シネマ『ブリューゲルの動く絵』を観て 追記:アントワープにほのかに薫るマグダラのマリア
- 2012年1月30日 (月)
シネマ『ブリューゲルの動く絵』を観て
https://elder.tea-nifty.com/blog/2012/01/post-5486.html
以下の文章は、上の記事の追記ですが、これは児童文学作品『不思議な接着剤』を書くための資料として必要な私的メモです。
『不思議な接着剤』の下調べの段階で遭遇してしまった中世の異端問題に端を発し、グノーシス、原始キリスト教と辿るうちに行き着いたマグダラのマリアとペトロの対立や、イエスと関係があったと思われるエッセネ派について調べるはめに陥りました。
マグダラのマリアとペトロの対立については、1世紀後半か2世紀前半にシリアかエジプトで書かれたと推定される正典外のキリスト教文書『マリアによる福音書』にその生々しい描写があります。
また、イエスと何らかの関係があったと思われるエッセネ派については、37年から100年頃のユダヤの歴史家フラウィウス・ヨセフス『ユダヤ戦記』に詳しい記述があります。
H・P・ブラヴァツキーは『アイシス・アンヴェイルド』の中で、エッセネ派というのはピュタゴラス派で、死海の畔に居を構えていた仏教徒(プルニウス『博物誌』)の影響を受け、その影響によって思想体系が完成されたというよりも、むしろ崩れていったと述べています〔青のライン以下に、カテゴリー「Notes:不思議な接着剤」から関連記事へのリンクを折り畳んでおきます。創作メモなので、まとまりには欠けますが〕。
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ところで、アントウェルペンすなわちアントワープ(ベルギー第二の都市)は、フランス最初の王朝、メロヴィング朝が築かれたところだった。
以下はウィキペディアより引用。
“アントウェルペンには大きな正統派ユダヤ人(ハシディズム)のコミュニティがあり、そこから「西のイェルサレム」との綽名がある。”
“歴史上アントウェルペンはガロ・ローマ文明の集落にその起源があると考えられる。スヘルデ川付近における最古の集落がある地域で1952年から1961年にかけて発掘が行われ、2世紀半ばから3世紀末の陶器や杯の破片が出土している。その後、ゲルマン人のフランク族が進出した。メロヴィング朝期においてアントウェルペンに砦が築かれ、7世紀頃に聖アマンドゥスによってキリスト教化された。”
イエスとマグダラのマリアの子供の子孫がフランク族の王族のある者と結ばれてメロヴィング朝を創始したという伝説は、レンヌ=ル=シャトーに関係した伝説で、レンヌ=ル=シャトーは南フランスのラングドック地方にある村である。
ラングドックは、カタリ派が繁栄したところだ。
12世紀のラングドックにも、16世紀のアントウェルペンにも、ユダヤ人は多く住んでいた。そして、経済的にも文化的にもコスモポリタン的なムードを伴って、大繁栄を遂げていた。
カトリックが徹底した弾圧を加えるまでは――である。
中世の異端狩りが行われた地にはその後、プロテスタントが生まれたといわれる。
結局、ブリューゲルに関する映画を観ても、マグダラのマリアのテーマに辿り着く。
それはそうと、『レンヌ=ル=シャトーの謎――イエスの血脈と聖杯伝説――』(マイケル・ベイジェント&リチャード・リー&ヘンリー・リンカーン著、林和彦訳、柏書房、1997年)は読みやすくて、分厚い本である。内容はよく整理され体系づけられているのだが、歴史的・地理的な教養に欠けるわたしにとってはあたかも情報の洪水のように感じられるほどであるため、きちんと読みこなせているとはいえない。
で、《1996年版のあとがき》にカタリ派に関する注目すべきことが書かれているのを見逃していた。これはカタリ派に関するわたしの考えを裏づけてくれる貴重な情報であるので、以下に抜き書きしておきたい。493-94頁(三)より。
“ ユリ・ストヤノフは、著書『ヨーロッパ異端の源流』の調査中に尋常でない刺激的な文書を入手した。この文書は、とくにラングドッグ地方のカタリ派思想について詳しく解説したものである。この文書はおそらく司祭のカトリック作家が編纂したもので、彼はカタリ派の上層部に入りこみ、新入会員の教育の場に出席した。この場で、危険な秘密が将来の「完徳者」に伝授されたらしい。この文書からユリ・ストヤノフは、カタリ派ではイエスとマグダラがまさに結婚していたことが、ひそかに教えられていることを発見した(Stoyanov,Y., The hidden Tradition in Europe, London, 1994, pp 223-23)。
彼の著作や私たちとの会話によれば、ユリ・ストヤノフはカタリ派がイエスとマグダラが結婚していたことにこだわっていると強調している。彼によれば、一般にはカタリ派思想の発祥の地と考えられている東欧からやってきた二元論的な「異端」のボゴミール派には、このような考え方は存在しない。これはカタリ派はボゴミール派から派生したのではなく、ピレネー山脈や南フランス地域土着のものであるという私たちの結論を支持している。マグダラがイエスの子どもを連れてこの地域のユダヤ人共同体に避難したとすれば、その状況についての知識が何世紀にもわたって伝えられ、カタリ派の伝承にまで継承されていったものと考えられる。しかし、このような知識は、神学的な新条は同じでも東欧出身のボゴミール派には伝わらなかったのだろう。十字軍は東洋と西洋を接触させ、これによって両者に新たな展開をもたらした。このときカタリ派とボゴミール派の教えが一体化しはじめた。ボゴミール派は、このときはじめてカタリ派が受け継いできた伝承を知るようになったものと思われる。”
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46
太陽神の権化イエス?/『レンヌ=ル=シャトーの謎』を読む①
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/03/notes-1.html
48
童話の舞台、中世風の町を考える/『レンヌ・ル・シャトーの謎』を読む②
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/03/notes-2.html
49
バラバラでなかった歓び/『レンヌ・ル・シャトーの謎』を読む③
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/03/post-ee50.html
50
マグダラのマリアに育てられた男の子
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/04/notes50-2ea0.html
51
二つの嵐とマグダラのマリアの安否
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/04/notes51-7d04.html
53
『ル=レンヌ=シャトーの謎』が描くイエスの出自と結婚
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/04/notes53-86ff.html
54
ヨセフスの『ユダヤ戦記』『ユダヤ古代誌』
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/05/notes54-0c7b.html
56
ラビ。エッセネびと。大祭司制。
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/05/notes.html
57
つながった! 見えた!
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/05/post-8489.html
61
『マリアによる福音書』を造形化する試み/ブラヴァツキーの用語解説によるカバラ、フィロン、ヨセフス
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/07/notes61-7b54.html
62
『黄金伝説』から推理するマグダラのマリアの二つの運命 /ヨセフスの描くモーセ
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/09/post-caf9.html
71
グノーシス文書の地位回復
https://elder.tea-nifty.com/blog/2011/03/post-c89c.html
73
エッセネ派
https://elder.tea-nifty.com/blog/2011/03/post-0ace-1.html
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