杉田久女の夏の句
台風が通り過ぎ、今日はただ蒸し暑い。気温が相当上がった地域もあったようですね。
日本の気候も変わってきて、季語にずれが生じてきそうですが、雑用の合間に杉田久女句集の夏の句を読んで共感したり、感動を新たにしたりしていたところです。
以前ご紹介した句と重なるものが多いですけれど、印象に残った久女の句を『杉田久女全集第一巻』(杉田久女著、立風書房、1989年)から抜き書きしていこうと思います。
縫ふ肩をゆすりてすねる子暑さかな
みづみづとこの頃肥り絹袷
洗ひ髪かわく間月の籐椅子に
照り降りにさして色なし古日傘
母と寝てかごときくなり蚊帳の月
さうめんや孫にあたりて舅不興
枕つかみて起き上がりたる昼寝かな
夏痩のおとがひうすく洗ひ髪
夕顔やひらきかゝりて襞[ひだ]深く
夕顔を蛾の飛びめぐる薄暮かな
仮名かきうみし子にそらまめをむかせけり
茄子もぐや日を照りかへす櫛のみね
茄子もぐや天地の秘事をさゝやく蚊
夏服や老います母に兄不幸
いとし子や帰省の肩に絵具函
羅に衣[そ]通る月の肌かな
牡丹を活けておくれし夕餉かな
牡丹やひらきかゝりて花の隈
わがもいで愛づる初枇杷葉敷けり
谺して山ほととぎすほしいまゝ
以下は、「琉球をよめる句 十三句」より。
常夏の碧き潮あびわがそだつ
爪ぐれに指そめ交はし恋稚く
栴檀の花散る那覇に入学す
島の子と花芭蕉の蜜の甘き吸ふ
砂糖黍かぢりし頃の童女髪
榕樹鹿[か]毛[げ]飯[ハ]匙[プ]倩捕の子と遊びもつ
ひとでふみ蟹とたはむれ磯あそび
紫の雲の上なる手鞠唄
海ほうづき口にふくめば潮の香
海ほうづき流れよる木にひしと生え
海ほうづき鳴らせば遠し乙女の日
吹き習ふ麦笛の音はおもしろや
潮の香のぐんぐんかわく貝拾ひ
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 芸術の都ウィーンで開催中の展覧会「ジャパン・アンリミテッド」の実態が白日の下に晒され、外務省が公認撤回(2019.11.07)
- あいちトリエンナーレと同系のイベント「ジャパン・アンリミテッド」。ツイッターからの訴えが国会議員、外務省を動かす。(2019.10.30)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その17。同意企のイベントが、今度はオーストリアで。(2019.10.29)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その16。閉幕と疑われる統一教会の関与、今度は広島で。(2019.10.25)
- 天も祝福した「即位礼正殿の儀」。天皇という存在の本質をついた、石平氏の秀逸な論考。(2019.10.23)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- (26日にオーラに関する追記)「前世療法は、ブラヴァツキー夫人が危険性を警告した降霊術にすぎない」を動画化するに当たって、ワイス博士の著作を読書中②(2021.01.25)
- 「前世療法は、ブラヴァツキー夫人が危険性を警告した降霊術にすぎない」を動画化するに当たって、ワイス博士の著作を読書中(2020.11.19)
- Kindle版評論『村上春樹と近年の…』をお買い上げいただき、ありがとうございます! ノーベル文学賞について。(2020.10.16)
- 大田俊寛氏はオウム真理教の御用作家なのか?(8月21日に加筆あり、赤字)(2020.08.20)
- コットンの花とマーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』(2020.08.17)
「俳句」カテゴリの記事
- あけましておめでとうございます。初御空に一句。(2021.01.01)
- 名月に三句(2020.10.02)
- 戦後日本の文学を支え続けてこられた優れた昭和の作家、田辺聖子さんが逝去された(2019.06.10)
- 山上億良の子供を思う歌、万葉集を愛でた杉田久女(2019.04.15)
- 自作桜の句 一句(2018.03.31)