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2015年6月 9日 (火)

電子書籍とパブリックドメインの絵 ①アルノルト・ベックリン「死の島」(追記あり)

過去記事で書いたことと重複するが、キンドル本にしたいと思っている電子書籍のこと。

『神秘主義者のカフェテラス』というタイトルがしっくりこないので、変えることにした。

表紙用のフリーフォントをGIMPにいくつか入れたが、それでなくともGIMPには沢山のフォントが入っているので(使わないフォントは消してしまおうと思ったりもしている)、追加したフォントについては、フォント名やダウンロードさせていただいたサイトなどをメモしておかないと、使うときになって、どれをどこから追加したのか、わからなくなる。

表紙の作成に、商用・非商用を問わず完全フリーで使える画像検索サイトの写真素材を利用していたが、パブリックドメインの絵を利用できないかと思い、調べたりしていた。

例えば、「グーテンベルク21」から出ているキンドル本に、グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)「ユディト(Judith)」(1901年)が使われている。

毛皮を着たヴィーナス [Kindle版]
マゾッホ (著), 小野武雄 (翻訳)
出版社: グーテンベルク21 (2015/5/15)

紙の本も含めれば、いろいろと見つかりそう。

ちなみに、クリムトは、「接吻」(1908年)などは一度観ると、忘れられないが、わたしは「メーダ・プリマヴェージ」(1912年)なんかが好き。

Gustav Klimt 050

以下のサイトで、パブリックドメインの絵が沢山公開されている。

国立国会図書館のサイト「カレントアウェアネス・ポータル」の2015年1月5日付記事「2015年から著作がパブリック・ドメインとなった人々」によると、
没後70年(カナダ、ニュージーランド、アジア等では没後50年)を経過し、2015年1月1日から著作がパブリックドメインとなった人物に、画家ではワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky)、エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch)がいる。

2015年から著作がパブリック・ドメインとなった人々

カンディンスキーについては②で書きたい。

以下は、電子書籍作りとは無関係なところで、パブリックドメインの絵の鑑賞時に目に留まった絵。

ヒューゴ・シンベリ(Hugo Simberg)「傷ついた天使」(1903年)。

The Wounded Angel - Hugo Simberg

次の動画はヒューゴ・シンベリ。

アルノルト・ベックリン(Arnold Böcklin)、バーゼル版「死の島」(1880年)。5枚の「死の島」が存在する。

Isola dei Morti IV (Bocklin)

同じく、ベックリン、「聖なる森」(1882年)。

Arnold Böcklin Il bosco sacro

ヒューゴ・シンベリ「傷ついた天使」、アルノルト・ベックリン「死の島」「聖なる森」。どれも美しく、興味を覚えるが、わたしは怖い。

ヒューゴ・シンベリの絵では、傷ついた天使が2人の少年に運ばれていく。天使が出てくるが、ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel de Oude)が新約聖書に出てくる出来事を日常生活の中にさりげなく置いたのとは、全く違う印象を受ける。

次の動画はピーテル・ブリューゲル。

ブリューゲルが描いた絵の中には新約聖書の中の惨劇が置かれていることもあるが、そうしたものを含めて、現実世界が聖なる世界を映し出す鏡となっているように思える。

みじめな、危機的状況を孕んだ人間社会を鳥瞰する、意志的な画家の透徹した眼が感じられるのだ。

ヒューゴ・シンベリ「傷ついた天使」の場合は、その逆に、聖なる価値観は現実世界に抵抗できないことを強調しているかのようだ。

ヒューゴ・シンベリの動画に出てくる絵には、死や暴力、あやまち、俗悪または悪を想わせるものが滑稽な形姿で描かれたりもしているが、これらの絵から、それ以上のものをわたしは読みとることができない。

アルノルト・ベックリンの2枚の絵も、美しいが魔性を感じさせる。この人の絵には、ずいぶん怖ろしいものがいろいろとある。

次の動画はアルノルト・ベックリン。

ウィキペディアによると、ベックリンの絵は「第一次世界大戦後のドイツでは、非常に人気があり、一般家庭の多くの家に、複製画が飾られていた。中でも代表作の『死の島』は特に人気が高かったと言われ、複製画の他にポストカードの題材としても盛んに使用された。また『死の島』を真似て描く画家も現れた。アドルフ・ヒトラーも彼の作品を好み、収集していた(代表作である『死の島』の第3作を始め、11点所有していたと言われる)」という。

死の島 (ベックリン):Wikipedia

第一次大戦後のドイツで、ベックリンの「死の島」がインテリに受けただけではなく、一般家庭の多くにこの絵の複製が飾られていたというエピソードは、当時のドイツ市民の単純でない感性と鑑賞眼の高さを教えてくれるが、ドイツ市民が置かれた、ただごとではない――袋小路的な――状況を物語ってもいるかに思われる。

全く性質を異にする、別の絵が飾られていたら……と、想像したくなる。

ベックリンの絵には催眠的なところがあるが、当時のドイツ市民の感性はある面で鈍化していたのか、その危険性が見抜けなくなっていたのかもしれない。催眠性の危険性は、人を霊媒的にしてしまうところにある。

わたしは村上春樹の小説に、同様の催眠性があるのを感じてきた。

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