皮相的反戦ものを超えた真のヒューマニズムの書、那須田稔氏の児童文学作品
鬼ヶ島通信から雑誌が届き、あれ?
会員になる自信がなくなり、昨年は継続手続き(雑誌代の振り込み)をしなかったのですが、事務ミスでしょうか。せっかく送っていただいたので、ありがたく拝読させていただこうと考えました(ただ読みではありませんよ、雑誌代はちゃんと振り込みます)。
そして、編集長のお名前から連想したのは、過去記事にも書いた気がしますが、お父様の那須田稔氏の著作『チョウのいる丘』です。
チョウのいる丘 (児童文学創作シリーズ)
那須田 稔 (著), 市川 禎夫 (イラスト)
出版社: 講談社 (1968/02)
ずっと前からほしいと思い続けてきたので、入手したいと思い、Amazonで見ましたら、中古品しかなく、値段が跳ね上がっていました。小学校のときに読み、詳細は覚えていませんが、味わいのある挿絵と共に主人公の少女の生き生きとした描写が浮かんできます。
病室の窓から見える夕焼け空の描写は忘れられません。その夕焼け空は、病気のために眼に出血を起こした少女にしか見えないものだったのです。
一言でいってしまえば、白血病の少女を描いた反戦児童小説といえると思いますが、これこそ、戦後日本が産んだ知的宝物――皮相的反戦ものを超えた、真のヒューマニズムの書だと思います。
純文学の手法で書かれた確かな描写、美しい文章……当時はまだ文学少女ではありませんでしたが、このような著作を通して文学に目覚め、高貴な思想に触れ得た、これが最初の段階だったような気がします。文学的洗礼を受けたといってよいかもしれません。
以下の著作は未読ですが、那須田稔氏の代表作であるようです。
ぼくらの出航
那須田 稔 (著)
出版社: 木鶏社 (1993/09)
Amazonの商品説明には以下のようにあります。
商品の説明 内容(「BOOK」データベースより)
終戦の混乱のハルビン。悪事の見張り役をさせるチャン親方から逃げ出したタダシを救ったのは、同じ親のない子どもたち、タヌキ(日本)、チン(中国)、サイ・アヒル(朝鮮)だった。廃船の船底を秘密のすみかとし、冒険ずきな五人は力をあわせて、数々の事件をくぐりぬけ、たくましく成長する。少年たちの冒険と国をこえた友情を熱くユーモラスにえがく。
この商品説明だけでも、著作の価値が伝わってくる気がします。なくなっては大変なので、注文しました。
このような著作がわが国の児童文学の中心にあり続けていたら、日本は、日本の子供たちは、中国、韓国との関係も、日本の文学も、今とは全く次元の異なったすばらしいものであっただろうに――と、本当に口惜しく思います。
本が届いて読了したら、また感想を書きたいと考えています。
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