芥川賞受賞作品「死んでいない者」(滝口悠生)、「異類婚姻譚」(本谷有希子)を読んで
カテゴリー「芥川賞」を設置しているのだから、なるべく読んでいかなければと思い、過日芥川賞発表と受賞作が全文掲載された『文藝春秋』三月特別号を購入し、読んだ。
だが、まとまった感想を書くだけのものがわたしの中で湧き上がってこなかった。だから評論はおろか、ちゃんとした感想を書く資格もなく、印象を綴ってみるにすぎない。
わが国には言論の自由も信教の自由もあるはずなのに、いつのころからか、多様な物書きが形成する文学界ではない、左派によって形成された文学村が日本の文学界ということになっている。
中にいる人々にはわからないかもしれない村臭がますます強くなっている気がする。それは選評から一例を挙げるだけでも窺い知れよう。
たとえば、「悪政下の文学」というタイトルの島田雅彦選考委員による次のような文章だ。
しかし、このような気に入らない相手をたおやかで人畜無害なものに変えてしまえる魔法が使えたら、真っ先に悪政を敷く奴らを蒲公英にしてやるのにな、といった具合に読者の妄想のスイッチを入れる効果はあった。
芥川賞が如何に村の中での行事になり果てているかがわかる言葉ではないだろうか。村の中ではそれで通じても、何を指して悪政といっているのかが村人ではないわたしにはわからない。タイトルがなければ、一般論として片づけることも可能だろう。
こんな腹いせのような幼稚な感想をお漏らしして、NHKニュースでも必ず採り上げられる「国民的行事」であるはずの「芥川賞」の選評の場を私物化したところで、わたしのような辺境、泡沫ブログの主が疑問に思うくらいで、どこからもお咎めも批判もないのだろう。
「異類婚姻譚」(本谷有希子)の1行目「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっっていることに気づいた」という文章には興味が湧いた。
私的な出来事になるが、よりによってそれまでで最も――何が原因だったのかはもう忘れてしまった――夫に対して嫌悪感を覚えていたときに、当時幼稚園に通っていた子供と同じクラスのお母さんから「あなた、ご主人とそっくりねえ……本当に似ているわよ……」といわれて衝撃を受けたことがあった。
だから、小説がどう展開していくのか興味津々で読み始めた。純文学的な鋭い分析がなされながら小説が進行していくことを期待していたところ、あまり必然性の感じられないところで、趣味の悪い怪異譚となってしまった。オカルト小説、ファンタジー小説、神秘主義小説としての完成度も期待できず、稚拙な技巧だけが浮いてしまった印象である。
「死んでいない者」(滝口悠生)は丹念に描かれた小説という好感は持て、「ああ、こんなこと、あるわね」とか「ここは上手い」とか感心した箇所も結構あった。
しかしながら、それだけという印象で、全体を通しての印象は平板、退屈に感じられた。わたしがこれまでに出席した葬儀では、もっと意外なことや面白い――というと語弊があろうが――ことがあった。
当ブログにおける関連記事
- 2016年5月14日 (土)
芥川賞選考委員・島田雅彦氏が中国で行った不思議な政治的発言
https://elder.tea-nifty.com/blog/2016/05/post-9615.html
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 新型コロナはヘビ中毒で、レムデジビルはコブラの毒ですって? コロナパンデミックは宗教戦争ですって?(12日に追加あり、赤字)(2022.05.11)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- 姑から貰った謡本(この記事は書きかけです)(2022.03.15)
- クリスマスには、やはり新約聖書(2021.12.25)
- 大分トリニータ、天皇杯決勝戦進出。札付き巨大製薬会社ファイザー、アストラゼネカの10年前の行状。「ワイス博士の前世療法の問題点について、神秘主義的観点から考察する」を再公開。(2021.12.14)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- ウイルス学者ロバート・マローン博士のサル痘についての専門的見解(夕方加筆あり、赤字)(2022.07.05)
- サル痘、サル痘、言い出した! 米企業の開発した国内未承認薬「テコビリマット」より、日本が生んだ薬イベルメクチン、トラニラストを!(2022.07.04)
- 参政党に対する私的疑問(2022.06.28)
- 米国FLCCCの「ワクチン後遺症プロトコル」が公開されています(2022.06.03)
- 新型コロナはヘビ中毒で、レムデジビルはコブラの毒ですって? コロナパンデミックは宗教戦争ですって?(12日に追加あり、赤字)(2022.05.11)
「評論・文学論」カテゴリの記事
- (再掲)イルミナティ創立者ヴァイスハウプトのこけおどしの哲学講義(2020.10.17)
- 中共によって無残に改竄された、「ヨハネによる福音書」のイエス(2020.09.29)
- 「原子の無限の分割性」とブラヴァツキー夫人は言う(2020.09.15)
- 大田俊寛『オウム真理教の精神史』から抜け落ちている日本人の宗教観(この記事は書きかけです)(2020.08.28)
- 大田俊寛氏はオウム真理教の御用作家なのか?(8月21日に加筆あり、赤字)(2020.08.20)
「文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事
- 神秘主義をテーマとしていたはずのツイッターでのやりとりが、難問(?)に答える羽目になりました(2022.06.22)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- モンタニエ博士の「水は情報を記憶する」という研究内容から連想したブラヴァツキー夫人の文章(2022.02.20)
- 祐徳院について、新発見あり。尼寺としての祐徳院は三代まで続いたようです。(2022.02.02)
- 愛川様がお送りくださった祐徳院関係の貴重な資料が届きました。お礼のメールはまだこれからです。(1月24日に加筆訂正、赤字)(2022.01.19)
「芥川賞・三田文學新人賞・織田作之助青春賞」カテゴリの記事
- 日本色がない無残な東京オリンピック、芥川賞、医学界(またもや鹿先生のYouTube動画が削除対象に)。(2021.07.20)
- 第164回芥川賞受賞作品、宇佐見りん「推し、燃ゆ」を読んで(2021.03.29)
- 第36回織田作之助青春賞 受賞作(丸井常春)『檻の中の城』を読んで。コロナ禍で人気の名作2編『ペスト』。(2020.05.04)
- Mさん、お誕生日おめでとうございます(2019.11.07)
- ツイッターで問題となっている、芥川賞候補作「百の夜は跳ねて」(古市憲寿)。8月15日に追記あり、赤字。(2019.08.15)
「時事・世相」カテゴリの記事
- ウイルス学者ロバート・マローン博士のサル痘についての専門的見解(夕方加筆あり、赤字)(2022.07.05)
- サル痘、サル痘、言い出した! 米企業の開発した国内未承認薬「テコビリマット」より、日本が生んだ薬イベルメクチン、トラニラストを!(2022.07.04)
- 参政党に対する私的疑問(2022.06.28)
- 米国FLCCCの「ワクチン後遺症プロトコル」が公開されています(2022.06.03)
- 狂犬病とアビガン(ファビピラビル)(2022.05.08)