#9 漱石の哲学風講演録を読みかけて、爆睡。
早いとこ、短編小説を書いて初の歴史小説に戻りたいところだが、夏目漱石の評論類を読んでしまいたいと思った。「文学論」「文明論」は手元にない。
講演録「文芸の哲学的基礎」「創作家の態度」は青空文庫版がKindlePaperwhiteに入っている。「創作家の態度」にはウィリアム・モリスが出てくるので、そちらから読みかけたのだが、途中で睡魔に襲われ、寝てしまった。
最近、心臓の調子が悪く、例によっておなかが膨れている(腫れている。せっかく痩せたのに)。そのせいもあるだろう。あとでちゃんと読もうと思い、「文芸の哲学的基礎」から読むことにした。
時間、空間、意識という、それぞれが哲学的一大テーマとなってきた各概念が、いともあっさり、勝手気ままに――と、わたしには思えた――定義され、そうした定義が錯綜する中でなぜか唐突に「因果の法則」がバッサリ否定し尽くされると、特にびっくりしてしまう。
というのも、読み始めてずっとびっくりしていたので。わたしが特にびっくりしたのは、以下に引用する部分。
それから意識の連続のうちに、二つもしくは二つ以上、いつでも同じ順序につながって出て来るのがあります。甲の後には必ず乙が出る。いつでも出る。順序において毫も変る事がない。するとこの一種の関係に対して吾人は因果の名を与えるのみならず、この関係だけを切り離して因果の法則と云うものを捏造するのであります。捏造と云うと妙な言葉ですが、実際ありもせぬものをつくり出すのだから捏造に相違ない。意識現象に附着しない因果はからの因果であります。因果の法則などと云うものは全くからのもので、やはり便宜上の仮定に過ぎません。これを知らないで天地の大法に支配せられて……などと云ってすましているのは、自分で張子の虎を造ってその前で慄えているようなものであります。いわゆる因果法と云うものはただ今までがこうであったと云う事を一目に見せるための索引に過ぎんので、便利ではあるが、未来にこの法を超越した連続が出て来ないなどと思うのは愚の極であります。それだから、よく分った人は俗人の不思議に思うような事を毫も不思議と思わない。今まで知れた因果以外にいくらでも因果があり得るものだと承知しているからであります。ドンが鳴ると必ず昼飯だと思う連中とは少々違っています。
漱石は、キリスト教史観(直線史観)と東洋哲学でいう因果の法則をごちゃ混ぜにして論じているのではないだろうか。ずいぶん滅茶苦茶な内容に思えてしまう。
東洋哲学あるいは仏教でいう因果の法則というのは、過去記事で紹介した動画の中でお坊様がおっしゃっているようなことだと思う(再度動画をアップ)。
以下に、ウィキペディアから「因中有果(いんちゅううか)」について引用。
因果:Wikipedia
因中有果(いんちゅううか)
正統バラモン教の一派に、この世のすべての事象は、原因の中にすでに結果が包含されている、とするものがある。
仏教の世界観を表現したものは曼荼羅、円。神秘主義は螺旋史観。
因果の法則は、漱石のいうようなギャンブルめいた確率の問題とは無関係である。
わたしが漱石の講演に行けば、間違いなく爆睡する……まだ「文芸の哲学的基礎」を最後まで読めない。ノート④を書くはずだったが、時間がかかりそうだ。
ひとまず、書いてしまいたい短篇小説に行こう。そして、初の歴史小説に戻らなくては。漱石ノートは時間がとれたときということにしたい。評論に仕上げるには、相当な時間がかかりそう。
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