おすすめキンドル本です、檀 純也著『蒼い家』
おすすめキンドル本です。ノンフィクション。
統合失調症の妻、その事実をはっきりとは知らないままに結婚したシステムエンジニアの語り手。
妻の病気がもたらす混乱の中で、ストレスから同居の両親が病気に倒れ、本人もうつ病となり、息子は登校拒否……。
語り手の飾らぬ、時に軽妙とさえいえる語り口が重苦しい状況を照らし出す太陽のようで、最後まで読み通させてくれます。
登校拒否を克服し、有名大学にパスした息子さん、あっぱれです。語り手の頑張りと、この家族本来の温かみがそのような形で結晶したように思えました。
ただ、最初の医者の対応、妻の実家の対応はちょっと解せません。最初の医者と妻の実家の人から、病気について妻本人に、それが無理ならせめて語り手にきちんと説明がなされていたとしたら、その後の展開が違っていたかもしれないと残念に思いました。
どんな病気でもそうでしょうが、よい医者と出会えるかどうかは大きいですね。自分の病気に対する妻の自覚が、閉ざされた家族の雪解けと感じさせます。
家族に起きたことをシンプルに述べた作品で、わかりやすく、同じような困難に見舞われた人々には参考になることも多いと思います。
まだ無料キャンペーン中のようですが、有料でもほしいと思える本でした。
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