二重国籍問題にメスを入れた有村治子議員(自民党) - 参院予算委2016.10.5
台湾籍との二重国籍だった民進党の蓮舫代表。
このことをきっかけとして、戦後70年も経ってようやく、重国籍問題が国会で採り上げられたというわけです。
このことは、わが国が目覚めた喜ばしい出来事であると同時に、重国籍を問題とせざるをえない危うい事態になったということでもあります。
日本国の存続ということを考えた場合、蓮舫代表の二重国籍問題から明らかになった法的不備は早急に改善されるべきでしょう。
自民党の有村治子議員が、この問題の核心をついた明晰な質疑を行っています。このような重要な質疑すら、ヘイトスピーチといわれないための工夫が必要とされるようになった日本。
本当に危ないところまで、来ているということです。
動画があったので、貼っておきます。また、冒頭の挨拶の部分だけ割愛させていただき、文字起こしをしてみました。素人の文字起こしですので、当てにはしないでください。ちょっとしたご参考までに。
国会中継 参議院予算委員会(2016年10月5日)、有村治子議員(自民党)の質疑より。
有村治子議員:(略)わたしは国籍法について、質問を重ねさせていただきたいと考えます。
二重国籍は、国際結婚のお子さんではよくあることです。アメリカなど、出生地主義の国で出産した日本人夫妻のお子さんにも、よくあることです。その方々に対する価値観を述べるわけではないということを、冒頭、明確にして、これから質疑に入らせていただきます。
法務大臣に伺います。日本は二重国籍等、重国籍を認めていますか。金田法務大臣:お答えさせていただきます。わが国の国籍法は重国籍の防止、または解消をはかるという立場をとっております。
重国籍者については国籍の選択を義務づける、これは国籍法第14条でございますが、義務づける等をしているところであります。
そして、重国籍者は重国籍となったときが20歳に達する以前であるときには22歳に達するまで、そのときが20歳に達したあとであるときには2年以内に、いずれかの国籍を選択する義務があります。
それにも拘らず、期限までに選択手続きを行わない場合には、国籍選択義務に違反していることになります。以上であります。
有村議員:では、続けて伺います。重国籍を認めない法律の意図、その背景にある思想は何ですか。
金田法務大臣:お答えをいたします。
重国籍者は同時に二つ以上の国家に所属をすることになります。従って、各国のその者に対する外交保護権の衝突、といったようなケースによりまして、国際的な摩擦が生ずる虞[おそれ]がある場合、あるいは、その者が各国から課せられる義務が衝突する虞がある場合。例えば、兵役義務を一方の国で課す、といったような場合であります。
そうした場合、また各国が重国籍者についてはそれぞれ自国民として身分関係を管理をする結果、重婚が生ずる虞があるといった、身分関係に混乱が生じる虞もあります。
そのために、わが国の国籍法は国籍の選択義務、これは国籍法第14条でございますが、これをはじめとする重国籍の解消及び防止のための制度を設けている、ということであります。
有村議員:ありがとうございました。この秋以降、急激に関心が強まった二重国籍については、国民世論の中でも様々な意見が出ています。
例えば、排外主義ではないか。排他主義ではないか。純血主義ではないか。差別ではないか。あるいは、他にも多くの二重国籍の人がいるんだから、いいじゃないか。――というような意見も出ています。
少し感情論ではないかなあという風に、これらのコメントにはわたくしは違和感を感じます。
二重国籍、もとより二重国籍の相手国への差別や偏見があってはならないのは、当然の国際マナーであります。心ない、感情的なヘイトスピーチも戒めたいものだと思います。
そのうえでわたくしが思うのですが、やはり国籍の異なる夫妻の子供が両親それぞれの言語や文化的教養を身につけて、社会で多様性を発揮することはすばらしいことだとわたくし自身は思っています。
その存在価値に何ら水をさす、そういう発言を一切しないと、首尾一貫してわたくしはこの質問を続ける中で、厳しい質問もしますが、そういう価値を明確にしながら質問を続けたいと思います。
そこで、法務省に伺います。法務省に代表される日本政府は重国籍の方が国籍法に抵触するか否かという法的コンプライアンスの視点で対応していると理解してよろしいですか。金田法務大臣:お答えをしたします。先ほど申し上げましたが、重国籍者の本人にとりましては、いくつかの例で申し上げましたが、具体的に問題が生じるというのは、先ほど申し上げた通りであります。
そういう中で、わたくしどもは、勿論、法務省としては、ただいま「重国籍者を差別するものではなく」というご指摘がありましたが、勿論そういう立場に立ちまして、そして、ただいま述べましたいくつかの理由によりましてですね、重国籍の防止、または解消をはかる制度を設けております国籍法に従いまして、適切に対応をしている、というところでございます。
有村議員:すなわち、重国籍に対してどう思うか、というような価値観を問うものではなくて、国籍法に抵触するかどうか、ということが焦点になっているということを明確にしたいと思います。
続けて、法務大臣に伺います。重国籍を持っていた国民がそれゆえに困難な状況に置かれた、というようなことは、あるのでしょうか。金田法務大臣:お答えを申し上げますが、先ほど二つ目の質問でお答え申し上げたことの繰り返しにはなりますが、やはり、重国籍者であることによりまして、困難が生じることがあるという風に承知しております。
繰り返しになりますが、具体的にいいますと、重国籍者は同時に二つ以上の国家に所属することになりますから、例えば、日本国民である重国籍者が他国の兵役の義務を負う可能性があります。
その場合に、それぞれの国に対する義務が衝突するという事態が起こりうるということが考えられます。
そしてまた、重国籍者の身分関係についてでございますが、本国法として適用される法律の内容が複数あるということになりますので、例えば、国際結婚等の有効性を判断する場合にですね、運用すべき本国法によって、有効とされたり無効とされたりすることがありえるわけであります。
このため、身分関係に混乱が生じたり、重国籍者本人が不安定な状況に置かれることがある、ということもいえると思います。従って、以上の通りですね、重国籍であることによって本人にとって様々な困難が生じうるものと承知をしております。
有村議員:例えば、両国間に戦争が起こったとき、どっちの国に忠誠を誓うのか、というようなことも問題となってきます。あるいは重国籍の方からお話を訊きますと、どちらの国に行っても外国人じゃないかというレッテルを貼られるのはつらいという意見も聞いたことがあります。
次に国家公務員の資格について、伺います。人事院規則は国家公務員法について、「日本国籍を持つ者でなければ、採用試験を受けられない」としています。
数ある国家公務員の職務の中でも、とりわけ外交官は外務公務員法によって日本国籍以外の国籍を同時に持つこと、重国籍であることが禁じられています。なぜ、このような規制があるのでしょうか。外務大臣に伺います。岸田外務大臣:外務公務員ですが、これは勤務地が世界各地に渡るため、その際に不都合が生じないような特例が必要です。また外務公務員の職務と責任は対外的、国際的であり、外国との関係で格段の注意を必要といたします。このような事情から、二重国籍者が外務公務員になれないことを、国家公務員から切り分けて、外務公務員法で特別に規定をしています。
不都合の例としましては、例えば、外交官が赴任国の国籍を有する場合、赴任国において、裁判権からの免除、あるいは不可侵、こういったものに制約が生じる、そういった可能性もある――このように考えております。
有村議員:先だっての参院予算委員会で、外務大臣はなぜこのような措置がとられているのか、外務公務員法の重国籍禁じる措置があるのかという下地先生の質問に対して特に国益をかけて仕事をしなければならない特殊性に鑑み措置をしていると答弁をされています。
その通りだと思います。けれども、そのような特殊性に鑑み仕事をしている方々は外務省職員から大使に至るまでの方々だけだろうか。外交官、指揮命令系統のトップに立つ外務大臣の二重国籍を禁じる法律は現在ありません。
国益と国益が正面からぶつかり合い、激しい心理戦、情報――諜報戦、多数派工作が日常的に繰り広げられている外交のトップをなす外務大臣が果たして二重国籍であって、勤まるのでしょうか。
また、二重国籍であっても外務大臣になれてしまう、なることができてしまうという現在の法制度について、どのようにお考えになりますか。岸田外務大臣:ご指摘の通り、外務大臣は外務公務員法における外務公務員に当たりませんので、二重国籍を認めない、という要件は適応されません。
今の日本のこの制度においては、外務大臣を含め、国務大臣への就任については、まず当然に日本の国籍を必要とする、このように解されています。
そして、そのうえで、この国務大臣、外務大臣をはじめとする国務大臣については、内閣総理大臣が任命するということになっています。
よって、この日本国籍を必要とする、この要件のうえに内閣総理大臣がこの適材適所の考え方から、誰をどういった大臣に任命するのか、これを判断する、こういった制度になっていると認識をしております。
有村議員:お答え、ありがとうございます。総理大臣が指名していれば、外務大臣が二重国籍にはならないというわけには、必ずしも論理的にはなりません。
実際に、総理の過去のご答弁では、閣僚を選任されるとき、指名されるときに二重国籍かどうかということを特段チェックしていません、という総理のコメントがあります。
そんな中で二重国籍の方が外務大臣にもなれてしまうというところに、国家機密を守る、その特殊性に鑑みての法的な脆弱性はないのでしょうか。安倍総理大臣:確かにですね、有村議員のご指摘は一理あると思います。外務大臣、あるいはこれは副大臣、政務官含めてこれは議員がなるわけであります。総理大臣もそうでございますが、外交交渉はまさに、国益と国益がぶつかることになるわけでございます。
そうしたことについてですね、果たしてどうだろうか、ということになるわけでございます。しかし、これはまあ国会議員のですね、資格でありますから、まさに政府で、これは大臣だからどうかということで考えるのがですね、いわば、それが大臣あるいは総理大臣に就任する国会議員としてどうか、ということもございます。
国会議員ということであれば、これは、院において、国会議員の身分に関わることですから、国会においてご議論をいただきたい、と思うわけでございます。
有村議員:外交は厳しいなあと改めて思います。
二重国籍の日本人でなくても日本の外交官が狙われる厳しい現実がございます。今から12年前には、シャンハイにあった日本の総領事官で、中国と本国外務省との通信を担当する電信員が中国の諜報機関の関係者と思われる方のターゲットになりました。
おそらくは、その通信上の暗号解読の情報を狙われていたと思われます。この日本人の外交官は国を売ることはできないといって、自らの口を封じるために自殺をはかっています。
そのくらい厳しい外交の現実でですね、やはり外交のトップに立つ方が二重国籍でないというのは国民に対する忠誠の誓いだと思われますが、外務大臣、如何でしょうか。岸田外務大臣:まず制度につきましては、先ほど説明をさせていただいた状況にある、日本の制度は説明させていただいた通りであります。そして、外国に関わる者の厳しさ、員のご指摘の通りだと思います。
そのトップに立つ外務大臣という者、その厳しい、そして重たい責任をしっかり自覚して、職務にとり組まなければならない、それはご指摘の通りだと考えます。
有村議員:時間になりましたので、これから残りは明日の朝の9時からにしたいと思いますが、自衛隊、防衛省職員の二重国籍を禁じる法律も現在はないということを申し上げて、明日の9時に残余の質問をさせていただきたいと思います。
※コンプライアンス=法令遵守
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