H.P.ブラヴァツキー(忠源訳)『シークレット・ドクトリン 第2巻 第1部 人類発生論』(竜王文庫、2018)を読んで
アマゾンに書き込んだ拙レビューを転載します。
シークレット・ドクトリン 第2巻 第1部 人類発生論 (神智学叢書)
H.P.ブラヴァツキー (著), 忠 源 (翻訳)
出版社: 竜王文庫 (2018/1/1)
シークレット・ドクトリン 第2巻 第1部 人類発生論 (神智学叢書
霊(モナド)・魂(知性)・肉の三つの面から総合的に捉えられた人類発生論
★★★★★
まだ読み込んだとはいえませんが、この著作が貴重な、またこの上なく面白いものであることには間違いないと思われますので、おすすめです。
ブラヴァツキーの著作を読むと、人類の知的遺産の薫りがして、作品の中に破壊されたアレクサンドリア図書館までもがまるごと存在しているかのような感動を覚えずにはいられません。
肉体的、物質的な面に限定された観点からではない、霊(モナド)・魂(知性)・肉――七本質――の三つの面から総合的に捉えられた人類発生論ですから、宇宙発生論同様、この『第2巻 第1部人類発生論』の内容も深遠です。
『シークレット・ドクトリン』がブラヴァツキーの渾身の執筆作業を通じて、大師がたの監修のもとに人類に贈られた科学、宗教、哲学を統合する一大著作であるとすれば、それは現人類にとって、自分を知るための最高の教科書であるはずで、その記述が深遠、難解であるのも当然のことでしょう。
宇宙発生論を復習すると、目に見える惑星には自分を含めて七つの仲間球があり、一つの惑星チェーンを構成します(四番目のものが最も濃密、目に見える実体のある球体です)。惑星上の生命の源モナドはその七つの球体をまわり――一環(ラウンド)といいます――、七回まわります(七環あります)。
わたしたちは第四環の第四球体である物質地球(D球)上に存在しており、第5〈根本〉人種期にあります。第6、第7と続きます。
「人間は――動物の姿をした神だが――〈物質的自然界〉の進化だけによる結果であり得るのか?」(106頁)というテーマが壮大な宇宙と地球的ドラマを見せながら展開される中でも、月と地球の関係など、本当に神秘的な記述でありながら、なるほどと納得させられるだけの根拠が感じられます。
月から来たモナドである月ピトリ達(月の主方)のアストラル的な影(チャーヤー)であり、自生であった第1人種。滲出生であった第2人種。卵生、二重性(雌雄同体)であった第3人種。その終わりに、性の分離が起きます。
人間の性の分離後における半神的な人間の最初の子孫がアトランティス人で、このアトランティスの巨人達が第4人種でした。
レムリア、アトランティスに関する記述は圧巻です。古代の宗教・哲学、神話、寓話、伝説、伝承がかくもダイナミックに甦るとは。
わたしは昔、学研から出ていたオカルト情報誌「ムー」でアトランティス伝説を知り、その後アトランティスについて書かれたプラトンの未完の作品『クリティアス』を読みました。この度、美しい、わかりやすい日本語で、ブラヴァツキーの筆が醸し出す精緻、荘重な雰囲気を味わいながらアトランティスに関することを読める幸福感はまた一入でした。
プラトンは、アトランティスに関することをファンタジーとして書いたわけではありませんでした。新プラトン学派とも呼ばれた古代神智学徒の流れを汲む近代神智学徒ブラヴァツキーにアトランティスに関する記述があったとしても、不思議なことではありません。
初めてこの本を開いたのは、2017年のクリスマスでした。クリスマスに、旧約聖書に登場するノアがアトランティス人として語られるくだりを読むのは、格別の面白さに感じられたものです。
「訳者 あとがき」で『シークレット・ドクトリンの第1巻 宇宙発生論』を平成元年に上梓された第二代竜王文庫社長で綜合ヨガ竜王会第二代会長、神智学協会ニッポン・ロッジ初代会長でもあった田中恵美子先生による訳者はしがきが紹介されており、その中で『シークレット・ドクトリン』の構成について、次のような説明がなされています。
<ここから引用>
『シークレット・ドクトリン』の原典の第一巻は第1部「宇宙発生論」スタンザとその註釈、第2部「シンボリズム」、第3部「補遺」となっています。又、二巻は第1部「人類発生論」スタンザと註釈、第2部「世界の宗教とシンボリズム」、第3部「補遺」となっています。
<ここまで引用>
第1部「宇宙発生論」スタンザとその註釈に関しては、以下の邦訳版をアマゾンで購入できます。
シークレット・ドクトリン 宇宙発生論《上》
H・P・ブラヴァツキー (著), 田中恵美子 (翻訳), ジェフ・クラーク (翻訳)
出版社: 宇宙パブリッシング; 第1版 (2013/4/15)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 軌道修正したらしいノーベル文学賞。2018年オルガ・トカルテュク(ポーランド)、2019年ペーター・ハントケ(オーストリア)。(2019.10.15)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その15。10月8日午後再開。河村市長の座り込み抗議、赤に白一点のフォーラム。田中保善『泣き虫軍医物語』。(2019.10.08)
- 萬媛の三番目物ノート ①大まかなあらすじ (2019.10.03)
- 原田マハ『楽園のカンヴァス』を読んで気になった、嘘。神秘家だったアンリ・ルソー。(2019.08.19)
「評論・文学論」カテゴリの記事
- 軌道修正したらしいノーベル文学賞。2018年オルガ・トカルテュク(ポーランド)、2019年ペーター・ハントケ(オーストリア)。(2019.10.15)
- あらすじ、できました。新作能を読んだ感想。(2019.10.03)
- 借りてきた新作能の本、三冊 (2019.09.29)
- 原田マハ『楽園のカンヴァス』を読んで気になった、嘘。神秘家だったアンリ・ルソー。(2019.08.19)
- ツイッターで問題となっている、芥川賞候補作「百の夜は跳ねて」(古市憲寿)。8月15日に追記あり、赤字。(2019.08.15)
「神秘主義」カテゴリの記事
- 「100 祐徳稲荷神社参詣記 (12)祐徳院における尼僧達」を神秘主義エッセーブログにアップしました(2019.12.09)
- 田中保善『泣き虫軍医物語』に見る第二次大戦の諸相 ①映画「タイタニック」ばりの脱出劇と醤油樽(加筆あり、赤字)(2019.11.26)
- 大嘗祭がはじまりました。12日には、出雲大社の上空に鳳凰に見える雲。(2019.11.14)
- 萬媛の三番目物ノート ①大まかなあらすじ (2019.10.03)
- 夫の鼻の手術(祝・トンネル開通)(2019.09.27)
「歴史」カテゴリの記事
- (補足)歴史短編1のために #44 鹿島藩日記第二巻ノート (6)祐徳院における尼僧達 その1(2019.12.04)
- ヘイトスピーチ解消法に関する小野田紀美議員の秀逸な国会質疑と、shinさんの働きかけ(2019.11.23)
- 田中保善『泣き虫軍医物語』に見る第二次大戦の諸相 ①映画「タイタニック」ばりの脱出劇と醤油樽(加筆あり、赤字)(2019.11.26)
- 大嘗祭がはじまりました。12日には、出雲大社の上空に鳳凰に見える雲。(2019.11.14)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その16。閉幕と疑われる統一教会の関与、今度は広島で。(2019.10.25)
「文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事
- (補足)歴史短編1のために #44 鹿島藩日記第二巻ノート (6)祐徳院における尼僧達 その1(2019.12.04)
- 田中保善『泣き虫軍医物語』に見る第二次大戦の諸相 ①映画「タイタニック」ばりの脱出劇と醤油樽(加筆あり、赤字)(2019.11.26)
- あいちトリエンナーレと同系のイベント「ジャパン・アンリミテッド」。ツイッターからの訴えが国会議員、外務省を動かす。(2019.10.30)
- 葵家やきもち総本舗の「京おはぎ味くらべセット」。謡曲集で何度も読んでいた「高砂」「初雪」。(2019.10.21)
- 軌道修正したらしいノーベル文学賞。2018年オルガ・トカルテュク(ポーランド)、2019年ペーター・ハントケ(オーストリア)。(2019.10.15)
「Theosophy(神智学)」カテゴリの記事
- 「100 祐徳稲荷神社参詣記 (12)祐徳院における尼僧達」を神秘主義エッセーブログにアップしました(2019.12.09)
- 夫の鼻の手術(祝・トンネル開通)(2019.09.27)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その13。「開戦の詔勅」から「表現の不自由展・その後」まで、ツイートを時系列に。(2019.09.16)
- ツイッターから拾った、中共の臓器ビジネス関連の三記事(2019.08.27)