Notes:不思議な接着剤 #78 ピュタゴラスとエッセネ派の関係。貞節の勧告。
Notes:不思議な接着剤は、執筆中の自作の児童文学作品『不思議な接着剤』のための創作ノート。
過日、図書館から叢書アレクサンドリア図書館・第4巻、イアンブリコス著『ピュタゴラス伝』(佐藤義尚訳、国文社、2000年)を借り、内容のすばらしさにほしいと思ったが、品切れだった。Amazonに中古で80,000円というのが出ていた。叢書全体の値段だろうか?
いずれにしても買えないので、必要な部分はこまめにコピーをとるしかないと諦めていたところ、西洋古典叢書、イアンブリコス『ピタゴラス的生き方』(水地宗明訳、京都大学学術出版会)が出ることがわかって、同じものかどうかはわからなかったが、いずれにしてもピュタゴラスに関する詳しいものであればほしいと思い、予約注文した。それが4月。刊行され、先月手元に届いた。
近いうちに、図書館から国文社の『ピュタゴラス伝』を借りてきて底本など照らし合わせてみたいと思いながら先にネットで調べたら、二つの本はイアンブリコスの同じ著書を訳したものと考えて差し支えないと思えた。ただし、入手した本には、フォティオス『ビブリオテーケー』所収の著者不明『ピタゴラスの生涯』が要約で併録されている代わりに、国文社の『ピュタゴラス伝』に補遺として収録されていたポルピュリオス『ピュタゴラス伝』は入っていなかった。
図書館から借りてざっと読んだときに、ポルピュリオスの『ピュタゴラス伝』もひじょうに貴重に思えたし、ブラヴァツキーの引用にもあることから確かめたい気持ちもあった。これが入っていないとわかり、涙がこぼれてしまったほどだった。図書館から借りれば済むことであるのに、自分のものとして味わいたかった。
調べてみると、同じ訳者のポルピュリオス『ピュタゴラスの生涯』が晃洋書房から出ていることがわかった。刊行は2007年。手に入るかどうか不安だったが、書店勤めの娘に訊くと、大丈夫だということで、それが今夜、娘の帰宅と共にやって来る。
訳註は違うだろうから国文社の『ピュタゴラス伝』のほうも必要になるかもしれないが、その場合は局部的にコピーすれば足りることだから、ホッとした。ポルピュリオス『ピタゴラスの生涯』の注文後に今月末に定年を迎える夫の継続雇用の希望が叶わないとわかった。それがもう少し早くわかっていれば、あるいは倹約のためにポルピュリオス『ピタゴラスの生涯』のほうは諦めたかもしれない。縁があったのだなあと思う。
ところでブラヴァツキーは、エッセネ派というのはピュタゴラス派で、死海の畔に居を構えていた仏教徒(プルニウス『博物誌』)の影響を受けたという。そして、その影響によって思想体系が完成されたというよりも、むしろ崩れていったと述べる。
イエスがエッセネ派の影響を何らかのかたちで受けていることは、これまでのリサーチからすると間違いないと思う。ということは、エッセネ派を知るには、まずピュタゴラス派について知らなくてはならない。
また、もしイエスが、ペテロなど歴史の表舞台で活躍した弟子達や大衆にはたとえ話で語り、高度な教えは専門的な言葉でマグダラのマリアに伝え、それがキリスト教グノーシス文書になったのだとしたら、キリスト教グノーシス文書にはピュタゴラス派(エッセネ派)と仏教の教えがちょっと(かなり?)崩れたかたちで表現されているはずだ。
新約聖書もキリスト教の教義から自由にして読んでみれば、新しい発見があるに違いない。
イアンブリコス『ピタゴラス的生き方』第27章に、ピタゴラスはクロトンの男たちに、妾との、また一般に妻以外の女性との性的交際をやめさせたとある。
これには次のような経緯があった。ピタゴラス派の一人であったプロンティノスの妻デイノは賢夫人として知られていたが、彼女をクロトンの男たちの妻たちが訪ねて、彼女たちに対して貞節を守るように夫たちに話してもらうように、ピタゴラスを説得してくださいと頼み、このことが実現したというわけだった。
イエスが女性に大層人気なのは、第一に愛の教えゆえではないだろうか? 十戒で姦淫が禁じられているが、イエスの教えの場合はムードが違う。もしそれがピュタゴラス派(エッセネ派)の影響によるものだとしたら、元々はそれは女性たちが勝ちとったものだったともいえる。女性たちの提案をデノイという賢夫人を通してピュタゴラスが採り上げたのだから。何にしても、女性の一人であるわたしにとって、『ピタゴラス的生き方』のこの部分は大変興味深く、痛快である。
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