キンドル本の新刊3冊『侵入者』、『直塚万季 幻想小説集(1)』、『気まぐれに芥川受賞作品を読む』をご紹介
直塚万季『侵入者』(ASIN: B00JCN2Y6Y)を販売中です。サンプルをダウンロードできます。
内容紹介
今月――2009年9月――上旬の話になるが、「侵入者」続編の資料として活用できそうな、貴重な証言を書き仲間の一人から得た。
彼は離婚歴があり、再婚後も不倫歴のある男性である。現在の妻とは熱烈な恋愛結婚だったそうだ。これ以上の女性はないと思い、口説いて結婚したという。ところが、実際に結婚してみると、理想と食い違うところがあれこれ見えてきた。彼は口うるさくなり、結婚生活がにがいものになった。そのうち不倫をして、それが妻にばれた。妻は心を閉ざすようになり、子供一筋となった。
妻は専業主婦だった。不倫に至った彼の動機の中に、「自分は働いているのだから、少しぐらい遊んだっていいだろう」という思いがあったのだそうだ。
なるほど。女遊びに限らず、遊んでしまう男性の中には、このような心理を潜ませている場合があるという確証が掴めた貴重な証言だった。
「侵入者」の妻は、専業主婦でなければならなかった。家庭を象徴する存在として、専業主婦はそれに最も適う存在だと思ったのだ。わたしは生活圏の侵害――家庭という文化の媒体に対する汚染――という観点から不倫問題を描いてみたいと思い、「侵入者」を書いたのだった。文化が隠れたテーマだった。当然、不倫も文化的産物である。
優れた作家の作品は、男女の問題を文化が絡むところまで掘り下げている。ローデンバックの「死都ブリュージュ」などは、そうした中でも秀逸な作品だろう。
証言者の彼は、「侵入者」の続きが読みたいのだそうだ。あのあと、あの夫はどうするのかが読みたいのだという。彼の指針となるような作品にはならないだろうが、そのうち完成させたい。
しかし、相反する気持ちがわたしの中にはある。遊ぶ男性の心理を知りたいという思いが長年あったが、彼の証言はわたしの想像と一致した。そして、わたしの書きたい気持ちはむしろ冷めたのだった。
ただ、やはり、続編は書いておきたい。わたしの書きたい気持ちは冷めて――それはそれとして、とても面白い小説にはなると思うから。
男性を戦慄させるような作品を書きたいという思いが、わたしの中にはずっとある。続編の場合も他の作品の場合も、意識してそうすることは決してないと思うが、案外怖い作品になるかもしれない。「侵入者」さえ、遊んだ彼には、ちょっと怖かったみたいだから。
――「まえがきに代えて」より「侵入者」は、同人誌「日田文学」56号(編集人・江川義人、発行人・河津武俊、平成20年4月)に掲載された。同年、「文学界」7月号(文藝春秋、平成20年)・同人雑誌評蘭で、今月のベスト5のうちの一編に選ばれた。
続編にあたる「不倫のお相手は肥満気味のストーカー」の出版が計画されている。
『直塚万季 幻想短篇集(1)』、『気まぐれに芥川賞受賞作品を読む 2007 - 2012(Collected Essays 2)』も出たばかり。絶賛発売中(?)です。
『直塚万季 幻想短篇集(1) 』(ASIN:B00JBORIOM)に収録した作品は4編。
- 杜若幻想
ちょっとコミカルで耽美チックな幽霊譚。ショートストーリーです。 - 茜の帳
幼児の頃に母親が自殺したことからくる少女の葛藤を描いています。
佐賀県鹿島市にある祐徳稲荷神社がクライマックスの舞台で、著者はこれから創建者である萬子媛――江戸初期生まれの筋金入りの女僧で、現在もこの世界を見守っていらっしゃる御方なので、祐徳院様とお呼びするべきでしょうが――の人生を執筆します。 - フーガ
亡くなったばかりのピアノ教師の視点から描く師弟愛の物語。リリカルなショートストーリーです。 - 牡丹
ちゃらんぽらんな生き方をしてきた男の妻が末期癌になります。男の行動はますますタガが外れたものとなり……「杜若幻想」もそうですが、能楽に刺激されて執筆した作品です。神秘主義的美の世界をお楽しみください。
サンプルをダウンロードできます。
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『気まぐれに芥川賞受賞作品を読む 2007 - 2012(Collected Essays 2)』(ASIN:B00J7XY8R2)はレビュー&文学論です。
日本の文学界の現状と問題点を鮮明にお伝えします。『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち(Collected Essays 1 』(ASIN:B00BV46D64)と抱き合わせで、どうぞ。
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できれば、明日の深夜までに歴史エッセー『卑弥呼をめぐる私的考察(Collected Essays 3)』も出していまいたいところです。来月から初の歴史小説に入ると、それにかかりきりになると思うので、今のうちになるべく……。
表紙は以下。本の登録時には削除します。今回、シンプルですが。
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