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2018年2月24日 (土)

21日に還暦の贈り物。バルザック『リュジェリーの秘密』(春風社)と、久々のインスピレーション。

亀記事ですし(数学の問題集とバルザックの小説に熱中して、アッという間に時間が経ってしまいました)、自分のための覚書になりますが、2月21日に60歳の誕生日を迎え、家族と妹から還暦のお祝いに心のこもった贈り物を貰いました。

息子が贈ってくれたポールスミスのハンドバッグは、わたしがここ数年「こんなハンドバックがほしいなあ」と想い描いていたようなもので、驚きました。使いやすそうで、カッコよくて。娘とデパートの店員さんのアドバイスがあったと知り、ああそれで……と納得しました。

小さなカードの文面に「今後も文芸、学究を深めますよう」とあり、ありがたくて感涙。

住居問題がようやく片付きそうですが、これも息子のお陰なのです。息子は仕事柄出張が多く、夜はベルギーとの間で行われるWeb会議などあって、多忙そうです。

子供たちのためにも、気を引き締めてよい老後にしなくてはと思っています。

娘は色々なものを贈ってくれ、その一つは花束で、マゼンダ、紫、薄ピンク、白の花々を使って、華やかながら落ち着きのある女性をイメージさせるようなものに仕上げられています。そのような女性になりたいものです!

また、贈り物の中には本もあり、その本ではバルザックのカトリーヌ・メディシスを題材にした作品がメインとなっています。

バルザック王国の裏庭から――『リュジェリーの秘密』と他の作品集
宇多直久 (著, 翻訳)
出版社: 春風社 (2017/4/14)

この宇多直久による新訳『リュジェリーの秘密』は、東京創元社・昭和50年初版の『バルザック全集 23  カトリーヌ・ド・メディシス』に収録されている四編の作品のうちの一編と同じものです。

バルザック全集 23
バルザック (著),‎ 渡辺 一夫 (翻訳)
出版社: 東京創元社 (1975/01)

『バルザック全集 23  カトリーヌ・ド・メディシス』は序章、第一部 カルヴァン派の殉教者、第二部 リュグジエリ兄弟の告白、第三部 二つの夢――と四つの部分から構成されており、これらは別個の作品が原題『カトリーヌ・ド・メディシスに関する哲学的研究 Etudes philosophiques sur Catherine de Medicis 』に収められたものだということです。

『カトリーヌ・ド・メディシスに関する哲学的研究』は『ルイ・ランベール』や『絶対の探求』と共にバルザックの大構想からなる La Comédie humaine に属する「哲学的研究」の一部を占めています。

解説に「『序章』は、現在の日本の一般読者にとって、非常に難解ではないかと思っている」とあるように、わたしにも難解で、積読になってしまっていました。

ところが、娘が贈ってくれた本では『リュジェリーの秘密』(前掲書『バルザック全集 23』では「第二部 リュグジエリ兄弟の告白」に当ります)を核として、関連するバルザックの小品、手紙類、エッセーなどが収められており、『リュジェリーの秘密』が嫌でも目に入る構成となっています。この作品は読みやすいです。

前掲書『バルザック全集 23』の解説に戻ると、『カトリーヌ・ド・メディシスに関する哲学的研究』について、次のように書かれています。

バルザックの『カトリーヌ・ド・メディシス』は、同じ種類の歴史小説や歴史劇のなかに伍しても些も見劣りがしないし、更に、他の作品が作者の叙情を核としている場合が多いのに対して、作者バルザックの「史観」或いは「歴史哲学」とでもいうべきものを軸としている点で、異色があり、バルザックがこの作品に『哲学研究』という名を冠しているのも、故なしとしない。(バルザック全集 23 、9~10頁)

ここを再読したとき、久しぶりにわたしに、稲妻がひらめくようにインスピレーションが訪れました。

そうだ、わたしが書きたいのはいわゆる大衆受けするお茶の間劇場的な歴史小説(実は現代的視点で書かれているという点で、歴史に舞台を借りただけの現代小説)ではなく、バルザックが書いたような歴史の核を形成する宗教・哲学的な部分を照射した歴史哲学小説なのだと思いました。

大それた望みだとは思いますが、わたしが本当に書きたいのはこれに尽きます。

萬子媛をモデルとした歴史小説の第二稿が進まなかったのは、取材の成果が間を置いて、少しずつ表れたということもありますが、何をどう書くかについて、葛藤があったからでした。もう5年もこの小説のことで悶々としてきたのでした。

それでも投げ出したいとは決して思いません。

バルザックの小説が見事なのは一般読者――一般読者といっても、バルザックの小説を当時愛読したのは貴族、ブルジョア、知識人層でしょうが――受けする要素も抜かりなく織り込まれているという点です。

『リュジェリーの秘密』については、また改めて書くことになるだろうと思います。

そういえば、久々にアマゾンのリポートを見たところ、このところ日本とアメリカで本が4冊売れ、誕生日に拙児童小説『田中さんちにやってきたペガサス』をダウンロードして読んでくださった方があったようで、嬉しいです。ありがとうございます。

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