歴史短編1のために #23 中江藤樹『鑑草』、中村愓斎『訓蒙図彙』、『大和物語』
#24で、萬子媛が子育てに関連して読んだとしてもおかしくない本を3冊挙げた。
- 女性向きの教訓書、中江藤樹『鑑草』正保4年(1647)
- 女性向き教訓書、中村愓斎『比売鑑』、寛文元年(1661)
- 日本初の絵入り百科事典、中村愓斎『訓蒙図彙』寛文6年(1666)
中江藤樹『鑑草』は、岩波書店(岩波文庫)と行路社から出ている。
鑑草 (岩波文庫)
中江 藤樹 (著), 加藤 盛一
出版社: 岩波書店 (1939/4/17)鑑草 現代語新訳
中江藤樹/原著
行路社、1990第2版
行路社版が図書館にあったが、貸し出し中となっている。そのうち借りて読んでみたい。わたしは全く知らなかったが、有名な人物らしい。
中江藤樹: ウィキペディアによると、
中江藤樹は門下生から「藤樹先生」と呼ばれた。
「朱子学に傾倒するが次第に陽明学の影響を受け、格物致知論を究明するようになる」。
そして、「その説く所は身分の上下をこえた平等思想に特徴があり、武士だけでなく農民、商人、職人にまで広く浸透し江戸の中期頃から、自然発生的に『近江聖人』と称えられた」。
中江和恵『江戸の子育て (文春新書)』(文藝春秋、2003)に中江藤樹の『鑑草』からの引用があり、その文章に心惹かれたので、何とか読めないかと思って調べてみたら、中江藤樹関連書籍は沢山出ていて驚いたわけだ。現代に通用する学者みたいだ。
他に、Amazonに出ていたもののうちで以下の本が図書館にあれば借りたい。中江藤樹を描いた小説もある。
日本の名著 (11) 中江藤樹・熊沢蕃山 (中公バックス) 1983/10
中江 藤樹 (著), 熊沢 蕃山 (著), 伊東 多三郎 (編さん)
出版社: 中央公論社 (1983/10)中江藤樹 (センチュリーブックス 人と思想 45)
渡部 武 (著)
出版社: 清水書院 (1974/09)
中村愓斎『比売鑑』は検索してもあまりヒットしなかったが、同じ著者の絵入り百科事典『訓蒙図彙』のほうは復刻版が2012年に刊行されていて、それが図書館にある。
江戸のイラスト辞典訓蒙図彙
[中村惕斎編]、小林祥次郎編
勉誠出版、2012.10
江戸時代初期、寛文6(1666)年刊のわが国最初の図解博物辞典「訓蒙図彙」を復刻。約9500語を1482点におよぶ精緻なイラストで示した、日本語・日本文学、風俗史、博物学史の有力資料。
国立国会図書館「江戸時代の日蘭交流」の「第2部 トピックで見る」に『訓蒙図彙』が挙げられている。その一部を標準、拡大、サムネイルで閲覧できる。
ケンペルは持ち帰った『訓蒙図彙』を『日本誌』の挿絵に利用したという。
田中保善『鹿島市真実の記録』(平成2年)の著者は、江戸末期(嘉永4年)に北鹿島で生まれた祖母から――庶民に伝わっているかたちで――萬子媛の話を聞いたとお書きになっている。
それによると、萬子媛は才媛というイメージだったらしいから、才媛の萬子媛がこれらの本を読んでいたとしてもおかしくはないと思う。
神社外苑にある祐徳博物館には、萬子媛遺愛の品々を展示したコーナーがある。
わたしには萬子媛の遺墨、扇面和歌が印象的だった。金箔を張った馥郁と紅梅が描かれた扇面に、新古今和歌集から皇太后宮大夫俊成女のうた「梅の花飽かぬ色香も昔にて同じ形見の春の夜の月」が薫るように揮毫されていた。
『大和物語』から写しとったものもあった。筆跡は流れるようでいて、静かだった。花山院家の家業は四箇の大事(節会・官奏・叙位・除目)・笙・筆道なので、萬子媛が達筆だったとしても不思議ではない。
『大和物語』は平安時代に成立した歌語り集。
叙情的な美しい文章で綴られた説話の1編1編を改めて読んでみると、男女間に生じる悲痛な話から生活苦の垣間見えるものが多い。
有名な「姥捨」なども、妻の性格の悪さが馬鹿に印象的だが、この妻には生活苦や介護疲れなどがあって、少しおかしくなっているのかもしれない。
ストーリーを簡単にいえば、男には親代わりの年とった叔母があった。その叔母を男の妻が嫌って悪口をいい募り、男はその影響を受けるようになる。
妻に責められ、そそのかされて、男はついに叔母を山に捨ててしまう。男は家に帰ってから後悔し、「わが心なぐさめかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」という歌を詠む。そして、山へ行って叔母を連れ戻すという話。
From Wikimedia Commons, the free media repository
Ogata Gekkō (尾形月耕) (1859–1920)
Yamato Monogatari (大和物語)、1896
今もあの世からボランティアなさっている萬子媛はこの世に生きる人間の間違いやすさ、愚かしさ、庶民の生活苦をよくご存じのはずだ。
イエスですら「いつまであなたがたと一緒にいなければならないのでしょう」といわれたことがあった。萬子媛だってそうに違いない。
それでも、なおもこの世に生きる人間を見守り、愛していらっしゃる。
萬子媛のお社の前で、また心の中で語りかけるとき、そのことが霊的に感じられるので、その尽きせぬ愛の源が知りたいと思い、小説を書く中で発見できないかと執筆を思い立った。
話が逸れてしまったが、萬子媛が和歌や古典文学に通じていたことは確かだろう。
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