十五日は萬子媛の三十五日に当たり、格峯(鍋島直孝、断橋)が前日の晩景(夕刻)から古江田御庵(古枝にある祐徳院)を訪れた。格峯はこのとき、恵達(慧達)、石柱を同行させている。
そして、御庵中比丘尼・男女下々まで、精進料理が供されている。比丘尼とは尼僧のことだから「御庵中比丘尼」というのは、祐徳院で萬子媛と共に修行した尼僧達のことだろう。
御霊供膳用を含め、精進料理に使う野菜を祐徳院に運んだのは大熊孫左衛門で、彼は御厨藤左衛門・原口孫左衛門へ渡した。またこの料理関係で提市郎兵衛が十四日晩から料理が済むまで祐徳院に詰めた。
食材は豊富である。こんにゃくにも、「こんにゃく」「白こんにゃく」「佐賀こんにゃく」「氷こんにゃく」が出てくる。氷こんにゃくを試しにググってみると、文字通りこんにゃくを凍らせたものがダイエットによいということで流行っているようだが、宝永のころの氷こんにゃくとは別物だろうか。
布施の記録にある桂岩、月岑、慧達、石柱は、普明寺関係の男性僧侶達である。それ以外はわからないのだが、残り全部が尼僧達かもしれないし、何割かがそうであるかもしれない。あるいは、尼僧達はこの記録には全然ないのかもしれない。
「蘭契」という名が女性的だな、とわたしは思った。果たして、この蘭契が先の頁に出てきた。
| 固定リンク
「歴史」カテゴリの記事
- 本日――令和6年4月13日、右も左もない国民運動として「パンデミック条約 国際保健規則改定反対集会」及び池袋デモ行進が行われました(2024.04.13)
- パレスチナ・イスラエル戦争。ロスチャに握られた原発と水道。ユーチューバーによる3年前のガザ観光動画。(2023.10.25)
- ついにわかりました! いや、憶測にすぎないことではありますが……(祐徳院三代庵主の痕跡を求めて)(2023.07.04)
- 皆既月食の最中です(2022.11.08)
- 終戦の日(2022.08.15)
「文学 №2(自作関連)」カテゴリの記事
- Kindle版『気まぐれに芥川賞受賞作品を読む 2007 - 2012』をお買い上げいただき、ありがとうございます!(2024.11.13)
- 神秘主義的エッセーブログを更新しました。エッセー 120「舅の死(ある因縁話)。百貨店でオーラの話。」(2024.09.24)
- Kindle版『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち』をお買い上げいただき、ありがとうございます!(2024.08.25)
- ひと月ぶりで、すみません。「mRNAワクチン中止を求める国民連合」が発足。ハムスターの腫瘍にイベルメクチンが奏功。「えびとなすとオクラのしょうゆ炒め」(みんなのきょうの料理)。(2024.06.06)
- 『卑弥呼をめぐる私的考察』(Kindle版)をお買い上げいただき、ありがとうございます! (2024.03.18)
「文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事
- ついにわかりました! いや、憶測にすぎないことではありますが……(祐徳院三代庵主の痕跡を求めて)(2023.07.04)
- 第29回三田文學新人賞 受賞作鳥山まこと「あるもの」、第39回織田作之助青春賞 受賞作「浴雨」を読んで (2023.05.18)
- 神秘主義をテーマとしていたはずのツイッターでのやりとりが、難問(?)に答える羽目になりました(2022.06.22)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- モンタニエ博士の「水は情報を記憶する」という研究内容から連想したブラヴァツキー夫人の文章(2022.02.20)
「萬子媛 - 祐徳稲荷神社」カテゴリの記事
- ひと月ぶりで、すみません。「mRNAワクチン中止を求める国民連合」が発足。ハムスターの腫瘍にイベルメクチンが奏功。「えびとなすとオクラのしょうゆ炒め」(みんなのきょうの料理)。(2024.06.06)
- ついにわかりました! いや、憶測にすぎないことではありますが……(祐徳院三代庵主の痕跡を求めて)(2023.07.04)
- 神秘主義エッセーブログより、改稿済み「71 祐徳稲荷神社参詣記 (2)2016年6月15日」を紹介(2022.11.04)
- 神秘主義的エッセーブログに「118 祐徳稲荷神社参詣記 (18)萬子媛亡き後の祐徳院(二代庵主の御子孫から届いたメール)」をアップしました(2022.09.10)
- 「西方浄土」という表現に関する私的発見。オーラに関する補足。(2022.06.01)
「Notes:萬子ひめ」カテゴリの記事
- ひと月ぶりで、すみません。「mRNAワクチン中止を求める国民連合」が発足。ハムスターの腫瘍にイベルメクチンが奏功。「えびとなすとオクラのしょうゆ炒め」(みんなのきょうの料理)。(2024.06.06)
- ついにわかりました! いや、憶測にすぎないことではありますが……(祐徳院三代庵主の痕跡を求めて)(2023.07.04)
- 福島雅典 京都大学名誉教授らが原告となり、厚労省に対して東京地裁に情報公開請求などの訴えを提示。パブリックドメインの楽譜を無料でダウンロードできるサイト。(6日に加筆訂正あり)(2023.02.05)
- 神秘主義エッセーブログより、改稿済み「71 祐徳稲荷神社参詣記 (2)2016年6月15日」を紹介(2022.11.04)
- 神秘主義的エッセーブログに「118 祐徳稲荷神社参詣記 (18)萬子媛亡き後の祐徳院(二代庵主の御子孫から届いたメール)」をアップしました(2022.09.10)