またまたミューズが……
最近起きたあれこれで、げっそりし、正直なところ、あと1年くらいは何も書けないかもしれないと思っていた。
それなのに、もう寝ようかというこんな時間になって、またまた、まばゆい小鳥のようにインスピレーションが舞い降りてきた。
美酒を飲んだように、幸福な気持ちになり、わたしの半分はこの世の冷たさ、不合理さ、趣味の悪さ(?)に打ちのめされているのに、もう半分は何の影響も受けずに彼の世の浄福に浸っているという塩梅。
確か、シモーヌ・ヴェイユに、これに近い境地――彼女の場合はもっと高い境地だろう――が、適切でありながら詩的に表現された文章があったと思う(あとで探して引用しておきたい)。
この世的な幸運や幸福に浸っているときは、どこか膨満感を覚えるのに、この世的には灰色な気持ちでいっぱいのそんなときに決まって、純度の高い、えもいわれぬ境地が訪れる。そこへ、更なる高みから、まばゆい小鳥のようにインスピレーションが舞い降りてくるのだ。
そのインスピレーションには、何かしら宇宙の法則に関係した秘密が含まれているかのようだ。暗示として受けとれるだけなので、それをかたちにするのは難しい。
だが、苦労してこの世の歪な作品として仕上がった暁には、その秘密が行間に住処を見つけてくれているに違いない。森に棲む栗鼠のように。行間が見えない木々となり、そこに見えない秘密が棲みつくのだ。
わたしが表現するには難しいことを、子供向きの短いお話にどんなかたちで置けばいいのだろう? わくわくしながら考える。
興奮して眠れなくなった。つい1時間前までは、疲れ果てた老婆になったみたいで、わたしもついに鬱病になるかもしれないと考えたくらいなのに。
幸福の甘い果汁で、口の中がいっぱいだ。創作の習慣がついていて、どんな失意のときも作品のことを考えることが幸いするのだろう。
こんなに満たされていながら、この上に望むものは何もないと今は思う。だが、この魔法がとけると、またしても、恒久な秩序に欠ける人間社会の不安定に恐怖を覚えたり、生活の不安を覚えたりして、この世的なものがいろいろとほしくなるに違いない(それはそれで生きるためには必要なことだが、創作とは無関係でありたい)。
今はそんなこと、笑いたくなるくらいなのだけれど。別の秩序だった世界のあまやかな空気を吸っているために。
インスピレーションのもたらした魔法は寝たらとけてしまうだろうが、もう今夜は寝なくちゃ。
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