メアリー・スチュアートのデスマスク、刺繍
『BSアーカイブス HV特集▽城・王たちの物語 悲劇の女王メアリー・スチュアート』を観た。
メアリー・スチュアート[Mary Stuart,1542-1587]。これまでうまく理解できなかった英王室の血筋のことが呑み込めただけでなく、悪女のイメージしか抱けなかったメアリー・スチュアートのイメージが変わり、何だかファンにすらなってしまった。
メアリー・スチュアートにゆかりの深い傭兵の家系に生まれた若い女性が自身のルーツを探るという設定で、番組を通してスコットランドの自然、お城、イングランドとの確執、メアリーを物語るデスマスクや刺繍、エリザベス1世宛の率直で真摯な手紙を初めとする資料などに触れられたことから、スコットランドの風土と歴史、メアリー個人に対する親しみがもたらされたのだろうと思う。
どんな番組だったかというと、以下はNHKネットクラブからの引用。
「引用ここから」……
番組内容:
エリザベス1世に対抗してイングランドの王位を狙い、愛と陰謀の渦巻く中で波乱の生涯を送ったメアリー・スチュアートとエジンバラ城の物語。
詳細:
スコットランドの人々は「国家なき国民」と呼ばれている。英国の一地域に過ぎないにもかかわらず、アングロサクソンのイングランドとは、民族も風土も異なるケルト人の国として、独自の歴史と文化、精神を誇ってきた。その気骨を支えたのが、巨大な岩山の上にそそり立つエジンバラ城だ。エリザベス一世に対抗してイングランドの王位を狙い、愛と陰謀の渦巻く中で波乱の生涯を送ったメアリー・スチュワートとエジンバラ城の物語。
……「引用ここまで」
現英王室は、処女王エリザベス1世の血筋ではなく、エリザベス1世の暗殺に関与した廉で処刑されたメアリー・スチュアートの血筋だ。メアリーの息子ジェームズが、スコットランド、イングランド両王国の国王となる。イングランドとスコットランドは、1707年に合同してグレートブリテン王国となるまで、同一人の国王を戴く君主連合となったのだった。
ジェームズはメアリー・スチュアートとダーンリー卿の間に生まれた子供なのだが、番組ではダーンリー卿の肖像画が出てきた。女性に持てたというが、猿みたいな容貌の軽薄な男に見えた。実際にダーンリー卿はひどい男だったらしい。まさに美女と野獣。この男の血が現英王室にも流れているわけで、時々軽佻な人物が現れるのも、なるほどという感じ(?)。
生後6日でスコットランド女王となったメアリーには、イングランドの王位継承権があった。メアリーはそのことを主張しただけでなく、エリザベス廃位の陰謀やダーンリー卿暗殺事件などに関与したとされるが、果たして彼女がどこまでそれらの事件に関与していたのか、いなかったのか、本当のところはわからないようだ。
イングランド王位継承の問題(庶子とされたエリザベスよりもメアリーのほうが血統的には正統的)、宗教問題(プロテスタント対カトリック)などが絡んで、メアリー自身が生涯を通じて陰謀の渦中に置かれたのだった。番組では、メアリーにかかった暗殺関与の嫌疑について、捏造であった可能性を追及していた。
メアリーが幽閉されていた間に刺した刺繍は手の込んだ、図案的にも興味深い、すばらしい作品だった。
また、――忠臣の家に伝えられる――デスマスクの華麗な容貌を想わせる、静謐さ! 処刑時、首に3回も斧が入ったとはとても思えない、優しげな表情。何も知らなければ、平穏な人生を送り、あまり苦しまずに病死した人かと思ってしまっただろう。
シューマンに『メアリー・スチュアート女王の詩 作品135』という作品がある。独訳されたメアリーのフランス語詩に曲をつけたものだとか。
メアリーの詩を読んでいると、胸が潰れるようで……。以下は、『メアリー・スチュアート女王の詩 作品135』を紹介したサイト様へのリンク。
- メアリー・スチュアート女王の詩 作品135
http://a-babe.plala.jp/~jun-t/Schumann_Op135.htm
あそびの音楽館
http://a-babe.plala.jp/~jun-t/
また、児童文学作家アリソン・アトリーに『時の旅人』という歴史ファンタジーがあって、この作品はメアリー・スチュアート処刑の因となったバビントン事件に材をとっている。
時の旅人 (岩波少年文庫)
アリソン アトリー (著), Alison Uttley (原著), 松野 正子 (翻訳)
出版社: 岩波書店; 新版 (2000/11/17)
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 日本色がない無残な東京オリンピック、芥川賞、医学界(またもや鹿先生のYouTube動画が削除対象に)。(2021.07.20)
- 芸術の都ウィーンで開催中の展覧会「ジャパン・アンリミテッド」の実態が白日の下に晒され、外務省が公認撤回(2019.11.07)
- あいちトリエンナーレと同系のイベント「ジャパン・アンリミテッド」。ツイッターからの訴えが国会議員、外務省を動かす。(2019.10.30)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その17。同意企のイベントが、今度はオーストリアで。(2019.10.29)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その16。閉幕と疑われる統一教会の関与、今度は広島で。(2019.10.25)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- Mさん、お誕生日おめでとうございます(2023.11.07)
- 新型コロナはヘビ中毒で、レムデジビルはコブラの毒ですって? コロナパンデミックは宗教戦争ですって?(12日に追加あり、赤字)(2022.05.11)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- 姑から貰った謡本(この記事は書きかけです)(2022.03.15)
- クリスマスには、やはり新約聖書(2021.12.25)
「児童文学」カテゴリの記事
- (29日に加筆あり、赤字。夜になって再度の加筆、マゼンタ字)エッセーブログ「The Essays of Maki Naotsuka」に49、50―アストリッド・リンドグレーン(2)(3)―をアップしました(2021.10.29)
- Kindle版電子書籍『枕許からのレポート』、『結婚という不可逆的な現象』をお買い上げいただき、ありがとうございます!(2021.01.04)
- 8 本目のYouTube動画「風の女王」をアップしました。ビデオ・エディターの不具合で AviUtl へ。(2020.06.30)
- 6本目のYouTube動画『ぬけ出した木馬(後編)』をアップ。さわやかな美味しさ、モロゾフの「瀬戸内レモンのプリン」。(追記、青文字)(2020.06.20)
- 4本目の文学動画『卵の正体(後編)』を作成、アップしました。動画作成のあれこれ。(2020.06.11)
「歴史」カテゴリの記事
- 本日――令和6年4月13日、右も左もない国民運動として「パンデミック条約 国際保健規則改定反対集会」及び池袋デモ行進が行われました(2024.04.13)
- パレスチナ・イスラエル戦争。ロスチャに握られた原発と水道。ユーチューバーによる3年前のガザ観光動画。(2023.10.25)
- ついにわかりました! いや、憶測にすぎないことではありますが……(祐徳院三代庵主の痕跡を求めて)(2023.07.04)
- 皆既月食の最中です(2022.11.08)
- 終戦の日(2022.08.15)
「文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事
- ついにわかりました! いや、憶測にすぎないことではありますが……(祐徳院三代庵主の痕跡を求めて)(2023.07.04)
- 第29回三田文學新人賞 受賞作鳥山まこと「あるもの」、第39回織田作之助青春賞 受賞作「浴雨」を読んで (2023.05.18)
- 神秘主義をテーマとしていたはずのツイッターでのやりとりが、難問(?)に答える羽目になりました(2022.06.22)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- モンタニエ博士の「水は情報を記憶する」という研究内容から連想したブラヴァツキー夫人の文章(2022.02.20)
「テレビ」カテゴリの記事
- Mさん、お誕生日おめでとうございます(2023.11.07)
- すばらしかった安倍元総理の国葬 ①立派だった昭恵夫人、尽きせぬ想いが伝わる菅前総理の弔辞、皇族の方々の気品、精神美と様式美が溶け合った圧巻の儀仗隊、老舗ムラヤマの心憎いばかりの演出(2022.10.02)
- 安倍元首相は、日本の今後をどう案じていたのか? (2022.07.25)
- 日本をこよなく愛した安倍晋三元総理のご冥福をお祈りします。在りし日のピアノ演奏を聴きながら。(2022.07.10)
- プーチン大統領の軍事行動とウクライナの生物兵器研究所(2022.02.27)