Notes:不思議な接着剤 #84 『フラウィウス・ヨセフス伝』(ヨセフス2) ②ヨセフスの順列。エッセネ派の人々が隠れた洞窟。
この時期だと、童話2編に目鼻をつけ、短編小説のプロットに勤しんでいたはずなのだが、どれも何もできていない。
というのも、ミレーユ・アダス=ルベル著『フラウィウス・ヨセフス伝』(東丸恭子訳、白水社)を読みながら、考え込んでしまっていたからだった。
ユダヤ観が一変したというだけではない。もう何が何だかわからないまでになってしまった。この著作を読んだことで改めて、わたしの脳にはキリスト教的な歴史観がどぎつく刷り込まれていたとはっきりわかった。
呑み込みが悪いせいで、まともにノートもとれない段階であるが、またまた図書の返却日が迫っているので、メモしておこう(いっそ中古品をアマゾンで買おうかなあ)。
※以下はあくまで自分のための覚え書きにすぎませんので、関心を持たれたかたは、前掲書をご自分でお読みになってください。
少し整理してみたい。ウィキペディアによると、
- イエス・キリスト……紀元前4年頃~紀元28年頃。
- パウロ……紀元5年~67年。
- ヨセフス……紀元37年~100年頃。
パウロの回心が紀元34年頃。
ヨセフスがサドカイ派・パリサイ派・エッセネ派のサークルを体験したのは紀元51~53年。53年~56年まで、隠者バンヌスに師事。65年には、対ローマのユダヤ戦争が勃発する寸前の政情不安を示していた。ヨセフスは66年~67年までユダヤ軍のガリラヤ指揮官を務めるが、籠城を経て、ローマ軍の将軍ウェスパシアヌスに投降した。
イエスの生死についてははっきりしないが、ヨセフスはイエスの磔刑後に生まれ、ヨセフスが生まれる3年前にパウロの回心があった。パウロの布教と重なる時期にエルサレムの裕福な家庭で成長したヨセフスは、ユダヤの各学派を体験学習した。
ここで、#78でメモしたブラヴァツキーの記述、「エッセネ派というのはピュタゴラス派で、死海の畔に居を構えていた仏教徒(プリニウス『博物誌』)の影響を受けた」というのを思い出しておこう。ユダヤの各学派については、#85でメモをとっておきたい。ユダヤの秘教カバラに、ピュタゴラス派の思想が影響していることは間違いない。
『フラウィウス・ヨセフス伝』から窺える各学派の雰囲気は宗教的、学問的なもので、各学派における規則や契約は別として、風通しのよい、自由な雰囲気があった。もし当時のキリスト教に、そうしたユダヤの学派に並ぶだけの存在感があったとすれば、知的好奇心の勝ったヨセフスのこと、それも体験学習しようとしたに違いないが、それはなかった。
ヨセフスがローマ軍に投降した年までに、おそらくパウロは処刑されていた。ヨセフスの投降まで、こうしてヨセフスにそって見ていくと、当時のキリスト教にはまだ、ユダヤの主要な諸派に並ぶだけの品格は到底備わっていない。クラディウス帝(治世41~54)がクレストスによる騒乱のもととなっていたユダヤ人を追放したとの歴史家スエトニウスの記述は、初期キリスト教徒である可能性が高いという(使徒行伝18-2に、クラディウス帝が全てのユダヤ人はローマから退去するようにと命令したとある)。
「一世紀初頭におけるローマのユダヤ人は約四万と推定」されるという。ユダヤ人の異国的習慣が侮蔑されていたにも拘らず、ユダヤ教への改宗者は増え続けていた。しかしユダヤ教に惹かれた多くの異教徒は、改宗に必要な割礼や浸礼を受けないまま、その門口にとどまっていた。だから、ユダヤ教はまず、割礼という障壁の存在しなかった女性たちに浸透したという。キリスト教は、ユダヤ教に魅せられていた異教徒にとっては、改宗に必要であるはずの契約と行いをとっぱらった、近づきやすいユダヤ教の一派と映ったに違いない。
ヨセフスは強大なローマに対して、最初から勝ち目があるとは全く思っていなかった。ガリラヤ指揮官としてのヨセフスの心中は複雑だった。ヨセフスがローマに投降する前に、数学で『ヨセフスの順列』と呼ばれるもととなった出来事が起きる。
ネロがローマの指揮官として選んだウェスパシアヌスによるユダヤ遠征は、67年末~69年6月にかけて行われた。ウェスパシアヌスがエルサレムの包囲を企てて、標的とした町の一つであるエリコに進軍した時期、エリコからそれほど遠くないところにあったエッセネ派の共同体からエッセネ派の人々が聖なる文書を携えて近くの山々に逃れ、洞窟に隠れた。こここそ、現在、クムランと呼ばれる場所という。
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