トーマス・トランストロンメル『悲しみのゴンドラ』を読んでいるところ。
昨日ノーベル文学賞に決定したトーマス・トランストロンメルの訳詩集『悲しみのゴンドラ』を、夫に図書館から借りてきて貰って読んでいるところ。
神話、伝説、歴史、時事問題などから拾われた言葉と日常的なありきたりの言葉が同じ強度で並び、どれもが象徴的に響く。選びぬかれた石ばかりをはめこまれた石畳を歩いているような感じがする。その石たちは、石であるにも拘らず(言葉であるにも拘らず)、重責を担っているように感じられる。
言葉たちは宇宙を志向しているかのようにイメージをひろげるが、自律していて、節度を持っている。その節度が甘美である。だいたい優れた詩というものは皆そうだが。
分野は異なるが、比較的最近ノーベル文学賞を受賞した作家クレジオとパムクを連想した。純度の高さという点ではクレジオを(しかし透明な印象のクレジオに対し、トランストロンメルは密な印象である)、絵画的で万華鏡のようなという点では「わたしの名は紅」のパムクを連想した(パムクの「紅」はテーマ的集約に欠け、中途半端な印象に終わったところが惜しかったと思う。どこか嗜好的で、もう一つ芸術作品にはなりきれないところがパムクの作品にはある)。
引用してこまかく見ていきたいところだが、思潮社のホームページを閲覧したところでは現在重版中であるようなので、やめておく。
当ブログにおける関連記事
- 2011年10月 6日 (木)
ノーベル文学賞は、スウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメル氏
https://elder.tea-nifty.com/blog/2011/10/post-7aec.html - 2009年6月 6日 (土)
評論『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち』
https://elder.tea-nifty.com/blog/2009/06/post-40a4.html
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 日本色がない無残な東京オリンピック、芥川賞、医学界(またもや鹿先生のYouTube動画が削除対象に)。(2021.07.20)
- 芸術の都ウィーンで開催中の展覧会「ジャパン・アンリミテッド」の実態が白日の下に晒され、外務省が公認撤回(2019.11.07)
- あいちトリエンナーレと同系のイベント「ジャパン・アンリミテッド」。ツイッターからの訴えが国会議員、外務省を動かす。(2019.10.30)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その17。同意企のイベントが、今度はオーストリアで。(2019.10.29)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その16。閉幕と疑われる統一教会の関与、今度は広島で。(2019.10.25)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- Mさん、お誕生日おめでとうございます(2023.11.07)
- 新型コロナはヘビ中毒で、レムデジビルはコブラの毒ですって? コロナパンデミックは宗教戦争ですって?(12日に追加あり、赤字)(2022.05.11)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- 姑から貰った謡本(この記事は書きかけです)(2022.03.15)
- クリスマスには、やはり新約聖書(2021.12.25)
「評論・文学論」カテゴリの記事
- (再掲)イルミナティ創立者ヴァイスハウプトのこけおどしの哲学講義(2020.10.17)
- 中共によって無残に改竄された、「ヨハネによる福音書」のイエス(2020.09.29)
- 「原子の無限の分割性」とブラヴァツキー夫人は言う(2020.09.15)
- 大田俊寛『オウム真理教の精神史』から抜け落ちている日本人の宗教観(この記事は書きかけです)(2020.08.28)
- 大田俊寛氏はオウム真理教の御用作家なのか?(8月21日に加筆あり、赤字)(2020.08.20)
「文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事
- ついにわかりました! いや、憶測にすぎないことではありますが……(祐徳院三代庵主の痕跡を求めて)(2023.07.04)
- 第29回三田文學新人賞 受賞作鳥山まこと「あるもの」、第39回織田作之助青春賞 受賞作「浴雨」を読んで (2023.05.18)
- 神秘主義をテーマとしていたはずのツイッターでのやりとりが、難問(?)に答える羽目になりました(2022.06.22)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- モンタニエ博士の「水は情報を記憶する」という研究内容から連想したブラヴァツキー夫人の文章(2022.02.20)
「詩」カテゴリの記事
- 高校の統合で校歌が70年前のものに戻っていたので、作詞者と作曲者について調べてみました(夕方、数箇所の訂正あり)(2021.02.08)
- 堀口大學の訳詩から5編紹介。お友達も一緒に海へ(リヴリー)。(2017.08.29)
- 20世紀前半のイタリアで神智学・アントロポゾフィー運動。ガブリエラ・ミストラル。ジブラン。(加筆あり)(2016.06.09)
- 神智学の影響を受けたボームのオズ・シリーズ、メーテルリンク『青い鳥』、タブッキ再び(2016.06.01)