大雨から考えさせられた、古代文明社会における魔術とイアンブリコス
凄まじいばかりの大雨には驚かされるばかりで、古代文明社会で魔術の研究が盛んだったのも心情的にわかるような気がした。
古代文明社会では、人智を超えた力を招聘してでも何とかしたいという思いに至るほど、天災による悲劇が数多く発生したに違いない。
近代神智学運動の母P・H・ブラヴァツキーは、半分邦訳版が出ている Isis unveiled ――H・P・ブラヴァツキー(ボリス・デ・ジルコフ編、老松克博訳)『ベールをとったイシス 第1巻 科学 上』(竜王文庫、2010)、H・P・ブラヴァツキー(ボリス・デ・ジルコフ編、老松克博訳)『ベールをとったイシス 第1巻 科学 下』(竜王文庫、2015)――の中で、古代文明社会で行われた魔術がどのようなものであったかを、歴史的な変遷に沿って理論面から丹念に考察している。
H・P・ブラヴァツキー(田中恵美子訳)『神智学の鍵』(神智学協会ニッポン・ロッジ、1987初版、1995改版)の用語解説「魔術」には次のように書かれている。
(……)魔術とは現世を越えた天上的な力と交流してこれを意のままに動かし、またより低級な領域の諸力を自在に使用するという科学である。それは隠れた自然の神秘の実際的知識で、ごくわずかな人にしか知られていない。魔術は非常に得がたい知識であり獲得しようとする人はほとんど法則に違反し罪を犯して失敗してしまうからである。古代と中世の神秘家達は魔術を、テウルギー(神々との交流)とゴスティアと自然の魔術の三つのクラスに分類した。(……) (ブラヴァツキー,田中訳,1995,用語解説p.59)
テウルギー(神働術)について多くを書き残し、それを実践したのは、3世紀の新プラトン派に属する神智学者で、イニトエートであったとされるイアンブリコスだった。
彼は「たいへんな苦行をし、清浄で真剣な生活を送った。(……)地面から約5メートルの高さまで空中浮遊したと言われている。」(ブラヴァツキー,田中訳,1995,用語解説p.17)
神智学の創始者アンモニオス・サッカスの直弟子達プロティノスとポルフィリオスはテウルギーは危険であるとして、懸念を抱いたらしい。
イアンブリコスの一派は、プロティノスやポルフィリオスの一派とは違っていた。このふたりの高名な人物は、典礼魔術も神働術も堅く信じてはいたが,危険であるとして強く反対した。 (H・P・ブラヴァツキー、ボリス・デ・ジルコフ編、老松克博訳『ベールをとったイシス 第1巻 科学 上』竜王文庫、2010、ベールの前でp.lvi)
イアンブリコスはピタゴラスについて最も多くを書き残している。ピタゴラス派の日々の生活がどのようであったかがイアンブリコス(水地宗明訳)『ピタゴラス的生き方(西洋古典叢書 2011 第3回配本)』(京都大学学術出版会、2011)を読むと、細かにわかる。
共同食事を解散する前に最年長者が神に献酒した後で唱える戒告が印象的なので、引用しておこう。ちなみに共同食事の献立はワイン、大麦パン、小麦パン、おかずは煮たのと生のままの野菜。神々に供えられた動物の肉も[時には]添えられた。
栽培され果実を産する植物を傷つけるなかれ、あやめるなかれ。同じく、人類に有害でない動物を傷つけるなかれ、あやめるなかれ。なおまた、神とダイモーンとへーロースのたぐいについては言葉を慎み、よい心情を抱け。また両親と恩人についても同様の心情を持て。法に味方せよ。違法と戦え。 (イアンブリコス,水地訳,2011,p.108)
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