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2017年3月 3日 (金)

村上春樹『騎士団長殺し』を読む ③入定とイデアの意味不明なハルキ的関係

このノートを書く前に再びアマゾンレビューを閲覧した。レビュー数が増えているぶん、批判的なレビューも増えていた。

批判的なレビュアーの中には、ハルキストと呼ばれていた人々も結構含まれている気がする。ハルキバッシングに発展する可能性すらあると思えた。

村上春樹がファンの一部から見放された原因は何だろう?

まだ第一巻を読んでいる途中なのだが、全体をざっと確認したところでは、かつてのムーディなところ、お洒落な趣向、リリシズムなどがそれほど感じられず、よく出てくる性描写にしても乾いた、即物性な印象を受け、どうしたのだろうと思ってしまったほどだ。

南京事件の採り上げかたにしても、ノモンハン事件を作品に採り上げたときのような、相変わらずの無造作さで、この御時世にこれではさすがに日本では左派、反日勢力以外の一般人には受け容れ難いものがあるだろう。

ネット検索中に閲覧した記事で、どなたかが村上春樹は中共のハニートラップにやられたのではないかとお書きになっていて、なるほどと思ってしまった。

すぐに寝て、どこへともなく姿を消す女たちの行動を女性諜報員たちのハニトラと思えば、納得がいく。さすがに一般人も騙されなくなってきた中共の工作を真実と疑わないところからも、そう空想させてしまうところがある。

女性たちの娼婦めいた描きかたは初期の作品から一貫したものではあった。それでも、例えば、『ノルウェイの森』では直子、緑、レイコといった主要な登場人物となっている女性たちにはきちんとした肉づけがなされ、描写は繊細であり、筆力にみずみずしさを感じさせるものがあった。

それがこの作品では、意図的なのかどうか、味も素っ気もない描きかたで、女性たちの魅力のなさという点では、わたしが読んだ中では一番といえるかもしれない。読んでいる途中なので、早計な判断かもしれないが。

しかし、作品をざっと見て、わたしがあっと驚いたのは「入定」が出てくる箇所だった。

萬子媛の入定を知った今のわたしにはあの描きかたは知識不足にとどまらない冒涜に思えたが、唯物論の信奉者の理解ではあれが限界なのだろうか、と勉強になった気がする。

イデアも出てきて、プラトンのイデア論をいくらか参考にしている風でもある。

ところが、プラトンでは永遠の真実在であるイデアが春樹の作品の中では、入定を試みた結果、失敗してお化けになった――とは書かれていないが、あの状態からすると、神秘主義的にはそうである――人物が絵の中の人物を借りて現われ、「あたしは霊であらない。あたしはただのイデアだ。」(村上春樹『騎士団長殺し 第1部顕れるイデア編』新潮社、2017、352頁)とホザくのである。

この記事は書きかけです。

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