詩人、行織沢子の死 ②身の置き処がない
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- 詩人、行織沢子の死 ②身の置き処がない
詩人と呼んでいた女友達が亡くなり、これで、わたしが思想面、芸術面で強い影響を受けた人々が全員あちら側へ行ってしまった。
空気が急に痩せ、貧弱になった気がする。
彼女のお父様が「今はまだ混乱していて頭が真っ白」とおっしゃっていたが、わたしの頭も真っ白で、目を閉じてもまぶしくて眠れない。身の置き処がない。灼ける砂漠にでもいるみたいだ。
彼女はミューズの息吹を感じさせる、まれな人物だった。
彼女がいなくなったので、作品が出来上がっても、本当の意味で読んでくれる人がいなくなった。
あんな風に、爽やかな言葉で、核心を衝ける人なんか他にいない。
もう新しい季節が来ても、本当のその季節はわたしには来ない。「春らしくなりました」「暑くなったわね」「秋を感じますよね」「冬をどうお過ごしですか」などと何気ないことをいって、一緒にその季節の光に想いを馳せる人がいなくなったから。
こんなに早く亡くなるとは、思いもしなかった。75歳くらいになった彼女を想像できるくらいだったのに。
息子は彼女の詩が好きなので、電話で話した。
娘はわたしと一緒に彼女と会ったことがあり、彼女の目はバルザックのような、何もかも透視されるような目だと敬服し、もう一度会いたがっていた。彼女の死が信じられないようだ。
夫は、同じ文芸部だったから彼女を知っている。
家族が幾分かずつでも訃報を共有してくれたので、ありがたかった。何だか破裂しそう。
心は砂袋になったみたいだ。なぜか、彼女の好きなウェッジウッドの紅茶を思い出し、泣けてきた。
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