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2014年3月 6日 (木)

村上春樹訳に置き換えられてしまったサリンジャーの「Franny and Zooey」

 過日、書店で村上春樹訳の『フラニーとズーイ』を目にし、パラパラとめくってみた。カタカナが多用されていてわたしには読みにくく、何のための邦訳だろう、と思わないでもなかった。

 これで、新潮文庫の野崎孝の名訳『フラニーとゾーイー』は村上春樹訳に置き換えられてしまったわけだ。

 わたしの年代(1958年2月生まれ)で、サリンジャーにはまった人は多かったのではないかと思う。

 J・D・サリンジャー:Wikipedia

 1965年に『ハプワース16、1924年』を発表したのを最後に、作品を発表しなくなったサリンジャーだったが、彼がいつ新作を発表するのか、しないのか、サリンジャーの作品の解釈といった話題で、わたしは文芸部の仲間と当時よく議論をした。楽しかった。

 サリンジャーはわたしにとってはまさに青春の書であった。

 発表週間でサリンジャーを採り上げたような気もする。

「ブルー・メロディー」に触発されて、「とても美しい劇」という掌編を書いた。荒地出版社から出ていたJ・H・サリンジャー『サリンジャー選集3 倒錯の森〈短編集Ⅱ〉』に収録されていた一編。

Sa2

 

Sa1

 

 今でも、このシリーズをほしい人は結構いそうな気がする。前出の「ブルー・メロディー」なんか、読み返したい人も多いのではないだろうか。

「ブルー・メロディー」に登場するリーダ・ルイーズは、ベッシー・スミスがモデルだといわれていた。わたしは高校時代にジャニス・ジョプリンを発見し、大学時代はジャニス漬けだったが、そのジャニスが影響を受けたベッシー・スミスである。

 どちらの方面からも、ベッシー・スミスは特別なシンガーとしてわたしの中で輝きを放った。以下はウィキペディアより抜粋。


ベッシー・スミス:Wikipedia

主に1920年代から1930年代にかけて活躍。 多大な成功を収め、「ブルースの女帝」とも呼ばれる。「建造物を揺るがす」ほどの圧倒的な声量と芳醇な情感を保つ歌唱力で聴衆を魅了し、偉大なブルース・シンガーとして現代でもその人気と名声は語り継がれている。

近代アメリカのポピュラー音楽史上、彼女の存在は後に活動する多くの歌手たちへジャンルを問わず幅広く巨大な影響を与えている。彼女を尊敬したという歌手にビリー・ホリデイ、マヘリア・ジャクソン、ジャニス・ジョプリン、ノラ・ジョーンズ達が挙げられる。

作品では『セントルイス・ブルース』、『難破ブルース』などの録音が有名である。

彼女自身も作詞および作曲を行い、2006年7月現在日本音楽著作権協会 (JASRAC) には35作品がPD状態として確認、登録されている。

 でも、わたしはベッシー・スミス、ビリー・ホリデイより、オデッタ(Odetta Holmes, 1930年12月31日 - 2008年12月2日)のほうが好きかな。オデッタの歌声の柔らかさ。以下の動画では体調のせいか、もう満足に声が出なくなっているようだけれど。

Odetta at Governor's Island House of the Rising Sun / When I Was A Young Girl
https://www.youtube.com/watch?v=jsV0kTXgYXc

 なぜか第1巻が見当たらない。『サリンジャー選集1 フラニー ズーイー』を新潮文庫版の訳と比べた記憶があるから、持っていたはずだけれど、本棚の奥にあるのか、なくなったのか、少し時間をかけて調べてみなくてはわからない。

 愚作「とても美しい劇」を読み返してみたが、読める。大学1年のときのそれも戯れに書いた初期の作品に当たるのだが、当時読んでくれた――口うるさいはずの?――仲間がそれなりに感じ入ってくれた記憶がある。

 廃版にした『茜の帳』収録の幻想短編「茜の帳」などと一緒に、『初期短編集』というキンドル本を出すのもいいかもしれない。また☆一つ食らいそうだが。

 サリンジャーに関することなら、どんな断片にも目を走らせた。

 そして、わたしは「東洋思想を受容し損なったユダヤ系作家」という位置づけを行ったのちに、サリンジャーを離れた。

 それでも、のちになって出たサリンジャーの伝記、娘さんの告発本(?)もちゃんと読んだ。

 大学時代にはまった頃からサリンジャーの限界が感じられていたのだが、今思えば、あれほど惹きつけられたのはサリンジャーの真摯さが嫌でも伝わってきたからだろう。

 深淵をのぞき込まされるような、あの真摯さが村上春樹にはない。だから、春樹がどうしても好きになれないのかもしれない。

「ブルー・メロディー」には手を出してほしくないが、多くの人に読んでほしいというサリンジャーの一ファンとしての思いはある。願わくは、同じ訳でなければ、春樹以外の優秀な翻訳家の訳で。

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