空振りの昨日。羊のような鶏の夢。
さあ書こうと思っていた昨日は、よくあるように、そうはならなかった。
夫がわたしのパソコンに入っているソフトが必要になったのだった。
わたしのパソコンと書いたが、正確には娘とわたしがそれぞれプライベート設定で使っているパソコンで、一応夫のプライベートルームも設けてある。
というのも、夫には新品に注目する癖があり、もう古くなったが、当初は新しかったノートパソコンに興味を示し、うるさいので、わたしがさっさと夫のプライベートルームも作ってやったのだった。
夫はしばらくこのパソコンで遊び、すぐに厭きたので、パソコンはほぼわたしたちのものになった。が、昨日のように、ごくたまに夫がわたしたちのパソコン(の自分のスペース)を使うことがあるわけなのだ。
ちなみに、夫のパソコンはディスクトップで、そのパソコンにはわたしにはわからない様々な付属品が賑やかに付いていて、たまに何かを訊かれてパソコンを操作してみるとき以外はわたしは触ったことがない。さして興味がないから。
そのうちわたしか娘がパソコンを買って、それぞれのパソコンを持ちたい気もするが、仮に自分のパソコンが持てたとしても、それにはやっぱり小さな夫のルームを設けることになるだろう。そう考えると、あまり自分のパソコンがほしいとも思わなくなるのだ。外付ハードディスクがあるから、容量の点ではあまり心配しなくて済むし。
ナンにしても、夫が職業訓練か再就職で家を留守にするようになるまでは、わたしは自分のペースでは創作できないだろう。諦めた。彼のペースに逆らわずに書く時間を見つけるほうがむしろ能率的だと経験上、わたしは知っている。
夫の子供のような好奇心には迷惑を被ってきた反面、飽くことを知らない夫のこの好奇心のお蔭で、わたしは創作上のメリットも得てきた。
やや正確さに欠ける情報誌と暮らしているようなもので、世の流行に触れられるからだ。訊けば、大抵のことは知っているし、できるので(ムラはあるが)、生活に多彩さをもたらしてくれる点では大いに重宝している。
知りたいことがあれば、ちょっとだけ夫の好奇心を刺激してやるだけで、わたしは動かずしてそれにかんする情報が得られるため、たまにその手を使うことがあり、夫は後でわたしに一杯食わされた、使われたと感じることがままあるに違いない。
職業訓練校の受講もどちらかというと、夫の好奇心から出たものだ。また、会社をやめてもあちこちから電話がかかってくるのは、専門的なことばかりではなく、何でも屋の夫がいなくなった不便さからということもあるだろう。
つぶしの利く夫の職探しについてはさほど心配していないのだが、昨日みた夢にはわたしの不安が表れていた。
古びたシューズ、しかも濡れたシューズが出てきたのだ。夢解釈の専門家、梶原まさゆめ氏によると、このような靴はリストラや退職、破綻など、社会的な状況に対する不安を反映するという。収入に対する不安や社会的立場が不安定な状況を表すこともあるようだ。
わたしのシューズだったような気もするので、夫の定年退職でわたし自身の「書くことを長年続けてきて、専門家の域に達しているという自覚があるにも拘わらず、一銭も稼ぎ出せない自分」に対する客観性が強まったことが考えられる。
で、わたしはシューズを鶏のおトイレにしようとしていた。
その鶏は古びた家屋に住むわたしのペットで、姿は鶏なのだが、大きくて、純白で、ふわふわ、モコモコのまるで羊のようだ。
庭に沢山の鶏を買っているようだが、その鶏はひとりでに家の板の間で産まれた。そして、家の中にいたがる。
わたしは「ちゃんとおトイレができたらね」と鶏にいう。すると鶏は「うん、それくらい何でもない」といった。わたしは鶏を抱えておトイレになるものを探し、古いシューズを見つけたりしたわけだった。
シューズをトイレに使うなんて非常識という表情を鶏がしたので、それはやめにした。そのあと、息子が出てきて、わたしは息子に「あ、この鶏は他の鶏とは違うから家の中で飼うことにしたの」と説明している。
あの鶏が夢的には何を意味するのかはよくわからないが、卵を産むとしたら、さぞかしおっきな美しい卵を産むことだろう。
鶏が羊に似ていたのは、娘がビアガーデンでジンギスカンを食べたというところから来たのかもしれないし、寝る前に読んだポプラ社「百年文庫70 野」の中のツルゲーネフ『ベージンの野』を読んだからかもしれない。
ロシアの大自然を素晴らしい筆致で描き出した、清涼感に満ちた作品だった。夜、馬番をしながら焚き火のまわりで百姓の子供たちが怪談話に興じる。その話の中におしゃべりする小羊が出てきたのだった。
だからといって、それがあえて夢に、しかも鶏として出てきてのには、やはり何らかの意味があるに違いない。
今日も、書けるだけ書くだけですわ。夫と、休日の娘のペースに逆らわず……
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