恩師の葉書
ネットで何かを調べているときに、小説家の卵のブログと出くわすことがある。ジャンル違いの書き手であることが多いので、大抵は閲覧させていただくだけであるが、そのブログ主が賞狙いをしている人であると、何となく気にかかり、複雑な気持ちで見守ってしまうことがある。
1~2年閲覧を続けるうちに、落選が原因であることが多いようだが、いつの間にか風に吹かれたままになってしまうことが多い。
何ともいえない、寂しい気持ちになる。
当たり前の話であるが、創作というものはプロの仕事のためや、プロを目指す手段のためにだけあるのではない。わたしは神秘主義者であるから特にそう思うのだが、創作がプロになることに結びつかなかったとしても、創作することで社会意識の質を高めることに貢献している場合も大いにあると思うのだ。その逆の場合も、勿論あるとは思うが……。
史実を題材として小説を書こうと思い、資料集めをしていると、知名度の低いプロ作家や自費出版したアマチュア作家の作品がとても参考になる。大家の作品などはそうした研究をうまく利用しているという感じで、案外参考にはならなかったりする。
大勢の無名の物書きと一握りの有名な作家、そして、作品を形にして流通させる出版社、取次店、書店、さらに読者によって、文学の世界は息づいている。
冷静なとき、わたしも文学の世界を支えるとても小さな一員――という意識があるのだが、目に見える成果がほしい気持ちが募るときなどは、何年書いていてもつらい。自分が無意味なことをしている無駄な人間に思えてくる。
1995年の4月にお亡くなりになった神智学の先生から、2月の下旬にいただいた葉書がある。先生の病気がよくないことはわかっていたので、ひどい愚痴り方はしなかったと思うが、先生に出した手紙(か葉書)でわたしは賞に落ちたことを書いてしまったのだろう。
先生からいただいた最後の葉書には、それに関する言葉があった。
どうぞあせらずにご御精進ください。たとえ落選であっても、決してつたない作品ではなかったと思います。選者の主観がありますから。
その言葉には、読んでいてつらくなるような先生の厳しい近況報告が続いていた。
私の方は一月以来調子が悪く、今は最悪です。忍耐あるのみです。
この葉書をいただいて2ヶ月もしないうちに、先生はお亡くなりになってしまった。もっと長生きしていただいて受賞の報告をしたかった。だが、仮に先生が100歳すぎまで長生きされたとしても、それは叶わぬ夢で終わっただろう。
それに、先生はわたしが作家になることなど期待してはいらっしゃらなかったに違いないが、先生の言葉を支えとして、これまでやってきた気がする。
いや、いずれにしてもわたしには書くことをやめることなどできないのだ。過去記事で書いた気がするが、書き仲間のFさんもそういっていらした。「僕らは、書くことをやめられないんだよね。そして、独りでやっていくしかないんだよね」と。
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