Notes:不思議な接着剤 #59 冒険前の三つの課題をクリア/カバラと瞑想/異端審問と魔女裁判
#59
2010/6/28(Mon) 冒険前の三つの課題をクリア/カバラと瞑想/異端審問と魔女裁判
◇冒険前の三つの課題をクリア
まだ子供たちは冒険を前に、お預けを食っている。何をぐずくずしていたかというと、メモ帳に殴り書きした部分を清書しているうちに、三つの課題が浮上してきたのだった。その処理に手間どっていたというわけだ。
- 瞳にロウソクを持って行かせるための動機。
- アルケミーボンド株式会社と瞳の父親を関係づけるための伏線。
- 瞳の父親のカラーを出す。
1.
瞳にロウソクを持って行かせたいと思ったが、児童文学作品が火遊びの誘いとなってはいけないので、瞳がなぜロウソクを持って行く気になったかの動機を丁寧に描いておく必要があった。
これが思い浮かばなかったのだ。ようやく思いついて書いた箇所が以下。
瞳は、誕生日やクリスマスに家でともす、いろいろな美しいロウソクも、小さな箱入りのマッチといっしょに、持っていくことにしました。
火遊びがいけないことはわかっていましたので、ライトが使えない場合のピンチヒッターとして。停電のときに、瞳のおかあさんがいつもそうするように。
台風が接近するという情報が流れると、お店にある非常用ライトは、あっというまに、売りきれてしまいます。また、お店と家はべっこになっていましたから、瞳のおかあさんは、普通の家に住んでいる人間としての用心をおこたらなかったのでした。
瞳のおかあさんについていうと、おかあさんは電器店にお嫁にきましたが、育ったのは普通の家でした。そして、その家のある町というのが、よく台風がきて、よく停電になる町だったのです。
この文章を、続編のための伏線として使いたい意図もあった。瞳の父親はアルケミーグループと関係があるが、母親のほうは普通の人、という設定をここで盛り込めた。アルケミーグループというのは、時空を超えて商売の手を拡げている太陽系を代表する企業連合の一つ。アルケミーボンド株式会社はその一員。
瞳が持って行った美しい意匠のロウソク。蜜蝋のロウソクは、中世ヨーロッパでは貴重で、教会か儀式のときしか使用されなかった。瞳のロウソクは、子供たちが身を守るための財産(交換、取引の品)となるもので、彼らが文明圏(先進国)から来た使節との確信を、(悪徳裁判官が転勤したあとに来た)2人目の良心的な裁判官に抱かせる。その前段階の出来事として子供たちのライトは、鍾乳洞の中で電池切れになってしまう。
2.
以下。
「郊外の電器店なんかじゃ、高価なものがコードでつながれていたりするけれど、ここのは違うんだね」
と、紘平がいいました。
すると、瞳は、軽く笑って答えました。
「そう、うちの商品は、ぜーんぶ放し飼いよ。うちは小さな電器店で、お客さんも少ないでしょ。必要ないのよ、そんなものは」
瞳の両親が経営する電器店は、お客からの予約注文で成り立っていました。お客のなかには、遠方から電話をかけてくる人もいました。国際電話をかけてくる人だって、いました。じつは、瞳の家の――電器店――の倉庫は、アルケミーグループという企業連合によって生産された製品の宝庫だったのです。しかし、そのくわしいお話となると、長くなるので、また別の機会に、ということにいたしましょう。
3.
以下。
「これなんか、すごいや。連続120時間だなんて、まる5日間、ともしっぱなしにできるってことだよ。しかも、1,480円とは、うれしい値段だね」
紘平がいうと、瞳は電器店の娘らしい、うんちくをかたむけました。
「それは、LEDライトよ。白熱灯や蛍光灯とは違って、発熱せずに光を発するの。だから、消費電力が低くて、CO2の排出削減につながるため、地球にやさしいあかりということになるわ。ロウソク、電球、蛍光灯に続く、第四代あかりとして注目されているのよ」ところで、瞳のおとうさんはちょっと変わった人でしたが、おとうさんはよく、瞳にいうのでした。
「第五代あかりとして注目されるべきは、オーラだよ。この世界は遅れている」オーラというのは、生き物や物体から出ている、通常、人間には見えない放射物のことでした。それは、エネルギーの場をつくり出しているということです。
瞳は、おとうさんのその言葉を思い出しましたが、LEDの説明をつけくわえただけでした。
「LEDは、電気を流すと発光する半導体(はんどうたい)の一種で、発光ダイオードとも呼ばれているわ」
瞳が薀蓄を傾けすぎる気もするが、神秘主義者である瞳の父親のカラーをここで出すために必要だった。オーラの説明も、どの程度するかに迷いが生じる。
オーラの説明は瞳の父親のカラーを出すためだけではなく、竜のためにも必要だ。鍾乳洞の闇を、竜はエメラルドグリーンの光で輝かせる。その光の色合いは、物語の終局で乳白色に輝くものとなり、竜が聖獣となったことを証し立てる。こうした光の正体はオーラなのだ。
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◇カバラと瞑想、パウロの誤解。
#57のノートで、カバラの起源がエッセネびとに遡る可能性について書いたが、箱崎総一『カバラ ユダヤ神秘思想の系譜 *改訂新版 』(1988年、青土社)頁180以降、盲人イサクの章を読むと、カバラと瞑想が密接な関係にあることがわかる。フィロンによると、エッセネびとは瞑想を実行していた。
185頁
「盲人イサクのカバラ思想の手稿断片にはしばしば神秘的な光と色彩についての叙述が認められる。」
これはオーラに関する記述だ。
「盲人イサクのカバラ思想は瞑想と深いかかわりを持っていた。彼は(精神的緊張)を伴った瞑想を特に重視している。さらに各種の瞑想のタイプにはそれぞれの祈りが必要であり、その祈りはセフィロトの系統に従って完全に構成されたものでなければならないと考えた。」
瞑想には緊張を伴っていなければ、霊媒(憑依)体質にレベル・ダウンすることになりかねない。下手な瞑想は危険で、むしろ行わないほうがよいと、もうお亡くなりになったわたしの神智学の先生はおっしゃった。
この盲人イサクは13世紀当時のナルボンヌ市周辺のカバラ思想研究の中心人物である。この時期ナルボンヌはユダヤ文化の最盛期を迎えていた。
イサクは『創造の書』についての註解を手稿の形で遺し、『輝きの書(バヒール)』の著者でもあるといわれているが、この点についての確証はないとのこと。
391頁以降
遡ってパリサイ派、フィロンの創世記・アダムとエバの創造に関する解釈。パウロの誤解。この辺りは抜書きしておく必要あり。
以下は、『カバラ』からアダム・カドモン説のアウトライン。
アダム・カドモンは一般に“原始の人”と訳されているが、アダムはヘブライ語で人間の意味であり、カドモンまたはカドモニは「第一」または「原初」の意味である。アダム・カドモン説にはグノーシス思想の立場からの解釈とユダヤ教神学からの影響が混合した形で認められ、さらにその背景にはオリエント神学やギリシャ哲学からの影響も認められる。
アダム・カドモンについて最初に記述したのは、エッセネびとについて書いたフィロンだった。古代ユダヤの思想化集団パリサイ派の見解に関する部分を、以下に抜粋。
パリサイ派では女性エバの創造に関してアダムははじめ男性・結合体として創られていたと思考した。
“男と女に創造された”(創世記1・27)
の部分は、“男性と女性とを創造した”と理解し、『創世記』2・22で記述された時点において、はじめて男性と女性は分離されたと解釈した。パリサイ派の解釈はフィロンにも影響を与ぼしており、天の人間が両性具有の存在であると規定した背景にはこのパリサイ派の思想がひそんでいると推定される。
パウロの誤解に関する部分を、前掲の『カバラ』より以下に抜粋。
このパウロの見解によれば、人間の存在は二つの形式よりなる。つまり、神はこの霊的な世界の中に天のアダムを創造し、地上のアダムを土くれから創りあげて物質的世界に生きるものとした。そこでこのパウロ神学には大きな矛盾が内包されることになる。だがこの矛盾はユダヤ教の聖書註解によれば直ちに氷解する性質のものであった。
ユダヤ教の聖書註解によれば、救世主とは第一のアダムのことである。これは世界の創造先立って存在していた原始の人間・天の人間である。さらに、第二のアダムは創造によって身体的外見を与えられた存在であり、その点から第一のアダムの後身ともいえる。
パウロの誤解はその点にあった。つまり、パウロはフィロンの抱いたアダム・カドモンの概念には忠実に依存せず、中心概念において食い違いを発生させている。フィロンにおいては最初の人間はイデアの具現したものであり、パウロにおいてはイエス・キリストの人格そのものであった。フィロンによれば、最初の人間は第一の人間と同一の存在であり、パウロにおいては最初の人間と第二のアダムとは同一視されている。
アダム・カドモン説は、マニ教に採用され、グノーシス思想ではアダムと最初の人間は同一視されていた。
カバラについて以下に抜粋し、復習しておこう。
広義の意味でカバラという場合は、第二神殿期以降の総てのユダヤ神秘思想を含むことになる。カバラはその内容の豊かさのために神秘思想そのものと同義的に扱われることが多い。
カバラには二つの潮流がある。神知論系(Theosophy)と神秘論系(Esotherism)である。前者は瞑想によって身体的恍惚感を体験し、そのなかで神秘的体験と洞察を得ようとするもので、後者は瞑想と伝承による口伝『秘儀の書』などの知識を通じて神の本質と神秘の根源に関する理解に到達しようとするものである。
神知論系のカバラ思想の大系である『光輝の書(ゾハル)』。『光輝の書』に関して、以下に抜粋。
人間の創造に関して、天の人間のイメージは宇宙のイメージそのものと対比されると『光輝の書』では考えられた。そこにはプラトンやフィロンが抱いた、人間は小宇宙であり、自然界は大宇宙であるとする考え方が内臓されている。
もはや自作童話の舞台作りのための下調べをしているのだか、神智学の研究をしているのか、自分でもわからなくなってきた。
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◇異端審問と魔女裁判
異端審問と魔女裁判については、地域により時代によりまちまちであるため、捉えにくいところがあるが、もう少し丁寧に見ておく必要がある。
以下は上山安敏『魔女とキリスト教』(講談社学術文庫、1998年)からのノート。
「魔女裁判が本格化するのは、12世紀以降の異端審問が漸く鎮静化した15世紀からであるといわれる。ヨーロッパの魔女裁判は、異端審問を経ずしては成り立たない。魔女裁判は異端審問の延長上に生まれた。
異端審問以前、つまり11世紀までは、教会による民衆信仰の取り締まりは、教会への贖罪という形で行われていた。1000年頃を転機として初めて異端に対する処刑が登場する。異端審問から魔女裁判へ移行した数世紀のあいだに、教会側の行政管理のあり方に大きな変化が起り、教会ヒエラルキーが確立して異端集団に対する教会裁判所が整序された。」教会裁判所の管轄権の拡大。
「異端審問を実行するには、手続きを正当化しなければならない。そのためグレゴリウス9世は、審問官にドミニコ会修道士やフランチェスコ会修道士を任命するとともに、異端審問の手続きを布告した(1231年)。」
「13世紀に始まる異端審問が、15世紀から17世紀にかけて荒れ狂った魔女迫害の水先案内人の役割を果たしたことは間違いない。異端審問が、北イタリア、南フランス、バイエルンにかけてのヴァルド派、カタリ派、シュテディンガー・フリーゼンの一揆に対する残党狩りでもあったことから、異端審問は南欧を中心に展開した。そして、13世紀の異端審問の段階で、夜間飛行、狂宴、姿体の変容など、キリスト教によって定型化された魔女が異端とつながった。そこには異端審問と魔女裁判の境界は見られない。ただ、異端審問では、裁かれる被告が反キリストに限定されている点が違うのである。」
「南フランスの場合、異端審問が教皇庁の下で厳格に遂行されていたのに対して、魔女裁判の指揮は世俗権力の高等法院にあった。北イタリアでも教皇の異端審問が多かったのに対して、魔女裁判が教皇指揮下にあることは比較的少ない。
ところがドイツのような北方に移行するにつれて、教皇権指揮下の裁判所の力は弱く、影響力は小さくなる。ゲルマン本来の異教の呪術師の摘発にもとづく魔女裁判では、異端弾圧の性格は弱い。しかも、フランスの高等法院のような統一世俗裁判所が確立していないので、ドイツでは宗教裁判所と世俗の領邦裁判官とが入り乱れていた。」
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