評論『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち』の値段を考える
評論『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち』は現在、パブーで電子書籍化の作業中ですが、わたしはこれの値段を考えていました。無料、300円、400円と考えた末に、頭の中から、ふいに600円という高値(?)が飛び出しました。
電子書籍は安く作れ、安く買えるのが魅力のようですが、当方、既に単行本になり、文庫になり、さらに美味しい電子書籍――という恵まれた御仁とは置かれた状況が全く異なるのです。
相場からすると、相当に高い気がしますが、安くしたからといって、おそらく売れはしないでしょう。作品保護――あちこちで公開しておきながら今更作品の保護もへったくれもないという気がしないでもありませんが――という観点、プロ作家の宣伝しかしない御用評論家ばかりの評論が目につく中での当作品の価値という観点から考えると、600円が妥当という結論に至った次第です。
1,800円で売れていても、実際の価値からすればせいぜい180円とか、それどころかマイナス相当な額にのぼる――被害者も加害者も自覚はないでしょうが――損害を被ることすらあると思われる、頭や心に有害な商品がごまんと流通している出版の実態、また自国の作家の作品をまともに批評できる評論家がいない、という憂うべき日本社会の現状からすれば、自作といえど、価値が高まるのを感じざるをえません。
プロでない、というのは、実力がないからプロでないとは、いいきれません。これは単に現今の商業的力学、権力構造の外にいる、あるいはそこから弾き出されているということを意味しているだけの話であって、現状は上に書いた通りですから、むしろ物書きとしての良心があるからこそ、自ら外にいる物書きも今の日本には多いのではないかと想像できるわけです。
歴史エッセー『卑弥呼をめぐる私的考察』は、古代史の研究には神秘主義的センスが必要ではないかという貴重な問題提起を行ったことから考えて、400円。その他の作品には、300円か無料という値段をつけることになりそうです(まあ電子書籍化の作業に挫けて、本作りごっこ、お店ごっこに終わる予感も幾ばくかはあり)。
評論『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち』は、ホームページ「バルザックの女弟子になりたい!」「マダムN図書館」、当ブログ、ブログ「マダムNのエッセー」、会員登録している「作品発表広場」(当作品はわたしの紹介ページから削除しました)で公開していました。
作品の公開時点では、村上春樹に対する河合隼雄の影響をあまり考えていなかったのですが、その後、児童文学に関する研究を行うようになった中で、重視しないわけにはいかないという考えに変わりました。電子本『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち』では、そのことに触れていますので、以下にご紹介しておきます。
近日公開予定の電子本『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち』の《あとがき》から。
[引用ここから]…
当作品は、村上春樹がノーベル文学賞候補として囁かれ、村上春樹現象、村上春樹産業とも呼べるようなブームがとめどもなく膨れ上がることを日本中が期待しているかのようだった2009年に執筆したものでした。文芸同人雑誌『日田文学 57号』(編集人・江川義人、発行人・河津武俊、2009年5月)に掲載していただいたものですが、若干の加筆・訂正を行っています。400字詰原稿用紙換算枚数で96枚です。作品の冒頭で、わたしは拙ブログ「マダムNの覚書」に公開中の小論『村上春樹「ノルウェイの森」の薄気味の悪さ』の2006年から2009年まで続いているブログでのヒットに驚いているわけですが、このあとがきを書いている現時点――2012年4月――でも依然として、『村上春樹「ノルウェイの森」の薄気味の悪さ』は異常なアクセス数を誇っています。ただこれには、名もない、あまり宣伝もしていない個人のブログにしては……という但し書きをつけなくてはなりませんが。
ところで、わたしは比較的最近になって、児童文学に関する研究を行うようになりました。その中で、心理学者、元文化庁長官であった河合隼雄の村上春樹に対する影響を考えないわけにはいかなくなりました。河合の影響は、村上春樹、小川洋子、吉本ばなな、梨木香歩といった作家たちに強く及んでいるばかりか、精神医療、教育、児童文学――ファンタジー――への影響の大きさ、また雇用の創出力という点においても、河合には一専門家とか一文化人という言葉では括ることのできない桁外れなところがあると感じさせられました。
河合のことを調べていて特に注意を惹かれたのは、教育界への影響として「心のノート」問題、精神医学界への影響として「臨床心理士」資格問題でした。調べれば調べるほど、河合隼雄にはおかしいと感じる点が出てくるのですが、それにもかかわらず――いや、それだからこそ、というべきでしょうか――河合が日本人の精神をある時期、意のままにした怪物的存在であったことは間違いありません。
河合隼雄についても、いつか書かなければならないと考えています。…[引用ここまで]
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