バングラデシュテロから改めて考えさせられた、世界的な国語力の低下
Yahoo!ニュースに掲載の毎日新聞 7月3日(日)21時46分配信記事「<バングラテロ>過激思想、社会に広がる 政権の抑圧に反発」によると、 今回の事件ではISが犯行声明を出したが、バングラデシュ当局は実行犯について、政権が抑圧を強めるイスラム協会と関係が深いとされるイスラム過激派組織「ジャマトル・ムジャヒディン・バングラデシュ」のメンバーだったと述べているという。
バングラでは、世俗派政党「アワミ連盟」が2009年に政権を奪還、ハシナ政権がイスラム主義政党「イスラム協会」への政治的圧力を強めてきた。パキスタンからの独立時(1971年)の戦争犯罪を裁く特別法廷では、協会幹部に次々と死刑判決を出した。
同記事では、日本人が狙われた理由を次のように示唆している。
聖心女子大の大橋正明教授(国際開発学)は「過激なイスラム教徒が強く反発し、不満の受け皿となった勢力が、現在の政権の信用失墜を狙ってテロを実行した可能性が高い」と指摘。「テロで海外からの投資や非政府組織(NGO)などの援助活動も萎縮する。それが実行犯の狙いだろう」と話す。
また、msnニュース掲載の朝日新聞2016年7月3日22時00分配信記事「内相「実行犯は高学歴の裕福な家庭出身」 ダッカ事件」によると、カーン内相は、「いずれも高学歴の裕福な家庭出身。神学校で学んだ者はいなかった」と語ったという。
バングラデシュ人民共和国、通称バングラデシュはウィキペディア(→バングラデシュ)によると、次のような国である。
南アジアにあるイスラム教徒主体の国。イギリス連邦加盟国、通貨はタカ、人口1億5,250万人、首都はダッカ。 北と東西の三方はインド、南東部はミャンマーと国境を接する。南はインド洋に面する。西側で隣接するインド西ベンガル州とともにベンガル語圏に属す。
1971年にパキスタンから独立。バングラデシュはベンガル語で「ベンガル人の国」を意味する。都市国家を除くと世界で最も人口密度が高い国で、人口数は世界第7位。
ベンガル湾に注ぐ大河ガンジス川を有する。豊富な水資源から米やジュートの生産に適し、かつて「黄金のベンガル」と称された豊かな地域であったが、インフラの未整備や行政の非能率から、現在はアジアの最貧国に属する。近年は労働力の豊富さ、アジア最低水準の労働コストの低廉さに注目した、多国籍製造業の進出が著しい。
前掲毎日新聞の記事には、次のような指摘もある。
バングラのイスラム社会に詳しい広島修道大の高田峰夫教授(地域研究)は「バングラでISとJMBを直接的に結びつける証拠は今のところ見つかっていない」と指摘。その上で「経済発展で比較的豊かになり、一定以上の教育を受けながらも思うような職に就けず、不満を募らせる若者もいる。こうした若者らがインターネット上でイスラム過激思想に感化されて起こしたテロ行為を、ISが利用している可能性がある」と指摘する。
バングラデシュの国旗は緑を背景にした赤い丸で、赤が昇る太陽、緑が豊かな大地を表し、独立のために流した血を示す赤い丸、という説もあるという。初代バングラデシュ大統領ムジブル・ラフマンの娘のシェイク・ハシナ首相によると、初代バングラデシュ大統領は日本の日の丸を参考にしたそうである。
現在のバングラデシュはベンガル地方の東側にあたる。ベンガルは18世紀末にイギリスの東インド会社により植民地化されたのだが、東インド会社によってイギリスはベンガルからインド全域に支配を拡大したのだった。
バングラデシュで盛んになった民族運動を阻止するためにイギリスはベンガルのインド人勢力の分断を図り、1905年にベンガル分割令を発布した。英領インドは1947年に独立。しかし、ヒンドゥー地域はインド、イスラム地域はパキスタンとして分離独立することになった。東パキスタンは西パキスタンと内乱になり(バングラディシュ独立戦争)、インドが東パキスタンの独立を支持して勝利し(第三次印パ戦争)、1971年にバングラデシュは独立した。……
マルクス主義はキリスト教の鬼子だともいわれるが、ISはイスラム教の鬼子で、様々な国の不満分子を仲間とすることでテロリズムを拡散させ、マルクス主義に似た暴力革命で世界地図をISの一党独裁帝国に塗り替えようとしているかに見える。
しかしそのような独裁帝国で人が人らしく生き、幸福になれるのだろうか。
ところで、世界の聖典に興味を抱いた大学時代に、わたしは岩波文庫の『コーラン』を購入している。
イエス・キリストの母マリアがマルヤム、マリアの子イエスがイーサー、モーセがムーサー、アダムがアーダム、ノアがヌーフ、サタンがシャイターンと訳されていて、ひじょうにエキゾチックな感じがした。コーランはクルアーンである。
ユダヤ教徒、キリスト教徒批判が数多く出てくるので、歴史的背景を知らなければ読み誤ると思ったし、またユダヤ教とキリスト教の聖典及び歴史を知らなくては到底内容が把握できないと思いながら、今に至るまで課題が大きすぎてそのままになっていた。
コーランは新約聖書よりも旧約聖書を連想させられる内容で、生活全般に及ぶ様々な規律が印象的だった。
(井筒俊彦訳)『コーラン 上(全3冊、岩波文庫)』(岩波書店、1964)を少し再読して、テロとの関係で注目すべきは次の言葉だと思った。注を省略して引用する。
まことに、信仰ある人々、ユダヤ教を奉ずる人々、キリスト教徒、それにサバ人など、誰であれアッラーを信仰し、最後の日を信じ、正しいことを行う者、そのような者はやがて主から御褒美を頂戴するであろう。彼らには何も恐ろしいことは起りはせぬ。決して悲しい目にも逢うことはない。 (2・59〔62〕,井筒,1964,p.21)
コーランの最初のほうで出てくる言葉である。
ユダヤ教徒やキリスト教徒の中にはコーランの聖句どころかアッラーという言葉すら知らない人々もいたであろうことを考えてみると(「~など、誰であれ」という表現に注意したい)、このアッラーを「アッラー」という名で崇められる人格神であるかのような単純な見方はできない。
この「アッラー」とは、コーラン全体で表現されている神的実体を意味しているのではないだろうか。
それは、次の言葉からも明らかである。
聖典を授かっておる人々にも、そうでない普通の人たちにも、すべてを神様におまかせしたか」と問うてみよ。それでもしすべてをおまかせしたというなら、もうそれだけでその人たちは立派に(信仰の道に)入っている。(3・19,井筒,1964,p.75)
このことを逆から考えれば、アッラーと呼ばれた段階で、神的実体――神様――はその時代と地域の制約を受けざるをえなかったといえる。コーランが成立した時代と地域において、コーランの表現形式は最も効果的であったということになる。
コーランに限らず、どのような聖句であっても、人間が関わった段階で時代的、場所的制約を受けざるをえない。その制約を可能な限り解き、神的実体に迫るには奥深い教養が必要だろう。
第一の教養として、国語力が挙げられると思う。
まとまりのある文章から持論に都合のよい部分のみ断片的に取り出し、自己流に解釈して流用する人間が、学問の分野からテロリズム実行者に至るまで増えているようだ。
国語力の低下がこの日本だけではなく、世界的に起きているのだろうか。
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