初の歴史小説 (2)博物館と図書館に問い合わせる
萬子媛は何しろ祐徳稲荷神社の創建者で、鍋島直朝公の奥方なのですから、小説つまりフィクションといっても、いい加減なことを書くわけにはいきません。
まず、資料としてわたしが全面的に頼っている本『鹿島市史真実の記録』(田中保善、平成2年)の著者に当たってみなくてはならないと思い、改めて著者略歴を見ました。生年が明治42年とあり、愕然となりました。ご存命だとすると、104歳……!
この方は祐徳稲荷神社の再建にも参画された地方名士です。本にある写真を見ると、覚えのあるお顔です。本を購入したときは、この写真とプロフィールになぜか気づきませんでした。本の後ろの方ばかり、探していました。
略歴に「長年校医として学校保健に尽力したので文部大臣より表彰さる」とあり、やっぱりと思いました。白衣を纏った端然とした優しそうなお顔と怖い注射の思い出が重なります。
あのときのお医者さんが著者だとは……わたしはこの本を参考にしたエッセー「萬子媛抄」を平成4年のはじめに書き、個人誌に掲載しています。本はおそらくその前年の平成3年に購入したのではないかと思います。そのときにコンタクトをとれば、田中先生からお話をお聴きすることもできたでしょう(どうでもいい話ですが、わたしは田中という姓の方と縁があります)。
当時は自分が将来、萬子媛と内的にまみえるという特殊な体験をし、本格的に萬子媛を主人公にした小説を書きたいと思うようになるなどとは想像もしませんでした。でも、そのときにこの本を購入していなければ、萬子媛についてこれほど詳細に書かれた本に出合うことはできなかったでしょう。
否そもそも、この本を読まなければ、萬子媛に対する興味がこれほどまでに高まるようなこと自体がなかったでしょうね。本は現在、鹿島市民図書館で閲覧できますし、古書店「葦書房」で入手できますが、今はじめてタイトルを見ても、中に萬子媛のことが詳しく書かれているとはわからないと思うからです。
本に書かれている萬子媛に関する「第七章 昭和時代」の「第二項 萬子姫と祐徳稲荷神社」は聴いた話と資料を参考に書かれているようです。インタビューによる箇所と直接資料に当たられた箇所の区別、また資料名についてお尋ねしてみたいと考えていたのですが……。また、何より知りたいのは萬子媛の生年です。
神社の公式ホームページには「萬子媛は後陽成天皇の曾孫女で、左大臣花山院定好公の娘でありますが、寛文2年直朝公にお輿入れになりました」としか出ていず、田中先生の本には、寛文2年(1662年)に37歳で結婚とあります。
1662年から37を引けば生年が出てくるはずですが、ここが日本の厄介なところで、もしこの37歳というのが数え歳だとすると、生年が違ってきます。わたしは何より、ここをはっきりさせたいと思いました。
神社の博物館に電話をしてみました。男性が出られて、途中電話を2度中断して調べてくださいましたが、萬子媛に関する特別な資料は見当たらないそうで、藩に関する日記しかないというお話でした。
それは――Kindle本『茜の帳』の中で書きましたが――わたしが同じ平成3年ごろに期待して1冊購入した藩日記のことでしょうね。少なくともわたしが購入した本には、萬子媛に関する期待したような記述は何も見つけることができませんでした。
萬子媛の生年について伺うと、後陽成天皇の頃にお生まれになったということしかわからないそうです。後陽成天皇は元亀2年12月15日(1571年12月31日) - 元和3年8月26日(1617年9月25日)。在位は天正14年11月7日(1586年12月17日) - 慶長16年3月27日(1611年5月9日)。
うーん、1662から37を引けば1625年になりますが。後陽成天皇は萬子媛の曾祖父ですしね。
念のために系譜を調べてみますと――、
後陽成天皇の第三皇女である清子内親王(1593-1674)は 鷹司信尚の室となっています。その娘が花山院定好の室となり、生まれたのが萬子媛というわけです。Wikipediaには花山院定好の子として花山院忠広、花山院定教、花山院定誠の名しかありません。女は無視ですか。
サイト「公卿類別譜 ~公家の歴史~」で調べてみました。花山院家系図で見ると、定好には男子5人(忠広、定教、円利、定誠、 堯円)、女子3人いて、真ん中の女子が萬子媛ですね。鍋嶌和泉守室とありますから。嶌は島で、鍋島。和泉守は官位です。
博物館で収穫が得られなかったので、鹿島市民図書館に電話してみました。昔よく利用していた図書館でした。この歳になって他県から利用することになろうとは……。
司書の女性が出られたので、萬子媛について知りたいというと、どういったご利用でしょうかと尋ねられたので、「仕上げられるかどうかは書いてみなければわかりませんが、萬子媛を主人公にした小説を書いてみたいと思っています」と正直にいいました。
司書の女性は何度も電話を切っては、調べてかけ直してくださいました。
「萬子媛について書かれたものとしては、鹿島市史資料編に見開きで2頁、書かれているぐらいですね。ああ、あと、絵本があります」ということでした。
絵本というのは、過去記事で書いた絵本『萬媛』のことでした。絵本は購入を決めていたので、鹿島市史資料編に少しでも書かれているのであれば、借りたいと思いました。
大分市のわたしの利用している図書館で手続きをすると、2週間借りられるそうです。以下の2冊を、近うちに借りたいと思っています。
タイトル=鹿島の人物誌 第4集
著 者=鹿島市史執筆委員会/編
叢書名=鹿島市史資料編
出版者=佐賀:佐賀県鹿島市
1987年03月タイトル=鹿島の神社と寺院 第6集
著 者=鹿島市史執筆委員会/編
叢書名=鹿島市史資料編
出版者=佐賀:佐賀県鹿島市
1991年03月
鹿島市民図書館でわたしは作家になる夢を育んだのです。その夢は未だ果たせていませんが、書くだけは沢山書いてきました。20年前は萬子媛に関するエッセーを書くのが精一杯でしたが、今なら書けるかもしれません。小説をぜひ完成させたいと決意を新たにしました。
いやいや、気負わずにいこうと思います。歴史小説は初心者ですから……。
以下のブログで紹介されていた『萬媛』という絵本を購入したいと思い、注文先に電話をかけると、出られた男性が「ああこちらで購入できますよ。でも、高いですよ」とおっしゃいました。「構いません」といいました。
萬媛(まんひめ)-絵本の紹介
https://manhime.sagafan.jp/
500冊刷って、あと100冊ほど残っているそうです。読書の秋に如何ですか? 絵本『萬媛』に関する情報を前掲のブログから転載させていただきます。
文 梶田聡実
絵 寺田亜衣 杉本国子 中島健一 古賀沙織
値段 1980円
注文先 TEL:0952-28-8961(ビジネスプランコンテスト事務局)
FAX:0952-28-8961,E-Mail:1952sato@cc.saga-u.ac.jp
以下は、祐徳稲荷神社を舞台にした幻想短編小説と萬子媛に関するエッセーを収めたわたしのKindle本です。サンプルをダウンロードできます。
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