また児童小説『すみれ色の帽子』の表紙絵作り直し。事件小説『地味な人』について(独り言)
わたしとしても、お絵描き(GIMP操作法といったほうがいいかも)は「ねこふんじゃった」の段階だということくらい自覚があり、頭の中で想い描いている理想的な表紙絵を無謀に追っているわけではないのですが、それでも、自覚があるなりの「何かイメージと違いすぎる。これでは瞳は気に入ってくれないのでは……」という焦燥感がなかなか消えてくれません。
で、また作り直していました。うーん。
もういい加減『地味な人』の古い原稿に取り組まなくては。ずいぶん印字が薄れた感熱紙から、昌美という一女性の愚かしくも必死だった生き様が消えてしまう……。原稿を読み直して思いましたが、なぜか、『田中さんちにやってきたペガサス』に出てくる少年の名は友暁、『地味な人』では友裕――と似ています。
ここに出てくる二つの家族を比較してみると、むしろ失業して経済危機を抱えた『ペガサス』の家族のほうが大変そうですが、「ペガサス』のほうが救われているのは家族各人がマイペースで、楽天的だからでしょうか。
何より芸術に救われていますが、『地味な人』に出てくる家族は善良な人々ながら、自らの価値観を世間の価値観から引き離すことができない弱さと、彼らを窮地に追い込もうとする周囲の非情さがあります。
その非情な人々とは、アメリカ型商業主義(ユダヤ商法と呼ばれる独特なもの)の波に乗ってサーフィンを楽しむ人々です。
泳ぎを知らない昌美は波に攫われ、溺れそうになるばかりで、助けとなるものがありません。唯一の生き甲斐は子供ですが、子供が独り立ちするにはあまりに遠いことに思われ、子供を波から守りきれない自身の非力さに戸惑うばかり。
ただ彼女は酪農家に生まれ、自然の営みや牛の運命についてよく知っています。人間の営みや運命がそれらと無関係でないことも。
彼女は作品の終局で、まるで怒れるカーリーになってしまったかのようです。我ながら、恐ろしい作品を書いてしまいました――と、以上は独り言です。
10年ぶりくらいに作品を読み返すと、当時は気づかなかった発見があるものですね。手を加えるのは、最小限にとどめなければ、と思っています。そのとき、そのときで懸命に書いた作品にはハッとさせられる情感や発見が息づいており、下手に手を加えると、それらが死んでしまうでしょう。
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