村上春樹『騎士団長殺し』を読む ③入定とイデアの意味不明なハルキ的関係
このノートを書く前に再びアマゾンレビューを閲覧した。レビュー数が増えているぶん、批判的なレビューも増えていた。
批判的なレビュアーの中には、ハルキストと呼ばれていた人々も結構含まれている気がする。ハルキバッシングに発展する可能性すらあると思えた。
村上春樹がファンの一部から見放された原因は何だろう?
まだ第一巻を読んでいる途中なのだが、全体をざっと確認したところでは、かつてのムーディなところ、お洒落な趣向、リリシズムなどがそれほど感じられず、よく出てくる性描写にしても乾いた、即物性な印象を受け、どうしたのだろうと思ってしまったほどだ。
南京事件の採り上げかたにしても、ノモンハン事件を作品に採り上げたときのような、相変わらずの無造作さで、この御時世にこれではさすがに日本では左派、反日勢力以外の一般人には受け容れ難いものがあるだろう。
ネット検索中に閲覧した記事で、どなたかが村上春樹は中共のハニートラップにやられたのではないかとお書きになっていて、なるほどと思ってしまった。
すぐに寝て、どこへともなく姿を消す女たちの行動を女性諜報員たちのハニトラと思えば、納得がいく。さすがに一般人も騙されなくなってきた中共の工作を真実と疑わないところからも、そう空想させてしまうところがある。
女性たちの娼婦めいた描きかたは初期の作品から一貫したものではあった。それでも、例えば、『ノルウェイの森』では直子、緑、レイコといった主要な登場人物となっている女性たちにはきちんとした肉づけがなされ、描写は繊細であり、筆力にみずみずしさを感じさせるものがあった。
それがこの作品では、意図的なのかどうか、味も素っ気もない描きかたで、女性たちの魅力のなさという点では、わたしが読んだ中では一番といえるかもしれない。読んでいる途中なので、早計な判断かもしれないが。
しかし、作品をざっと見て、わたしがあっと驚いたのは「入定」が出てくる箇所だった。
萬子媛の入定を知った今のわたしにはあの描きかたは知識不足にとどまらない冒涜に思えたが、唯物論の信奉者の理解ではあれが限界なのだろうか、と勉強になった気がする。
イデアも出てきて、プラトンのイデア論をいくらか参考にしている風でもある。
ところが、プラトンでは永遠の真実在であるイデアが春樹の作品の中では、入定を試みた結果、失敗してお化けになった――とは書かれていないが、あの状態からすると、神秘主義的にはそうである――人物が絵の中の人物を借りて現われ、「あたしは霊であらない。あたしはただのイデアだ。」(村上春樹『騎士団長殺し 第1部顕れるイデア編』新潮社、2017、352頁)とホザくのである。
この記事は書きかけです。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- (26日にオーラに関する追記)「前世療法は、ブラヴァツキー夫人が危険性を警告した降霊術にすぎない」を動画化するに当たって、ワイス博士の著作を読書中②(2021.01.25)
- 「前世療法は、ブラヴァツキー夫人が危険性を警告した降霊術にすぎない」を動画化するに当たって、ワイス博士の著作を読書中(2020.11.19)
- Kindle版評論『村上春樹と近年の…』をお買い上げいただき、ありがとうございます! ノーベル文学賞について。(2020.10.16)
- 大田俊寛氏はオウム真理教の御用作家なのか?(8月21日に加筆あり、赤字)(2020.08.20)
- コットンの花とマーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』(2020.08.17)
「評論・文学論」カテゴリの記事
- (再掲)イルミナティ創立者ヴァイスハウプトのこけおどしの哲学講義(2020.10.17)
- 中共によって無残に改竄された、「ヨハネによる福音書」のイエス(2020.09.29)
- 「原子の無限の分割性」とブラヴァツキー夫人は言う(2020.09.15)
- 大田俊寛『オウム真理教の精神史』から抜け落ちている日本人の宗教観(この記事は書きかけです)(2020.08.28)
- 大田俊寛氏はオウム真理教の御用作家なのか?(8月21日に加筆あり、赤字)(2020.08.20)
「神秘主義」カテゴリの記事
- 21日、誕生日でした。落ち着きのある美しい花束と神秘的なバースデーカード。(2021.02.23)
- 著名なヨガ行者パラマンサ・ヨガナンダと前世療法における「前世の記憶」の様態の決定的違い(2021.02.13)
- (26日にオーラに関する追記)「前世療法は、ブラヴァツキー夫人が危険性を警告した降霊術にすぎない」を動画化するに当たって、ワイス博士の著作を読書中②(2021.01.25)
- YouTubeに動画「魔女裁判の抑止力となった暗黒時代の神秘主義者たち」をアップしました。(2020.11.24)
- 「前世療法は、ブラヴァツキー夫人が危険性を警告した降霊術にすぎない」を動画化するに当たって、ワイス博士の著作を読書中(2020.11.19)
「歴史」カテゴリの記事
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ④(2021.01.28)
- バイデン新大統領の就任式とマーシャルレポート(2021.01.22)
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ③(2021.01.20)
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ②(2021.01.18)
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ① (2021.01.17)
「文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事
- 著名なヨガ行者パラマンサ・ヨガナンダと前世療法における「前世の記憶」の様態の決定的違い(2021.02.13)
- 高校の統合で校歌が70年前のものに戻っていたので、作詞者と作曲者について調べてみました(夕方、数箇所の訂正あり)(2021.02.08)
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ⑤(2021.01.30)
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ④(2021.01.28)
- バイデン新大統領の就任式とマーシャルレポート(2021.01.22)
「村上春樹」カテゴリの記事
- Kindle版評論『村上春樹と近年の…』をお買い上げいただき、ありがとうございます! ノーベル文学賞について。(2020.10.16)
- 7 本目のYouTube動画「雪だるま」をアップ。動画化したい作品について。Kindle書籍からの引用箇所を示すことが可能に。(2020.06.24)
- シモーヌ・ヴェイユと母セルマとガリマール書店の〈希望〉叢書(2018.10.10)
- カズオ・イシグロ氏の受賞ではっきりした、ノーベル文学賞の変節(2017.10.06)
「思想」カテゴリの記事
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ③(2021.01.20)
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ① (2021.01.17)
- 流出したスパイ一覧、人身売買と悪魔崇拝(2020米大統領選)(2020.12.19)
- (再掲)テロ組織の原理原則となったイルミナティ思想が行き着く精神世界(2020.10.17)
- (再掲)イルミナティ創立者ヴァイスハウプトのこけおどしの哲学講義(2020.10.17)
「時事・世相」カテゴリの記事
- Kindleストアで販売中の短編純文学小説『昼下がりのカタルシス』の表紙を替えました(2021.03.02)
- 慰安婦問題、再び。今後の創作予定。KAGAYAさんの美しいツイート。(2021.02.25)
- 著名なヨガ行者パラマンサ・ヨガナンダと前世療法における「前世の記憶」の様態の決定的違い(2021.02.13)
- 縮小していく食の宝庫。今後が気にかかる瀬戸内海の島々。(2021.02.06)
- ヴァイスハウプトはロスチャイルドに依頼されてイルミナティを作った ⑤(2021.01.30)