リルケの詩『薔薇の内部』『薔薇 おお 純粋な矛盾』をご紹介
リルケ――特に「リルケ 薔薇」――でご訪問になるかたが増えましたので、サイドバーに新カテゴリー「ライナー・マリア・リルケ」を設けました。カテゴリー「薔薇に寄せて☆リルケの詩篇『薔薇』のご紹介」と合わせてご利用ください。
リルケの詩、小説、評論を読みますと、リルケの作品から薫ってくる優雅さが、絶え間なく続けられる哲学的な思索の襞々から発散されるものであったことがよくわかり、それら一篇一篇を丹念に分析してみたいと感じますが、その時間がなかなかとれません。
リルケには、フランス語詩篇『薔薇』とは別に、薔薇をモチーフとした絶妙な詩が他にもあります。
「新詩集」二巻[1907 - 08年]に収められた『薔薇の内部 Das Rosen-Innere』、1922年以後の晩年に書かれた詩作品のうちの一篇で墓碑銘ともなっている詩『薔薇 おお 純粋な矛盾 Rose,oh reiner Widerspruch』を「新潮世界文学 32 リルケ』(新潮社、1971年)よりご紹介しておきたいと思います。いずれも、富士川英郎訳でお届けします。
・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
薔薇(ばら)の内部
何処(どこ)にこの内部に対する
外部があるのだろう? どんな痛みのうえに
このような麻布があてられるのか?
この憂いなく
ひらいた薔薇の
内湖(うちうみ)に映っているのは
どの空なのだろう? 見よ
どんなに薔薇が咲きこぼれ
ほぐれているかを ふるえる手さえ
それを散りこぼすことができないかのよう
薔薇にはほとんど自分が
支えきれないのだ その多くの花は
みちあふれ
内部の世界から
外部へとあふれでている
そして外部はますますみちて 圏を閉じ
ついに夏ぜんたいが 一つの部屋に
夢のなかの一つの部屋になるのだ
━━━☆・‥…━━━☆
薔薇 おお 純粋な矛盾
薔薇 おお 純粋な矛盾 よろこびよ
このようにおびただしい瞼(まぶた)の奥で なにびとの眠りでもない
という
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