ハルキ現象に疑問を覚えて
2010年12月20日 (月)
申し訳ございません。
https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/12/post-0b15.html
村上春樹『ノルウェイの森』原作の映画が封切られる前に、当ブログへの訪問者は多い日で2,000人を超えた(ココログのアクセス解析では1,863人)。
普段は、1日に150人からせいぜい200人くらいの利用者がいる小さな図書館を想像していただきたい。
その多くがマナーのよい人々で、わたしがごくささやかな純文学継承の草の根運動の一環として行ってきた、現在ではなかなか読めなくなった山崎栄治訳のリルケの詩『薔薇』はじめ、かつて講談社から出ていた児童文学全集のリスト紹介、東京創元社から出ているバルザック全集に関する記事などには毎日のように閲覧者があり、わたしを悦ばせる。
カーリル・ジブランの本は現在も数種類が入手可能と思われるので、自分のお気に入りしか紹介していないが、閲覧者が多い。卑弥呼関連、ユイスマンス、シモーヌ・ヴェイユ、Notes:不思議な接着剤で触れているカタリ派・グノーシス・原始キリスト教・ユダヤ教に関する記事、コミックスでは『テレプシコーラ』、映画ではベルイマンの諸作品とか最近の『インセプション』『アリス・イン・ワンダーランド』、この時期には年賀状。料理の記事には毎日閲覧者が多い。芸術関係の記事の閲覧者も多く、フジ子・ヘミングに関する記事では男性からの心温まるメールと貴重なリポートをいただいた。
村上春樹の記事には公開以来、毎日多くの閲覧者があるが、普段は比較的マナーのよい閲覧者が多くて、いただくメールもわたしの考えに共感を示す女性からのものが多い。
しかし、何かイベントがあるたびに(前回は1Q84、今回は映画の封切り)、普段は静かな図書館に、大勢の人々がどやどやと押しかけて、ゴミを散らすわ、あちこち漁り回るわ、本は汚すわで、迷惑を蒙っている。
誇大広告のため、イベント前にハルキ現象は最高潮に達し、イベント後は潮が引くように沈静化するのが常だ。封切り後は、訪問者は600人から800人に減った。
福袋と同じと思われる。文学の広告があれでいいのだろうか?
日本を代表する世界的作家の歴史的偉業……風の赤面するような誇大広告を真に受けて、『海辺のカフカ』『1Q84』を子供(小学生、中学生)に与えた後に読んでみて後悔したというような記事を複数閲覧したときは(与える前に読んでほしいものだが)、憤りの念を禁じ得なかった。
今回の映画『ノルウェイの森』でも、これはPG-12に指定されており、「12歳未満のお客様は、なるべく保護者同伴でご覧ください。」となっているが、対象年齢をもっと上げるべきというレビューを閲覧し、商業主義の一番の犠牲者は子供だと胸が痛む。
ところで、このイベントのたびに膨れ上がる現象について、わたしは商業主義の凄まじさに呆れてきたが、今回初めてこの現象に深い疑問を持った。
このハルキ現象の責任者は誰かということを考えてしまったのだった。
村上春樹は芸能人ではない。今やとめどもなく膨れ上がるかに見えるハルキ現象も、火元は作品の誇大広告にあり、その責任者はいうまでもなく村上春樹だろうと想像した。
わたしは本を出したことすらない素人だからわからないことだけれど、誇大広告というものは勝手につけられてしまうのだろうか。
それに対して著者は何もできないのだろうか。
何もなすすべがないのだとすれば、著者の責任は問えないが、もし何かしら手を打てるのだとすれば、この現象の責任者は村上春樹当人ということになる。
ここまで考えてしまうのは、あまりにハルキ現象が文学的なムードとはかけ離れた異質なものだからだ。
新興宗教か芸能人に伴う現象に酷似している。
映画『ノルウェイの森』についてのわたしの感想を聞きたいという人もいるが、原稿料が貰えるわけでもないのに、そこまではしたくない。2回観た『インセプション』の記事さえ、完成させる時間がないというのに……。『ポッター』の記事もまだ書けていない。
ところで、村上春樹は世界中でよく売れているという話だが、どのような層の人々によく読まれているのか、調査の必要があると思う。
純文学などというものはない、といわれ始めたのと、村上春樹の作品が売れ出したのは同じような時期だったと記憶している。
しかしまた、純文学の社会的栄冠ともいうべきノーベル文学賞に(ハーレクインロマンスにノーベル文学賞が授与されたという話は聴かないから、あれはやはり純文学作品が対象と思われる)、村上春樹の売り手とファンほど期待をかけている人々はいないように見える。
純文学の愛読者は普通、そのような世俗的出来事と作家を結びつけて一喜一憂したりはしないものだと思う。
どんな作品にも訴えかけてくる部分があり、長所短所がある。わたしは記事で書いたが、直子の描写は優れていると認める。そして、その時点で彼はどちらの方向へも行けたと書いた。
熱狂的ファンの中には、わたしの記事や評論をよく読みもしないで攻撃してくる人がいるけれど、わたしほどムーディーな習作『ノルウェイの森』をよく読み(名作と呼ぶには文学作品としての体裁が整っていず、作者の姿勢に疑問があることを評論中で指摘した)、才能を的確にチェックしようと真摯に試みた人間は少ないと思う。
このようなことは本来ならプロの評論家がやるべき仕事で、わたしのような一主婦がすることではないはずだ。そう想うと、虚しさがこみ上げる。
村上春樹の作品を読んでいるときは心地よいが、読後に倦怠感、嫌悪感に襲われて、その原因がわからなかったところ、わたしの記事、評論を読んで医師に患部を指摘して貰ったような気がした……という感謝のメールをいただかなかったら、とっくに村上春樹に関する記事は非公開にしてしまっていたと思う。
ちょうど、この記事を書き終わったとき、長年、統合失調症を患っている女友達から電話があった。
精神病薬の副作用によるパーキンソン症候群がなかなか改善されないという。そのための薬が増え、今度はその副作用にも悩まされているというので、改善に役立たない薬は切って貰って、医療用ステッキを積極的に活用するほうがよいのではないかといった。
わたしは薬剤性肝炎の話をし、そのあとで彼女の作品の話になった。障害者対象の賞に作品を応募する相談だった。……余談になった。
※当記事に関するコメント、メールは受け付けておりません。
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