「詩人」(蔵出しの愚にもつかない自作詩)
短編の校正を昨夜から今まで、可能な限りパソコンの前に座って、ずう~っとやっていました。気になって仕方がないので、パソコンに吸い寄せられたようにそこへ行ってしまい、家事をしていても上の空でした。
自信のある部分だけ家族に朗読して聴かせたら、夫は含みのある表情に明るい目をして「うん」といい、娘は「おお、綺麗」といってくれました。
まあ、それだけでも書いた甲斐がありました。
短い作品なのに、校正すればするほど、書き直したくなる箇所が出てきて、間違い虫と不適切虫が交尾して、子供がゾロゾロ……退治に次ぐ退治で(モグラ叩き状態)、ついに脳貧血気味になり、フラフラです。
そういえば、大学時代、文芸部に入って初めて書いた詩の冒頭が「朝っぱらから もうふらふらだ」でした。この冒頭が受けて、一時、文芸部の流行語になりました。
天袋を探すと、怖ろしいことにその詩を書きつけたノートがありました。「詩人」というタイトルでした。
なぜ、詩人を碧眼にしたのか、謎です。ムード的なものかしら。それなら、「日本酒」など出さなければいいのに。
それに、この詩人の酔い方は如何にも月並みで俗っぽく、ミューズのお酒に酔っているとはいいがたいですわね。まさに、突っ込みどころ満載です。
このときから38年経った今では、これを詩人とは呼べません。その後、わたしが詩人と呼ぶようになったのは、同じ文芸部の女性先輩でした。
彼女が亡くなってから追悼の思いを込めて小説にしました。彼女がモデルですが、勿論フィクションです。Amazonのキンドルストアで売っています。日記体小説で、面白いといった内容ではありませんが。
わたしが詩人と呼んだ女友達の詩は以下のカテゴリーに収録された記事でお読みになれます。
- カテゴリー「友人の詩/行織沢子小詩集」
https://elder.tea-nifty.com/blog/cat20484287/index.html
さすがに合評会では、「朝っぱらから もうふらふらだ」の「詩人」について、詩作はこんなものではないだろう、という意見が多かったように思いますが、愚にもつかない内容のこれを、新入部員を可愛がって流行語にしてくれたのでしょうね。
わたしが自分に詩作の才能がないことを自覚するまでに、そう時間はかかりませんでした(ざっと三年ばかり)、ハイ。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
「詩人」
朝っぱらから もうふらふらだ。
瞼はすっかり疲れきって しばたくたびに
か細いため息を洩らす。
だが その奥の碧い瞳を見たまえ。
熱病病みのような光のオブラートにくるまれて
情熱が目覚めようとしている。
小さな二個のビー玉は
この世界のどんなに精巧な望遠鏡よりも
遙かなものを映し出し
どんな顕微鏡よりも 繊細なメスを滑らすだろう。
だが、それもビー玉が曇ってりゃ同じこと。
何にも見えやしない。
ただの一色に塗りかえてしまえば 絶望的だ!
そんなビー玉は捨ててしまえ。
盲目のあの児は それでもほしがって
しろい寝床から小さな手を伸ばす。
朝っぱらから もうふらふらだ。
日本酒だって? いや違う。
ウィスキーかって? 冗談じゃない。
これは年代物で、甘美な香りがする。
だれでも酔えるわけじゃない。
いい気持ちになって やがては哀しくなる。
この酒瓶を抱えて 彼は
古びた椅子にどっかと腰下ろし
頭の中から縺れた糸を ひっぱり出すと
不器用な女みたいにぎこちなく
編物を始める。
鼻のてっぺんに汗をにじませて……せっせと。
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