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2015年4月27日 (月)

神秘主義体系、特にフリーメイソンに詳しいマンリー・P・ホールの著作

ブログ散策をしていると、イリュミナティやフリーメイソンの陰謀論が飛び交っている。この現象に気づいたのは数年前だった。左派系と思われる人々のブログでこれらに触れているケースが多い気がしていた。

昔、学研のオカルト雑誌「ムー」で、フリーメーソンの陰謀論をよく読んだ気がするが、一般の読者は日本とは関係のない国のお話として無責任に面白がっているだけだったのではないかと思う。

ところが、いつごろからかネット上で拡散しているイリュミナティやフリーメイソンの陰謀論は、もっと執拗で陰湿な感じがある。これは何だろう、とずっと不審に思ってきた。

左派のプロパガンダに利用されているのだろうか。イリュミナティなんて、今もあるのかしら?

イリュミナティ<フリーメイソン<アメリカという図式が成り立っているようだ。しかし、ソースが発見できない。ほとんど彼らの妄想のような雰囲気が漂っている。至って真剣だから、尚更。

メーソンとは石工のことで、フリーメーソンは1723年、ロンドンで設立されたといわれる。神秘主義的な秘密結社だが、反教会的、世界主義的な傾向から、キリスト教社会では秘密結社とならざるをえなかったのではないだろうか。

Kindle版『平凡なフリーメイソンの非凡な歴史』(檀原照和著、スタジオ天神橋、2013年)を読むと、地味な(?)日本のフリーメーソンについて知識を深めることができる。

平凡なフリーメイソンの非凡な歴史

また、マンリー・P・ホールの象徴哲学大系は、神秘主義を知りたい人のためのガイドブックといってよいシリーズである。第Ⅲ巻『カバラと薔薇十字団』に「フリーメーソンの象徴体系」という章がある。

新版 古代の密儀 (象徴哲学大系)

新版 秘密の博物誌 (象徴哲学大系)

カバラと薔薇十字団 【新版】 (象徴哲学大系)

錬金術 【新版】 (象徴哲学大系)

わたしは旧版を、『錬金術』以外は持っている。錬金術に関しては、ヤコブ・ベーメのあまりにも難解で、さっぱりわからない著作を読み――というより眺め――、たちまち満量に達し、当時、錬金術関係の本はもう沢山だと思ったのだ。

同じ著者に『フリーメーソンの失われた鍵』(マンリー・P・ホール著、吉村正和訳、人文書院、1992年)というのがあるので、初の歴史小説の下調べの合間に読もうと思い、図書館から借りてきた。『錬金術』も借りた。

『カバラと薔薇十字団』の「フリーメーソンの象徴体系」はわたしには難解な象徴体系だが、この体系から感じられる高級感と日本で流布している低俗な印象を受ける陰謀論とがどうにも結びつかない。

いずれにしても、神秘主義関係の事柄は毀誉褒貶に晒されやすい。

一つには、本物の神秘主義者が少ないため、当然ながら神秘主義の薫り高い世界を書く人はもっと少なく、偽物の神秘主義的世界観が拡がってしまうからだろう。

日本のファンタジーには神秘主義からの借り物が様々に登場するが、ひどい使い方をされていることが多くて、心が痛む。

『錬金術』(マンリー・P・ホール著、大沼忠弘&山田耕士&吉村正和訳、人文書院、1992年)のカバーの折り返し部分に、著者の写真が載っている。ハンサムな紳士という容貌。訳者後書きに、見事に描写されている。

左横顔を撮ったもので、黒白による光のコントラストが生きている。髪は撫でられ、耳は比較的大きく、額は高く秀で、鼻筋が通り、手入れの行き届いた口髭を生やし、唇は堅く結んでいる。隙のない、端正で、理知的な顔だ。
 特に印象深いのは、長い睫毛の奥の大きな、鋭い目である。それは一見すると冷徹な感じを与えそうだが、よく見ると、深い愛情を秘めているように思われる。やや伏目がちな目で、ホールは、一体、何を見ているのであろうか。
(p.266)

日本の読者に宛てて、ホールは日本に訪れたときのことに触れ、寺院、日本庭園、茶の湯、生け花、日本民芸館を例にとり、「今日の世界において、象徴体系を学ぶ者がその研究を進めるためにこれほど多くの機会を見出すことができる場所は他にはない」(p.265)と書いている。

『フリーメーソンの失われた鍵』をホールが書いたのは、何と21歳の誕生日を過ぎたばかりのときという。彼はまだメーソンではなかった。

ホールは1901年、カナダに生まれている。『古代の密儀』(マンリー・P・ホール著、大沼忠弘&山田耕士&吉村正和訳、人文書院、1993年)によると、ホールはマックス・ハイデルの愛弟子という。

マックス・ハイデルは、ルドルフ・シュタイナー(神智学協会から独立し、アントロポゾフィー創設)の影響を受けた後、キャサリン・ティングリーの主宰する神智学の一分派に加わり、その後、「カリフォルニア薔薇十字協会」を創設した(p.312)。

師ハイデルが亡くなるとき、「カリフォルニア薔薇十字協会」の後継者に20歳に満たないホールを指名したが、それを不満とした人々が出て協会は分裂。ホールが「ヨーロッパ数千年の秘教教義の伝統を集大成する」という象徴哲学大系の執筆に協力者たちと共にとりかかったのは、このような困難な時期だった。1936年、ホールはロサンゼルスに「哲学探求協会」を創設する。(p.313)

『フリーメーソンの失われた鍵』によると、ホールがメーソンになったのは、1954年のことだった。メーソンとなったことで、メーソン結社に対して長い間抱いていた賞賛の気持ちは深くまた大きなものになったのだそうだ。(p.16)

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