息子の土産話 その二「ゲーテもアンネ・フランクも金持ちだったんだねえ」
わたしはフランドルの画家ピーテル・ブリューゲルの絵が好きで、画集をよく見ているのですが、人物の描きかたについて疑問がありました。
人物が総じて同じように描かれている……大柄の、どちらかといえば、むっくりした体つき。容貌は、職人風というか農民風というか、素朴な感じで、無表情。わたしはずっと、ブリューゲルはあるテーマのもとに人物をデフォルメして描いているのだと思っていたのですね。
ところが、あるとき、エティ・ヒレスムという第二次大戦中にアウシュヴィッツ収容所で亡くなった聡明なユダヤ女性の日記『エロスと神と収容所』(大社淑子訳、朝日新聞社、1986年)を読み、挿入されていたエティの周囲にいたオランダ人たちの写真を見ていて、おや、と思ったのでした。
ブリューゲルの絵に似ている……。それから、オランダ人の著作に触れるたびに、著者の写真などを気をつけて見るようになり、そうするとやはり、ブリューゲルの絵に描かれた人物に似ている人が多いように思ったのでした。
オランダ人の身体的特徴として、大柄、素朴な容貌、無表情といったものが感じられるのかどうか、息子に観察してきてほしいと頼んでいました。
息子が飛行機で降り立ったのは、オランダのスキポール国際空港です。スキポール国際空港はいわゆるハブ空港で、大きな空港だったとか。
オランダ人には体の大きな人が多く、男子トイレの便器の背が高かったそうです。ただトイレへは子供も行くから、それで困るということはなかったそうですが(?)。
息子の印象では、オランダ人は男女を問わずでかい。巨体といっていいくらいのオランダ人の中には、バイキングとかフランケンシュタインを連想させられる人もいたそうです。
でも、子供はどの子も、絵画に描かれる天使とかキューピットそのままの、息を呑むような可愛らしさだそう。それが大人になると、フランケンシュタインになったりするというわけなのでしょうか。
ネット検索したところでは、やはりオランダ人の平均身長は世界一高く、成人男性の平均身長は183cm、女性は171cmだそうですよ。
目が合ったとたんにニコッと微笑む人と、無表情の人に分かれるように息子には思え、無表情な場合も嫌な感じは全くしなかったそうですが、息子と一緒に行った後輩の男性はオランダに降り立った初日から帰国するまでずっと、オランダ人は苦手だ、日本に帰りたいといっていたとのことでした。
アムステルダムは観光地として整備されていて、家々は煉瓦作り。如何にもヨーロッパという感じがしたそうです。スターバックスコーヒーなんかも、ヨーロッパ風の建物の中に収まっているそうで。自転車に乗っている人が多く、自転車専用道路がきちんとあるというのはいいですね。
息子はほとんど観光はしなかったといいましたが、それでも、アムステルダムではアンネ・フランクの家を見、運河クールーズを楽しんだようです。国立美術館にも出かけ、改修部分が見られなかったのが残念だったといいました。
大航海時代に東洋からもたらされた文物が多く並び、伊万里焼もあったそうです。レンブラントの絵では、雲と雲のつくり出す影がすばらしかったとか。東洋の影響を感じさせる絵も多かったようです。
ホテルの食事は、ヨーグルトとジャムがハッとするほど新鮮で、美味しかったとか。ジャムはグランベリーとかマルベリーといったベリー系が豊富。肉は、黙っていると、生に近いものが運ばれてくるそうですが、息子はたいらげてしまったそうで。後輩の男性は、日本食が恋しいといっていたそうですが。
夫は流通業に務めている頃、視察旅行でアメリカへ行き、ロサンゼルス、ダラス、アタランタを回りましたが、肉については息子と同じことをいっていました。一緒に行った夫の同僚たちは食べられなかった人が多かったのに、夫も同僚のぶんまでたいらげたといっていましたっけ。
息子がオランダで飲んだビールは、よく日本でも見かけるハイネケン。ドイツでも飲んだそうですが、ドイツのビールは濃くて、ハイネケンのほうが息子の好み。大麦で作った普通のビールと、小麦で作ったホワイトビールがあるそうです。
フランクフルトで食べたソーセージは、日本で食べるソーセージと変わりなかったようです。フランクフルトで、上司が高校時代からの旧友と待ち合わせがあったそうで、息子はそれにくっついて行ったとのこと。
その上司の旧友は大学を拠点としながら10年間ヨーロッパを放浪していて、ずっと日本には帰っていないそうです。東大の理数科から哲学科へ変わったという学歴の持ち主で、少し変わった人だそう。現在はベルギー大学に籍を置いて、フランクフルトにいるらしいです。
フランクフルトは、その人が案内してくれたとのこと。大聖堂は外から見ただけだそうですが、迫力があり、建築的にとても凝ったつくり。息子はゲーテの家にも行きました。
「アンネ・フランクもゲーテも金持ちだったんだねえ。アンネ・フランクの隠れ家を狭いあなぐらみたいなところだとは想像しないほうがいいよ。お袋が住んでいるところより、よほど……と思えばいいと思う。相当に広いから」と、しみじみ息子はいいました。
『アンネの日記』を読んで、アンネ一家がお金持ちだったことはわかっていましたが、隠れ家がそんなに広いとは想像していませんでした。
写真は息子が送ってくれたお土産です。チョコレート、お金(ユーロ)、切符、ホテルの石鹸。チョコレートは裏を見ると、イタリアの創業フェレッロ、メイド・イン・ドイツとあり、イタリアのブランド『フェレッロ』ドイツ支社の製品でした。
そういえば、息子は大学受験で東京に行ったときに『東京ひよこ』をお土産に買ってきたことがありました。息子が小学校まで、『ひよこ』の本場に近いところに住んでいたわたしたちでした。娘はイタリア人ふたりとメールのやりとりをしているくらいなので、息子があえてイタリアのブランドチョコを選んだのかどうかは謎ですが……。
トリュフ風のチョコで、玉の外も中も凝っています。金色は中がアカデミアナッツ、夫はこれが好き。茶色はチョコがビターで、娘はこれが好き。わたしは銀色が好きです。銀色はチョコがホワイトで、ミルクが香ります。
※関連記事
2012年10月 9日 (火)
息子の土産話 その一「シベリアの原野を流れる河が龍に見えた」
https://elder.tea-nifty.com/blog/2012/10/post-4081.html
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