戯れにググってみたら ③風と光が薫る熊沢正子さんの3冊の本
図書館から、熊沢正子さんの著書3冊『チャリンコ族はいそがない』(山と渓谷社、1988年)、『チャリンコ族はやめられない』(山海堂、1993年)、『チャリンコ族は丘を越える 台湾・ヨーロッパ・韓国紀行』(山と渓谷社、1996年)を借りてきて、読んでいるところです。
「前登志夫の文芸ノート『詩』」(学研・高3コース)で印象に残っていた詩の作者・熊沢正子さんと、3冊の本の著者・熊沢正子さんは同じ人に違いないという結論に達しました。
「前登志夫の文芸ノート『詩』」で入選した詩の作者名と高校名はわかります。本からは著者が高校時代から慣れ親しまれたというJR駅名がわかりました。高校名と駅名は共通しており、生年から見ても、間違いないと確信しました。
何より詩と紀行から受ける印象に共通点がありました。思いがけず、高校時代に熊沢さんの詩のファンだったわたしは、成人後のご著書を通して、その生きかたに触れるという僥倖に恵まれたというわけでした。
すっかり黄ばんでしまった「前登志夫の文芸ノート『詩』」の切り抜きを、すっかりおばさんになったわたしが今も時々とり出して読みたくなるのは、熊沢さんの詩があるからでした。熊沢さんの詩には、生きる勇気と真摯さを思い出させてくれる力がありました。
同じみずみずしさが、前掲の3冊の本にはこぼれんばかりです。
自転車旅行の醍醐味だけでなく、著者の生きる上での葛藤や試行錯誤のさまが率直に描かれていることに胸を打たれます。少年のような一途さ、おおどかといってよいスケールの大きさの陰に、ナイーヴや細心さなども感じられて、著者の人間的な魅力に惹かれずにはいられません。
個人的には、上の本の南フランス、特にカルカソンヌの町の描写に胸がときめきました。夫の退職後に待っていた期待外れな出来事が相次ぎ、諦めた海外旅行。子供たちとの海外旅行が実現していたとしても、行けたかどうかはわかりませんが、わたしが一番行きたいと思ったのはまさにカルカソンヌでした。
児童文学作品『不思議な接着剤』の続きを書くためです。そうか。体力的に自転車で……というのは無理でも、諦めてしまうことはないと思いました。
『チャリンコ族は丘を越える 台湾・ヨーロッパ・韓国紀行』が出てから16年。熊沢さんは編集者に戻られたのか、農業をなさっているのか……狭い世界で生きているわたしには見当もつきませんが、中学時代から児童文学作家になりたかった、アーサー=ランサムが好きだった――と熊沢さんのご著書にありました。
中学時代から児童文学作家になりたかったという、自分とのそんな共通点にも胸がときめきます。それでいて、高校時代には詩にも熱中していらっしゃったのですよね?
熊沢さんなら、すばらしい児童文学作品がお書きになれるはず……。作品の舞台によいようなところへも、沢山行かれたのではないでしょうか。現在、熊沢さんは児童文学作品を執筆なさっているのかもしれないと想像すると、またしても胸がときめくのを覚えるのです。
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