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2011年12月 8日 (木)

クリスマスにおすすめの本 2011

 美味しそうな、1本のにんじん。
 食物を探しにくい雪の日に登場する動物たち。
 彼らの友人を思う気持ちと行動が円環をつくり出します。
 動物たちはリアルで可愛らしく、彼らの部屋の中をのぞける楽しさも味わえますよ。
 平仮名の読めるお子さんであれば、自分で読めるでしょう。

 グリーン・ノウ物語は全6巻ですが、各巻が独立した作品として読めるようになっています。
 そのなかの第1巻『グリーン・ノウの子どもたち』は、クリスマスに読むにはぴったりの作品です。作者であるボストン夫人の息子さんが手がけた挿絵も、凝った典雅な趣のあるもので、贈り物にもいいでしょうね。

 大おばあさんの元へ休みを過ごすために出かけた、寄宿舎に入っている孤独な少年。
 母親は亡くなっており、父親は再婚していて、少年は二度目のおかあさんにうちとけることができませんでした。
 そんな暗い事情が読者に明かされる、汽車のなかの場面から始まるのですが、古い城のような家に住む大おばあさんと少年が顔を合わせる場面の一部分をご紹介してみましょうか。

“へやには、たくさんのガラスのろうそく立てに、ろうそくがいっぱいともされていた。そして大おばあさんがトーズランドに手をさしだしたとき、指輪にもろうそくの光がうつった。「とうとう、かえってきたわね!」
 大おばあさんは、少年が前にすすむと、ほほえんでいった。”

 大おばあさんと一緒だと、少年は屈託なくて、雪の香りもよいものだと感じさせます。
 そして、大おばあさんの家での暮らしは幻想と古い歴史が織り合わった、謎と奇怪さと美にみちたものでした。
 さて、少年はどんなクリスマスを迎えるでしょうか?

シュティフター
岩波書店
発売日:1993-11-16
 作者の哲学的強度を感じさせる作品4編を収めた、まるで宝石箱のような短編集。
 最初の作品『水晶』を、わたしは子供の頃に児童文学全集で読みました。

 大自然のふところで生きる村人たち。
 クリスマスの祝祭のリポートから作品が始まります。
 ネタバレでいってしまうと、これは二人の子供の遭難と救出の物語なのです。
 兄の言葉に従うときの妹の「そうよ、コンラート」という口癖が、作品を読み終えても長く耳について離れません。

 大人になってもそうだったので、岩波文庫に『水晶』入りのシュティフターの本を見つけたときは嬉しかったです。
 岩波文庫には他に『森の小道・二人の姉妹』、ちくま文庫には長編『晩夏』が入っています。

マービン マイヤー,エスター・A. デ・ブール
日経ナショナル ジオグラフィック社
発売日:2006-11-30

 マグダラのマリアをめぐる古文書からの断章集。
 キリスト教の素顔に迫る原典の紹介に、一般人にもわかりやすい解説が添えられています。
 初期キリスト教のエッセンスを集め、マグダラのマリアと名づけた香水のよう。
 クリスマスの意味合いを一変させるほどの衝撃的かつ格調高い内容を秘めた著作です。

 表紙絵と日本語のタイトルが内容と合っていない気もしますが、
原題はThe Gospels of Mary(マリアの福音書)。

2010版はこちら⇒https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/12/post-79b5.html

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