レビュー 050/都/百年文庫(ポプラ社)
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- ポプラ社「百年文庫」が素晴らしいので、読書ノートを作り、気ままにメモしていこうと思います。
- まだ読んでいない作品については、未読と表示しています。
- 一々「ネタバレあり」とは書きませんので、ご注意ください。
ジョージ・ギッシング『くすり指』
ローマのホテルで知り合った男女。
男性の目を通して「彼女の年齢は三十くらいらしく、彼女の習性(顔つき、口調、考え方の、であるが)が、そろそろ地方の狭い閉鎖的社会の独身女性のそれになりかかっているような気配が感じられた。だが、それと同時に、長い旅をしたことで若さを取り戻したという好影響が出ていることも見るからに明らかだ」と描写された女性は、ローマ滞在中に、誰もが彼女を美人と思うほどの女性となり、その後元通りの女性となって、男性がろくに気づかないでいる間に同行者の伯父と共にローマを去る。
と、こう書けば、ローマで女性に何が起きたのか、想像がつくだろうと思う。ローマのコロセオが効果的に使われている。
『ヘンリ・ライクロフトの私記』が有名なギッシング。ギッシングが大好きで、この作品が採られた岩波文庫の『ギッシング短篇集』は既に読んでいたが、「百年文庫」の洒落たムードで読むと、味わいも格別だ。ギッシングの作品からは、人生には幸福の種も不幸の種もいろいろとあるけれど(あるからこそ)、滋味のあるものなのだ……と教わる心地がする。
ヘンリー・セントクレア・ホワイトヘッド『お茶の葉』
前の作品を読んだ後でこれを読むと、まるで遊園地に来てジェットコースターにでも乗った気分になる。
《都》では、どれも花盛りを過ぎた女性にスポットライトが当たっている。これは、もう盛りを過ぎたどころではなくなったわたしをも、元気にさせてくれた。
ロンドン、紅茶占い、アンティークとアイテムが重なりすぎる嫌いがあり、そうした面も含めて如何にもアメリカ的。
イーデス・ウォートン『ローマ熱』
この作品は、前の二作品に登場した女性たちより、さらに年を重ねた――わたしの年くらい?――女性二人の物語。
そんな年齢になって初めて明らかとなる友情の真相。
そろそろ結婚を考えてやらなくてはならない年頃の娘がふたりにはいた。その娘たちにもかかわってくる、恐るべき結末。女同士の陰湿な応酬劇。女の決闘はこんなスタイルをとるのかもしれないが、話に不自然なところがあって、疑問がわく。
これも如何にもアメリカ的な作品で、スリリングな楽しみをもたらしてくれる一編ではあるにせよ、全体に些か雑な感じを否めず、解説にヘンリー・ジェイムズの助言に従ったとあるわりには……と思ってしまった。
何とか「百年文庫」のための場所を確保しました!
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