第143回芥川賞に赤染晶子「乙女の密告」
Link:赤染晶子『乙女の密告』を読んで
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第143回芥川賞に赤染晶子「乙女の密告」(新潮6月号)、直木賞に中島京子「小さいおうち」(文芸春秋)が選ばれたとのこと。
「乙女の密告」について、本日付朝日新聞朝刊に以下のようにあった。
受賞作は、京都の外国語大学でドイツ語を学ぶ女子学生が、課題とされた「アンネの日記」のドイツ語での暗唱に励む物語。指導にあたるバッハマン教授は人形を抱えて通勤する奇人で、「アンネの日記」をロマンチックに読むことを認めない。主人公は「すみれ組」と「黒ばら組」という派閥争いや密告などを体験することで、アンネの日記の本質を理解していく。
赤染さんは「私自身が生まれ育った京都の街をユーモラスに人に伝えたかったのが、小説を書くきっかけです。シリアスな『アンネの日記』と乙女のユーモラスな世界を対比させることで、日本でのロマンチックなアンネ像を疑おうと思いました」と話した。
選考委員の小川洋子さんは「アンネ・フランクを密告したのは誰かという問題を小説の中にとりこみ、個人のアイデンティティーの中にその答えを見いだそうとした巧妙な小説」と話した。
前の記事に書いたように、わたしは受賞作は未読だが、雑誌に掲載された最初の作品には目を通した記憶がある。奇を衒い、小細工した作品という印象で、これは文春好みだろうから、いつか芥川賞をとるな、と予感し、それが当った。
新聞では「ひと」欄にも採り上げられていて、それらを読むうちにわたしはどっと睡魔に襲われ、寝てしまった。
いずれ、作品を読んできちんとした感想を書くつもりだ。これからは、サイト「作品広場」に作家登録したことでもあり、芥川賞作品は極力読み、感想を書くように努めたい。
紹介の新聞記事を読む限り、平和ボケとはこのことか、あるいは敗戦とはこのことかと思わずにはいられなかった。こんな作品を産むようでは、日本人の頭脳は本当に危ない。
作者も選者も共におかしい。ネット検索したところでは、作者は作品の終わりに沢山の参考文献を挙げているそうで、それなら、いよいよおかしい。
舞台は大学であるらしいが、小学校か中学校の間違いではないのだろうか? 「アンネの日記」をロマンティックに――とあるが、「赤毛のアン」の間違いでは?
読まずにこれ以上書くことはできないので、やめよう。読んでから、きちんと感想を書く予定。
湿疹に悩まされ、このところ漢方軟膏で症状が和らいでいることを過去記事で書いてきた。それ以前――ステロイド軟膏が効かなくなって湿疹の痒みがピークに達したとき、実はわたしは『アンネの日記』のアンネの最期を知る人々の証言を集めたウィリー・リントヴェル『アンネ・フランク 最後の七ヶ月』(酒井府・酒井明子訳、徳間書店、1991年)にあるフランク姉妹にかんする描写を想っていた。
姉妹は痒みの強い皮膚病――疥癬に悩まされ 、発疹チフスに罹った。ラーヒェル・ファン・アメロンヘンは証言している。
フランク家の少女たちはひどく痩せ、外見はボロボロでした。彼女らはしばしばお互いの病気のことで言い争っていました。彼女らがチフスであったことは明らかでした。以前に一度もチフスにかからなかったとしても、今回はすぐわかりました。チフスはベルゲン=ベルゼンの代表的産物だったからです。
彼女らの顔にはぼつぼつと穴が開き、骨の上に皮膚があるだけでした。彼女らは絶えず開いたり閉じたりするドアの下段に――バラックの中でも最悪な場所を占めていたので、ひどく凍えていました。「ドアをしめて、ドアをしめて」と彼女らが叫んでいるのが断続的に聞こえました。そしてこの叫び声は、毎日少しずつ弱っていきました。
姉妹がバラックの中でも最悪な場所を占めていたという箇所に、胸が痛む。母親が一緒であれば、もう少し違っただろうと思わずにいられない。
ハンナー・ピック=ホスラールは、有刺鉄線越しに対面したときのことを証言している。
それは私が知っていた同じアンネではありませんでした。彼女は打ちひしがれた少女でした。私もおそらくそうだったのですが、アンネはもっとひどかったのです。彼女はすぐに泣きはじめ、「私にはもう両親がいないの」と語りました。
何といっても、アンネたち姉妹はまだ少女だったのだ。尤も、そこは大人であっても泣き出さずにはいられないような劣悪な環境だった。フランクルの『夜と霧』にそのような場面が出てくる。
そして、絶滅させられようとしたユダヤ人の優秀さは、『アンネの日記』や証言集からだけでも推し量られることだ。
また、いうまでもないことだが、当時、ナチスのドイツと日本とイタリアは三国同盟を結んでいた。ユダヤ人にとっては、三位一体の邪神の如きものを形成し、『アンネの日記』がシリアスとなる原因をつくっていたというわけだ。
話が戻るが、湿疹の痒みがピークに達したときにもう一つ思い出した作品があった。旧約聖書の『ヨブ記』だ。義の人ヨブは、神の黙認のもとでサタンの試みに遭い、試練に耐えるのだが、体中が悪性のできものに被われて七日七夜経ったときに、ついに自分の生まれた日を呪うのだ。
胸を打つ、格調の高い作品で、絶望感に囚われたときに、『ヨブ記』ほど、たましいに訴えかけてくるものはない。人間という存在に襲いかかる試練と極限状態をユダヤ人ほど生き生きと描き出せた人々はいない。それは体験から紡ぎ出された、人種を超えた、人類の宝といってよい。
前掲書の訳者あとがきで、以下のような女性の証言も紹介されている。
SSの目標は、物理的人種絶滅はさておいて、人間としての『私』を引きおろし、完全に一掃し、破壊し、『私』から自尊心を剥ぎおとし、一人の意志のない布切れにしてしまうことでした。
しかし、ドイツの置かれた状況もまた、複雑過酷だった。勿論ドイツ占領下に置かれたオランダも。そうした資料を読んだあとで、『乙女の密告』は書かれたというのか? この記事は、『乙女の密告』読後の記事に続く。
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