« Kindle本『詩人の死』『気まぐれに芥川賞受賞作品を読む』をお買い上げいただき、ありがとうございます!/創作関係がとり散らかっている… | トップページ | #3 神仏分離政策の影? ②「こころ」のKの気になる境遇、藤村操の自殺 »

2014年10月20日 (月)

#2 神仏分離政策の影? ①「こころ」に出てくる人名、シュエデンボルグ

Notes:夏目漱石・インデックス

シュエデンボルグ。

つい読み過ごしてしまったが、シュエデンボルグ? うーん、どこかで聴いたような聴かないような……

「こころ」の中で、主人公である「先生」とKが話す場面で出てくる。人名だろうか?

その上彼はシュエデンボルグがどうだとかこうだとかいって、無学な私を驚かせました。

わたしは声に出していってみた。シュエデンボルグ。なーんだ、スウェーデンボルグではないか。

Kは、仏教関係の書物だけではなく、キリスト教の聖書も読めば、コーランも読み、スウェーデンボルグも読んでいたのだ。

大学時代のわたしもそうだったから、Kの読書傾向はよくわかる。

純粋に高貴な思想にあこがれていたら、コーランを読むとすれば、自然の流れでイスラム教神秘主義の文献――研究書や文学書――に出合うことなるし、新約聖書を読み、深く分析しようとすれば、同様にキリスト教神秘主義関係に辿り着くものなのだ(尤も、わたしの場合は翻訳書が出ていなければ、読めないが)。

Kも、そうだったのではないだろうか。

スウェーデンボルグはスウェーデンの有名なキリスト教神秘主義者である。バルザックの著した「セラフィタ」という両性具有の天使が出てくる美しい小説は、スウェーデンボルグの影響を受けたといわれている。

ウィキペディアでは、エマヌエル・スヴェーデンボリと出ている。

エマヌエル・スヴェーデンボリ:Wikipedia

エマーヌエル・スヴェーデンボーリ(Emanuel Swedenborg, 1688年1月29日 - 1772年3月29日)はスウェーデン王国出身の科学者・神学者・神秘主義思想家。スヱデンボルグとも。しかし多くはスウェーデンボルグと表記される。生きながら霊界を見て来たと言う霊的体験に基づく大量の著述で知られ、その多くが大英博物館に保管されている。スヴェーデンボリは貴族に叙された後の名。

それにしても、「無学な私を驚かせました」って……主人公は当時の超秀才だろうに。Kは原書を読んだのだろうか? 英訳で読んだのかもしれない。現代では学研の雑誌『ムー』のお陰で、普通の高校で赤点とっていたわたしですらスウェーデンボルクを知っていたし、翻訳書が何冊か出ていたので、読んだ。

Kのような人物が、実際に漱石の周辺にいたのではないだろうか? その人物がどこまでKのモデルにされたかはわからないにせよ――。

Kは「先生」なんかと知り合わず、三浦関造氏と知り合ったらよかったのに……とわたしは思ってしまった。年齢的なずれがあるけれど。

ここで、ちょっと話が逸れるが、明治16(1883)年に生まれ、昭和35年に亡くなった三浦関造氏の伝記が竜王会の機関誌「至上我の光」で連載中だ。

執筆者は、教育家で、『ユネスコ創設の源流を訪ねて―新教育連盟と神智学協会』(学苑社、2008年)を上梓された岩間浩氏。

三浦関造氏は神智学協会を日本に紹介した竜王会の創立者としてわたしには馴染みがあるが、新教育運動でも有名だったようだ。

『ユネスコ創設の源流を訪ねて』にはタゴールやニコライ・レーリヒにも章を割かれているようなので、読んでみたいと思っている。参考までに、ライン以下に、学苑社のホームページから本の構成を紹介させていただく。

話を戻すと、わたしは「こころ」を最初に読んだときから、Kの境遇についての説明が要領を得ない、異様なものに映った。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

ユネスコ創設の源流を訪ねて―新教育連盟と神智学協会
岩間 浩 (著)
出版社: 学苑社 (2008/08)

学苑社ホームページより

●目次
はじめに 
序 章 ユネスコ平和の精神の源流を訪ねて 
第1章 ユネスコ創設の源流を訪ねてー新教育連盟とユネスコの創設過程ー
 1.新教育連盟(NEF)とは 
 2.国際連盟・国際知的協力委員会の成立と活動 
 3.国際教育局の創設 
 4.新教育連盟とユネスコの創設
 5.トピック:新教育連盟創設者ベアトリス・エンソア(名誉博士)の子孫に遭う 

第2章 新教育連盟の源流を訪ねてー神智学協会と新教育連盟ー
 1.神智学教育同胞会成立の過程 
 2.神智学及び神智学協会の精神
 3.新教育連盟の母体としての神智学協会 
 4.新教育連盟の独立 

第3章 スイス新教育運動の展開
    ーピアジェらスイス心理学者・教育学者と新教育連盟ー
 1.スイス新教育運動主導の教育者・教育学者達 
 2.スイス新教育運動主導の心理学者達 
 3.その他の新教育推進者達 

第4章 インド新教育運動の源流ーR・タゴールの教育思想と事業を中心にー
 1.一九二〇年代・タゴールの新教育連盟への接触 
 2.一九二〇年代・NEFインド支部の萌芽期 
 3.タゴールと神智学協会の関係 
 4.一九三〇年代・NEFインド支部の確立と拡大 
 5.一九五〇年代以降・四度にわたるNEF(WEF)インド国際会議の開催 
 6.タゴールの教育遺産を受け継いで 

第5章 モンテッソーリと新教育連盟 
 1.教育の新理想とモンテッソーリ  
 2.神智学協会とモンテッソーリ 
 3.モンテッソーリと新教育連盟 

第6章 南アフリカと新教育連盟
    ー新教育連盟創設者・エンソアの南アフリカでの活動ー 
 1.一九三〇年代から一九八〇年代におけるNEF(WEF)南アフリカ支部の概要
 2.南アフリカにおける一九三四年と一九六〇年のNEF地域会議の成功
 3.南アフリカにおけるエンソアの活動 
 4.復活のとき 

第7章 レーリヒと文化財の保護 
 1.ニコライ・レーリヒの生涯 
 2.レーリヒ条約と文化財の保護 
 3.レーリヒ条約は京都・奈良・鎌倉を空爆から救ったか 
 4.ユネスコ精神の源泉としてのレーリヒ平和文化運動 
 5.トピック:ニコライ・レーリヒと文化財の保護 
 6.トピック:レーリヒ条約関連資料(翻訳:宮下ゆか里・岩間浩) 

第8章 下中彌三郎と新教育運動 
 1.国際連盟への国際教育会議提唱 
 2.教育擁護同盟及び教育の世紀社を通しての教育活動 
 3.国際新教育協会での活動 

第9章 三浦修吾・関造と新教育運動 
 1.日本における新教育推進者達と三浦兄弟 
 2.三浦兄弟が新教育推進に果たした業績 
 3.教育ジャーナリストとしての活動 

第10章 東京・富士小学校における新教育実践と国際新教育協会
    ー国際新教育協会元事務局長・川越重昌氏へのインタビューを手がかりにー
 1.前史としての上沼校長時代の富士小学校 
 2.新教育協会発足のいきさつ 
 3.川越氏の秋田時代 
 4.新教育協会、「国際新教育協会」として再発足 
 5.富士小学校事務局時代 
 6.過去から学ぶもの 

終章に代えて・ユネスコの平和の精神を文化国家の礎に

付属資料 新教育連盟関連年表ーNEF・WEF国際会議年表 ー 
おわりに 
索引

|

« Kindle本『詩人の死』『気まぐれに芥川賞受賞作品を読む』をお買い上げいただき、ありがとうございます!/創作関係がとり散らかっている… | トップページ | #3 神仏分離政策の影? ②「こころ」のKの気になる境遇、藤村操の自殺 »

評論・文学論」カテゴリの記事

神秘主義」カテゴリの記事

歴史」カテゴリの記事

文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事

Theosophy(神智学)」カテゴリの記事

電子書籍」カテゴリの記事

Notes:夏目漱石」カテゴリの記事