趣味の園芸ならぬ趣味の文芸作品「abさんご」
第148回(平成24年度上半期) 芥川賞を受賞した黒田夏子『abさんご』。
冒頭を読んだだけで、全文を読んだわけではないから、無責任なことしかいえないが、受賞作品は実験ともいえない、趣味の園芸ならぬ趣味の文芸の段階にすぎないんじゃないかと思う。
あれこれ工夫するのはいいが、その工夫を客観視する姿勢が作者には欠けている気がする。
インタビュー記事でタイトルの意味が説明されていたが、わたしの理解したところによると、「aかbかの選択ということからイメージされた枝分かれした珊瑚――がタイトルの意味。さらにいえば、珊瑚の英訳はcoralなので、abのあとにcというアルファベットが隠れているということも汲み取っていただきたい」と作者は考えているようだ。
ちなみに、わたしは「abさんご」の意味を「安倍さん」+「期」、つまり安倍政権と捉え、左翼作家が現政権について戯画的に描いた作品かと思った。夫は「産後のアベ」、つまり「アベさんという女性の産後奮闘記」と思ったそうだ。
ここでは、「珊瑚」でなく、「さんご」でなければならない必然性がない。要するに、選択から枝分かれを連想し、枝分かれから珊瑚を連想したという作者の陳腐な想像があるにすぎないのだから。
「c」というアルファベットを隠すことで、「a」でも「b」でもない第三の選択の可能性があったことを作者は夢想し、読者にそれを伝えたかったのだろうが、タイトルから読者がそれを読みとることは無理な相談であり、重視すべきは夢想の質であって、日本語の形式を無視してまで作者がタイトルに拘泥する必然性がこの理由からも感じられない。
「ab珊瑚」となっていたとしたら、わたしは「ab」と名づけられた新種の珊瑚のことかと思っただろうが、「さんご」が「珊瑚」となっただけで、少なくとも、わたしたち夫婦は政治家の安倍さんや産後のアベさんからは解放されるわけである。
わたしは大学時代はずっと詩に執着していたので、詩の世界では様々な試みがなされることを熟知しており、そこではずいぶん変わったものもあったように思う。
しかし、大事とされたのは当然、そうした工夫に籠められるところの内容であった。
その内容にふさわしいものでなければ、文体にいくら凝って改造や装飾を重ねたところで、そのような努力自体が一笑に付されるだけだった。内容こそが、それにふさわしい表現形式を決定するはずなのだ。ミューズ由来の創作であるならば。
タイトルを見たときに、説明なしで何とはなしのイメージの浮かび上がるのが、タイトルであるべきではないのだろうか。
また、ひらがなを多用しても、拙作『マドレーヌとわたし』を読んで貰えればわかるが、少しの工夫で読みにくさを抑えることができる。
わたしは初心者なのでまだ下手だが、幼年童話の書き手は、大抵そのような工夫をされていると思う。
作者はわざと読みにくい書きかたをして、内容の貧弱さをごまかしているだけではないかとわたしには思えたが、全文を読んだわけではないから間違った捉えかたの可能性もあるので、もし全文読んだら、改めて感想を書きたい。
「語源をさかのぼるときは、ひらがな」と作者はこだわっていたが、ひらがなを遡れば漢字に行き着くのだが。
意味及びイメージを限定されたくないという気持ちはわかるが、選択の一つ一つに作家の力量が表れ、その総体が物をいうというのに、その仕事を放棄してしまって、作家の仕事になるのだろうか。ずいぶん、甘い話だ。
なんか、頭がヘンになった。漢字の有難味が身に沁みる。
最近の芥川賞の受賞者は作品ばかりか、インタビューにおける言葉遣いも変で、在日外国人か帰国子女だろうかと思ってしまう。でなければ、日本語を壊す使命を帯びた反日国の工作員とかね。そんなスパイ小説、如何ですか?
※当ブログにおける関連記事
- 2007年7月 7日 (土)
芥川賞候補、川上未映子の詩『私はゴッホにゆうたりたい』を読む
https://elder.tea-nifty.com/blog/2007/07/post_8a5a.html
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