瀕死の児童文学界 ⑦河合隼雄についてググってみると……
河合隼雄についてググれば、色々と出てくる。
特に目を引いたのは、教育界への影響として「心のノート」問題。精神医学界への影響として「臨床心理士」資格問題。
わたしは心のノートなるものの存在すら知らなかったが、Wikipediaによると、
「心のノート・こころのノートは日本の文部科学省が2002年(平成12年)4月、全国の小・中学校に無償配布した道徳の副教材である」という。河合隼雄を中心として制作されたとのこと。
この心のノートに異議を唱える教育関係者はかなりの数に上るのか、反対運動に膨れ上がったりしているようだ。民主政権下で廃止が求められたりもしたようだから、今頃知るのは、亀すぎると思われても仕方がない。反対派の理由も、一律とはいかないのかもしれない。
臨床心理士の資格整備に貢献したのは河合隼雄らしいが、この資格に異議を唱える精神科医も少なくないようだ。
4年前に、わたしが副甲状腺腫の精査のために入院したとき、同室だった女性の娘さんが大学院に社会人枠で入学し、臨床心理士の資格を取得したといっていた。
カウンセラーとしての悩みなど話してくれたが、わたしは最初、大学院とは医学部の博士課程のことをいっているのかしら、と思い、訊くと彼女は医学部ではないという。
色々と話しているうちに、臨床心理士とは精神科医の補助的役割を果たす人ということがわかったものの、精神科医と同じ資格を持った助手とは違い、看護師とも違うとなると、医師とも看護師とも違う一種独特のステータスを感じさせる彼女たちの出自が呑み込めないというか、彼女たちは一体どこから涌いて出るのだろうと不思議だった。
今頃になって、臨床心理士がどうつくられ、どう活動しているのかがわかった次第。
河合隼雄は教育界、精神医学界――そして、あまり顧みられず、軽んじられることすらあっただけに、ナイーヴな聖域でありえたともいえる児童文学界にも多大な影響を及ぼした、日本人の精神をある時期意のままにした怪物的存在であったことは間違いない。
河合隼雄のおかしさに言及している専門家の記事も、ググると複数出てくる。例えば、ユング『ヨブへの答え』の訳者である林道義は、ホームページで、河合隼雄の方法論的な誤りを指摘している。
林道義はWikipediaによると、経済学者、心理学研究者、評論家、日本ユング研究会会長だそうだ。
作家で河合隼雄と関係の深かった人物を挙げると、村上春樹、小川洋子、吉本ばなな、梨木香歩……なるほど、という感じだ。
いずれも、物語をつくることへの独特のこだわりを感じさせ、人物の描き方に共通した特徴がある。
ところで、わたしはつい最近書いた短編で、素材を生かしたいあまり、物語をつくることに熱中しすぎた。
その結果、登場人物の描き方や動かし方に作為性が目立ち、自分では考えもしなかった問題提起をしてしまい、しかも物語性の重視や細部へのこだわりという、自身の創作欲の流れに押し流されるかのように、その軽くはないはずの問題提起を見過ごしてしまっていたのだった。
河合隼雄の影響を受けた作家たちには、同じ傾向がある気がする。彼らは文章を書くにも美意識と趣味性が強く働き、物語づくりも巧みであるだけに、登場人物に関するひずみや自身の意図しないところで発生する問題もまた、大きくなるのかもしれない。
彼らはなぜそこまで、物語ることにとり憑かれているのか? 河合隼雄の鼓舞があったに違いない。
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