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2012年6月 6日 (水)

メアリー・スチュアートのデスマスク、刺繍

『BSアーカイブス HV特集▽城・王たちの物語 悲劇の女王メアリー・スチュアート』を観た。

 メアリー・スチュアート[Mary Stuart,1542-1587]。これまでうまく理解できなかった英王室の血筋のことが呑み込めただけでなく、悪女のイメージしか抱けなかったメアリー・スチュアートのイメージが変わり、何だかファンにすらなってしまった。

 メアリー・スチュアートにゆかりの深い傭兵の家系に生まれた若い女性が自身のルーツを探るという設定で、番組を通してスコットランドの自然、お城、イングランドとの確執、メアリーを物語るデスマスクや刺繍、エリザベス1世宛の率直で真摯な手紙を初めとする資料などに触れられたことから、スコットランドの風土と歴史、メアリー個人に対する親しみがもたらされたのだろうと思う。

 どんな番組だったかというと、以下はNHKネットクラブからの引用。

「引用ここから」……
番組内容:
エリザベス1世に対抗してイングランドの王位を狙い、愛と陰謀の渦巻く中で波乱の生涯を送ったメアリー・スチュアートとエジンバラ城の物語。

詳細:
スコットランドの人々は「国家なき国民」と呼ばれている。英国の一地域に過ぎないにもかかわらず、アングロサクソンのイングランドとは、民族も風土も異なるケルト人の国として、独自の歴史と文化、精神を誇ってきた。その気骨を支えたのが、巨大な岩山の上にそそり立つエジンバラ城だ。エリザベス一世に対抗してイングランドの王位を狙い、愛と陰謀の渦巻く中で波乱の生涯を送ったメアリー・スチュワートとエジンバラ城の物語。
……「引用ここまで」

 現英王室は、処女王エリザベス1世の血筋ではなく、エリザベス1世の暗殺に関与した廉で処刑されたメアリー・スチュアートの血筋だ。メアリーの息子ジェームズが、スコットランド、イングランド両王国の国王となる。イングランドとスコットランドは、1707年に合同してグレートブリテン王国となるまで、同一人の国王を戴く君主連合となったのだった。

 ジェームズはメアリー・スチュアートとダーンリー卿の間に生まれた子供なのだが、番組ではダーンリー卿の肖像画が出てきた。女性に持てたというが、猿みたいな容貌の軽薄な男に見えた。実際にダーンリー卿はひどい男だったらしい。まさに美女と野獣。この男の血が現英王室にも流れているわけで、時々軽佻な人物が現れるのも、なるほどという感じ(?)。

 生後6日でスコットランド女王となったメアリーには、イングランドの王位継承権があった。メアリーはそのことを主張しただけでなく、エリザベス廃位の陰謀やダーンリー卿暗殺事件などに関与したとされるが、果たして彼女がどこまでそれらの事件に関与していたのか、いなかったのか、本当のところはわからないようだ。

 イングランド王位継承の問題(庶子とされたエリザベスよりもメアリーのほうが血統的には正統的)、宗教問題(プロテスタント対カトリック)などが絡んで、メアリー自身が生涯を通じて陰謀の渦中に置かれたのだった。番組では、メアリーにかかった暗殺関与の嫌疑について、捏造であった可能性を追及していた。

 メアリーが幽閉されていた間に刺した刺繍は手の込んだ、図案的にも興味深い、すばらしい作品だった。

 また、――忠臣の家に伝えられる――デスマスクの華麗な容貌を想わせる、静謐さ! 処刑時、首に3回も斧が入ったとはとても思えない、優しげな表情。何も知らなければ、平穏な人生を送り、あまり苦しまずに病死した人かと思ってしまっただろう。

 シューマンに『メアリー・スチュアート女王の詩 作品135』という作品がある。独訳されたメアリーのフランス語詩に曲をつけたものだとか。

 メアリーの詩を読んでいると、胸が潰れるようで……。以下は、『メアリー・スチュアート女王の詩 作品135』を紹介したサイト様へのリンク。

 また、児童文学作家アリソン・アトリーに『時の旅人』という歴史ファンタジーがあって、この作品はメアリー・スチュアート処刑の因となったバビントン事件に材をとっている。

時の旅人 (岩波少年文庫)
アリソン アトリー (著), Alison Uttley (原著), 松野 正子 (翻訳)
出版社: 岩波書店; 新版 (2000/11/17)

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