山岸凉子の新連載『ケサラン・パサラン』がスタート!
雑誌「ダ・ヴィンチ」3月号から、山岸凉子先生の新連載『ケサラン・パサラン』がスタートした。
読みながら、わくわくする気持ちと、どんな作風なのかを探る気持ちとが交錯する。家を買うという事情が描かれる初回。冒頭の場面のあの文章の魔法(※ネタバレになるので、あえて字を薄くしておこう)という言葉からすると、これはもしかしたら『妖精王』の系譜か?
軽みのある心地よいムードが漂っているから、どオカルト系ではなさそうな感じがするが、軽やかなムードが暗転するスリリングな展開も多いから、まだわからない。ただ、『テレプシコーラ』のような求道物ではなさそうだ。
『テレプシコーラ』といえば、2月号で『テレプシコーラ』第2部完結記念インタビューと銘打たれた山岸先生へのロングインタビューが掲載されていた。
その内容は、山岸先生のような輝かしいプロ中のプロと、わたしのような浮かばれないアマチュアの物書きという違いはあっても、同じ創作する人間として、共感をそそられ、勉強になる言葉が散りばめられた、お買い得な号だった。その中から以下に抜粋。
「六花ちゃんが一番脆弱な性格なのは結局、作者のわたしの性格です。情けない(苦笑)。バレリーナというのは本当は勝ち続けていくのが使命なので、勝ち続けること=ギスギスすることだとは思わないのです。どちらかというと負けた人の方がギスギスになっちゃうものなんです。これでいいんだろうかと振り返るのは負けた人で、勝ち続けている人は一度も振り返らない。そこが凄いというか大変なところで、そういう世界では六花ちゃんのような子は一見勝ち目はないように見える。でもネガティブな人間こそがものを創るのです。落ち込んだ時こそ人はものを発想するといいます。……」
「六花ちゃんには何もないところからものを作り出せるという武器があった。だから誰かと競い合って勝ち抜いていく必要がないのです、本当は。そして、そういう人が一番強い」
これはまさに創作の奥義だ。何て、たおやか、かつ力強い言葉なのだろう。これは老子哲学に通じる珠玉の言葉だ。
それにしても、六花ちゃんが山岸先生だとは知らなかった! むしろ、それとは対極に位置するようなクールな御方かと思っていた。何だか嬉しくなってしまうと共に、ああでもそうでなければ、あのおいらかで、しなやかな六花を誕生させることはできなかっただろう……と深々と納得した。ならば、先生は六花に最高の想いを籠められたのに違いない。
さらに嬉しいことには、『テレプシコーラ』第3部が期待できそうなお話まで飛び出しているではないか!
『ケサラン・パサラン』を楽しませていただきながら、『テレプシコーラ』第3部のスタートを、それとなく待ちたい。
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