創作の近況。中学生におすすめしたいトンケ・ドラフト『王への手紙(上・下)』(岩波少年文庫)。
数日、ブログを更新できませんでしたが、元気です。
さて、児童文学作品S。
……賞応募を始めてから、ブログが何やら暗号含みの怪しいものになってきました。
Sを眠らせておくのはもったいないので、どこかへ持ち込みたいと思いましたが、持ち込める児童文学の出版社はぐっと減っている模様。7~8年前はもっと沢山ありました。その頃、児童文学にとり組んでいればよかったわ……と今さら後悔しても後の祭りです。
そうしようと思い、持ち込めるところが何社あるか、リサーチまでしておきながら、「日田文学」からお誘いを受けたこともあって、また大人の純文学に戻ってしまったのでした。
現在ホームページで持ち込み可と明記してある児童文学の出版社はわたしがリサーチした限りでは2社で、いずれも郵送のみ可となっています。
ネット散策してわかったところでは、そのうちの1社は2週間で印刷された断り状が届き、もう1社は梨の礫というのが普通らしい、ということです。
さあどうしますかね、眠りの森のSを。断り状の出版社、梨の礫の出版社の順に送ってみることにしました。その間にもう1社、電話をかけて、見ていただけるということであれば、送ってみたい出版社があります(が、ここは到底……)。
で、ここ数日、原稿の見直しと添え状を書くのに時間が費えたというわけでした。
Sにぴったりの賞が見つからず、眠らせておくしかないとなると、送ってみるのもいいかなと思ったのですね。とはいえ、断り状や梨の礫って、結構痛いに違いありません。こんなものだとわかっていても、どうしたって痛く感じられるはず。ガマの油みたいなものでも何でもいいから、落選とか断り状とかでできた傷に効く塗り薬でもあればね。
でもね、こんな風に作品を見直してしっかりとしたものにし、添え状なども残しておけば、後になって遺族が本を出してくれようとする場合なんかにも役立つのではないでしょうか? 冗談ではなく、本気でそこまで考えてやっております、ええ、ホント。
リサーチしていてわかりましたが、満身創痍で純粋に賞応募や持ち込みに頑張っていらっしゃる書き手は多いですね。もしそういうかたが当ブログをご訪問くださったとしたら、左サイドバーにゲストブックを設置しておりますので、自作の宣伝などにご利用ください。
このゲストブック、設置以来閑散としておりますが、創作以外にも、ご自身のアピールや情報交換の場として広くご利用いただければと思っています。
児童文学作品Yは、文体の決定がまだです。そこのところで、作業がとまっております。本格始動は来月に入ってからでいいと呑気に構えているところがあります。どのみち間に合わない気がしていて、別の賞に応募してもいいと思っているのです。
文体研究のために、翻訳もすばらしいオランダの女性作家トンケ・ドラフト『王への手紙』を読み、感服。最近、読書感想文という検索ワードで当ブログをご訪問になるかたも多いので、中学生におすすめしたいです。イギリスの女性作家ローズマリ・サトクリフ『第九軍団のワシ』は読んでいる最中ですが、これも中学生におすすめしたい本です。大人が読んでも、すごく面白いですよ。
岩波少年文庫のコーナーには、書店に出かけたときは必ず行くので、背表紙だけは見ていたのですが、手にとったことはありませんでした。どちらも男性と思っていました。ローズマリ・サトクリフのほうは、背表紙にフルネームがあれば女性とわかったでしょうが、「サトクリフ作」とあるだけでしたので、てっきり。尤も、内容からしても、男性作家の手になると思い込むほうが自然なくらいではあります。
サトクリフの作品は、筋金入りの歴史小説です。『第九軍団のワシ』は、サトクリフのローマン・ブリテン4部作として知られるうちの1作だそうです。時代考証のしっかりした、骨太の歴史小説だと思います。「訳者のことば」に「イギリスでは、『第九軍団のワシ』は、子どものための作品の書き方のモデルとされているそうです」とあります。
歴史小説としての風格を漂わて、サトクリフの作風はマッチョな感じがあります。それに比べると、トンケ・ドラフトの作風には優しみがあります。
実は今、ドラフトとサトクリフの作品を、図書館から根こそぎ借りてきています。どちらも図書館に多めに置かれているとはいえ、子供の本をいつまでも独占しているわけにはいかないので、今後の勉強のためにも、ドラフトの作品は購入することにしました。今、うちはお金がないけれど、1人のときはおなかが空かないので1日1食だし、他に倹約もしているので、許されるかなと。
ドラフトの無駄が一切ない筋運び、簡潔な文体(翻訳文)。そうした特徴を備えた上でなお潤いを感じさせる作品というのは、少ないと思います。『王への手紙』は架空の国々を舞台とする冒険小説ですが、主人公である見習い騎士ティウリの高潔さ、立ち居振る舞いの清々しさには、騎士道精神とはこんな風なものなのか……と感じさせるものがあります。
しかし、騎士道といえば、わたしはどうしても中世南仏のトゥルバドゥール(吟遊詩人)を、またトゥルバドゥールと同じ時代、同じ土壌で生まれたカタリ派のことを連想してしまいます。
『王への手紙(下)」の「訳者あとがき」によると、オランダには「石筆賞」という児童文学の重要な賞があるそうです。2004年に「石筆賞の中の石筆賞」(過去50年間で第1位の作品)が選ばれ、「王への手紙」がその賞を受賞したのだとか。それにふさわしい作品だと思いました。過去記事で触れた『ジーンズの少年十字軍』を著わしたテア・ベックマンも、オランダの作家でした。
オランダやイギリスの子供たちは、優れた児童文学作家を持って幸せですね。どれだけリサーチしてみたところで、わが国にトンケ・ドラフトのような作家は見つかりません。日本の出版界には優れた作家を生み出そうという気概も感じられず、われわれ作家の卵は耐えるのみの現状です。
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