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2011年10月22日 (土)

C.S.ルイスの功罪を問うてみたい気がしている

 書きたい日本人作家が見つからないので、児童文学の評論をリンドグレーンで書こうと思ったが、スウェーデンのことに無知であるうえに、スウェーデン語が全くわからないというのではやはり無理だ。例えば『はるかな国の兄弟』に出てくるカルマ滝。死後の世界を特異な構造で描いた作品なのだが、作品の雰囲気と相まって、カルマ滝のカルマとは、仏教用語Karmaなんだろうか、とどうしても思ってしまう。

 どうしても知りたいとなると、翻訳家か研究家に出版社を通じて質問しなければならなくなる。もしお返事がいただけなかったとしたら、そこでわたしの思考は止まってしまいかねない。また、幸運にもお返事がいただけたとしても、賞の応募には間に合わないかもしれない。

 一応目についたリンドグレーンの評伝、伝記的なものには目を通したが、東洋思想の影響などについては何もわからなかった。児童文学史上、偉大な存在だと思うので、いずれ書いてみたいとは思っているのだけれど。

 そこで、浮上してきたのはC.S.ルイスだった。当世風何でもありのファンタジーはルイスが元祖ではないだろうか。突貫工事で賞を狙うのは無理だとしても、ルイスの功罪をざっとながらでもまとめておきたい気がする。

 『ナルニア国ものがたり』を読むと、イデオロギー的構成に驚かされると共に、ギリシア神話、創世記、神秘主義などから借りてきたキャラクターや概念などの甚だしい乱用が目にあまる。それらを借りてきたことが問題なのではなく、意味の書き換えを行い、イデオロギーに利用したことが問題なのだ。

 ジャンルは違うが、権威あるいろいろな書物から言葉や文章を借りてきてアクセサリー的に私用する村上春樹の作品に似たところがある(元の意味合いが完全に失われるだけでは済まない。別の意味づけがなされてしまう)。

 ルイスはジョージ・マクドナルドの影響を受けたそうだが、とてもそうは思えない。アリストテレスがプラトンの哲学を無意味なものにしてしまったのと同じようなことが、ルイスとマクドナルドにもいえ、ルイスはマクドナルドのファンタジー――その敬虔な神秘性――をすっかり無意味なものにしてしまったとわたしには思える。

 これ以上書くと、賞に応募できなくなってしまうので、よそう。[⇒後日。賞応募はしなかった。]
 図書館の蔵書検索でルイス関係の本を検索すると、『ナルニア国ものがたり』をのぞいて、以下がヒットした。2ヶ月でこれらを読み、独自の考えをまとめあげるのはちょっときついかも。まずは、今書いている児童文学作品を仕上げるほうが先だった。 

  • 愛はあまりにも若く  C.S.ルイス/〔著〕 みすず書房 1994/04 
  • 悪魔の手紙(平凡社ライブラリー)  C.S.ルイス/著 平凡社 2006/02  190.4 
  • いまわしき砦の戦い(別世界物語)  C.S.ルイス/著 原書房 2002/02   
  • 影の国に別れを告げて  C.S.ルイス/〔著〕 新教出版社 1990/10 
  • かの忌わしき砦  C.S.ルイス/著 奇想天外社 1980/01 
  • キリスト教の世界  C.S.ルイス/著 大明堂 1983/12 
  • 子どもたちへの手紙  C.S.ルイス/著 新教出版社 1986/11
  • サルカンドラ(ちくま文庫)  C.S.ルイス/著 筑摩書房 1987/05   
  • C.S.ルイス宗教著作集1  C.S.ルイス/〔著〕 新教出版社 1994/09
    C.S.ルイス宗教著作集2  C.S.ルイス/〔著〕 新教出版社 1994/08
  • C.S.ルイス宗教著作集3  C.S.ルイス/〔著〕 新教出版社 1995/00 
  • C.S.ルイス宗教著作集4  C.S.ルイス/〔著〕 新教出版社 1995/00 
  • C.S.ルイス宗教著作集5  C.S.ルイス/〔著〕 新教出版社 2000/03
  • C.S.ルイス宗教著作集6  C.S.ルイス/〔著〕 新教出版社 1994/06   
  • C.S.ルイス宗教著作集7  C.S.ルイス/〔著〕 新教出版社 1995/06 
  • C.S.ルイス著作集第1巻  C.S.ルイス/〔著〕 すぐ書房 1996/10
  • C.S.ルイス著作集第2巻  C.S.ルイス/〔著〕 すぐ書房 1996/12
  • C.S.ルイス著作集第4巻  C.S.ルイス/〔著〕 すぐ書房 1997/02 
  • 沈黙の惑星を離れて(別世界物語)  C.S.ルイス/著 原書房 2001/12
  • ナルニア国の住人たち  C.S.ルイス/原作 岩波書店 1995/06 
  • 廃棄された宇宙像  C.S.ルイス/〔著〕 八坂書房 2003/04
  • 別世界にて  C.S.ルイス/〔著〕 みすず書房 1991/10 
  • ペレランドラ(ちくま文庫)  C.S.ルイス/著 筑摩書房 1987/04
  • マラカンドラ(ちくま文庫)  C.S.ルイス/著 筑摩書房 1987/03
  • 喜びのおとずれ(冨山房百科文庫)  C.S.ルイス/〔著〕 冨山房 1994/09 
  • ライオンと魔女と衣裳だんす(評論社の児童図書館・絵本の部屋)  C.S.ルイス/さく 評論社 2000/09 
  • ヴィーナスへの旅(別世界物語)  C.S.ルイス/著 原書房 2001/12
  • C.S.ルイス『ナルニア国年代記』読本(国研選書)  山形 和美/編 国研出版 1995/03 
  • C.S.ルイスとともに  ライル・W.ドーセット/著 新教出版社 1994/12
  • C・S・ルイスの世界  竹野 一雄/著 彩流社 1999/07
  • C・S・ルイスの秘密の国  アン・アーノット/著 すぐ書房 1994/06
  • C・S・ルイス評伝  A.N.ウィルソン/著 新教出版社 2008/05
  • C.S.ルイス文学案内事典  ウォルター・フーパー/著 彩流社 1998/11
  • C.S.ルイス物語  エレーヌ・マリー・ストーン/著 原書房 2005/11 
  • C.S.ルイス「ライオンと魔女」の謎を解く  マルクス・ミューリンク/著 一麦出版社 2006/03
  • トールキンとC.S.ルイス  本多英明/著 笠間書院 1985/02
  • 「ナルニア国」への扉(名作を生んだ作家の伝記)  ビアトリス・ゴームリー/著 文渓堂 2006/04  930.28 
  • ナルニア国をつくった人  M.コーレン/著 日本基督教団出版局 2001/09
  • ナルニア国の父C.S.ルイス  マイケル・ホワイト/〔著〕 岩波書店 2005/11 
  • ナルニア国物語解読  安藤 聡/著 彩流社 2006/04  930.28
       

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